予想できたピンチ
【グランディスマグナム】によって発生した爆煙によって姿は見えなくなったが確かに直撃はしたはずだ。完全に不意打ちだったし、避ける暇も無かった。ダメージは免れないだろう。・・・これで倒せたとは思っていないが。
【ハイポーション】を取り出しつつ、糸を引っ張る。なんの糸かって? さっき手放した【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】に結びつけてある糸だよ。あの場に落としたままになっているから敵に拾われる前に回収しておかないと、な。
刀をしまい回復しつつ、出方を待つ。・・・やはり3対1はきついな。本当なら大技を一発食らわせて一気に決めたい所だが、中々隙が無い。・・・何より問題なのは、その大技が向こうにもあるっていうことなんだよなぁ。つまり、向こうも同じ事を考えている、ということだ。
同じスキルを使う以上、威力も対処法もよく分かっている・・・お互いに。だが圧倒的に不利なのは俺のほうだ。
先ほど、【勇天ストラッシュ】は【勇天の一撃】を二度放ってきた。一度放てばBPを全消費してしまうスキルのはずなのに【勇天ストラッシュ】には回復した素振りは無かった。【俊天アクセル】もそうだ。もう結構な時間【俊天の疾走】を使用し続けているのにMPが尽きる様子が無い。
実は名前が同じだが別のスキルだとか? あるいは神様だからBPやMPの消費なんてしない?
・・・前者ならともかく後者の方はないな。もしそうなら【勇天の一撃】を撃ち放題ということになる。【勇天ストラッシュ】の一撃一撃が【勇天の一撃】・・・うん、あっという間にやられちゃうな、俺。
では前者? ・・・いや、俺が所持しているスキルと同じスキルだということは間違いないみたいだし、騙す理由もないだろう。【天凱十二将】は自分の力に絶対の自信と誇りを持っていると言っていた。にもかかわらず自分のスキルを偽る、なんてことはしないはずだ。
スキルの効果は同じ。では俺と彼らの違いは何か。
おそらく、それはBPやMPの自然回復量の多さ、だ。俺が数分から数十分かけて自然回復するBPやMPを彼らは数秒から数十秒で回復してしまうのだろう。だから、少しの時間を置けばまたスキルが使えるようになるんだと思う。
・・・もしかしたら先ほどの口喧嘩も、回復する時間を稼ぐためにワザと始めたのかもしれないな。・・・そうだとすると結構狡猾な集団なのかも、と思ってしまう。・・・演技には見えなかったけど。
となると、やはり速攻で倒さないと駄目なんだが・・・やっぱり3対1は厳しい。何とか数を減らさないと・・・待ちの姿勢でいるより、こちらから攻めるべきか?・・・いや、焦っちゃ駄目だ。迂闊に飛び込めば返り討ちが関の山。
だが【ハイポーション】も数に限りがある。持久戦は無理だ。
さてどうしたものか・・・と悩んでいる所で煙が晴れてきた。
・・・三柱の姿が見えてくる、が。
「・・・」
「なんで、アンタ・・・」
・・・【勇天ストラッシュ】と【俊天アクセル】は、ほぼ無傷だ。理由は・・・一目瞭然。
「・・・むう、服がぼろぼろ」
【全天エレメント】が二人の前に立ち、【全天の属性】を付加した両手を突き出している。・・・あの両手で防いだのか。・・・いや、他の二柱をかばったと言うべきか。おかげで【全天エレメント】にダメージが集中している、と。
だが、俺が思っていた以上にダメージを受けたように見える。もしやと思ったが俺の予想以上に防御力が低い?
「いや、それもあるだろうが、お前の使っている武器もなかなか強力な威力だ。スキルもよく使い込まれているし、お前の反射神経、戦闘センス、見切り・・・どれも素晴らしい・・・お前、本当に【人間】か?」
【戦闘神スサノオ】が何やら失礼なことを言っているが、俺は【人間】だ。
しかし、そうか。通常スキルも結構威力が上がっているみたいだな。日々の努力、もといレベリングの賜物だな。それに武器・・・アヴァンやガットに感謝だ。
・・・ふむ、この調子で行けるか? ここが攻め時か。
「【エナジーフェザーマント】ウィングモード!」
【エナジーフェザーマント】で空を飛翔し、
「【グランディスマグナム】エナジーモード」
エナジー弾を連射する。
「・・・!?」
「おっと!」
【勇天ストラッシュ】は長剣で弾き、【俊天アクセル】は避ける。
「・・・」
そして【全天エレメント】は・・・なにやら考え込んでいるように見える。・・・何かする気か? だが一番ダメージを受けていて倒しやすいのもアイツだ。ここは・・・
「・・・一気に落とす!」
俺は三柱に向かって突撃していった。
「む!!」
「来るわよ!!」
そんな俺を見て身構える【勇天ストラッシュ】と【俊天アクセル】。
だが、【全天エレメント】は・・・なぜかその二柱の手を握った。
「・・・む!?」
「ちょっと、何やってるのよ!?」
困惑している二柱に対して【全天エレメント】は静かに話しかける。
「・・・僕じゃあ無理。攻撃力なら負けないけど、僕じゃあ彼に当てることが出来ない。今のでそれが分かった。でもこのまま負けるのは・・・嫌。だから・・・」
・・・まさか、アイツ・・・やばい!!
「僕の力を貸してあげるよ。【全天の属性】!!」
「【グランディスマグナム】バスターモード! シュート!!」
俺は三柱に向けて再度バスターを放つ。
だが・・・閃光に包まれたのは【全天エレメント】だけだった。
『試練クエスト【天凱十二将 全天エレメントを倒せ!】をクリアしました』
「って問題はそこじゃねぇ!!」
空気を読まないメッセージに思わず悪態をついてしまう。
なんせ・・・
「・・・【全天エレメント】・・・」
バスターを逃れた【勇天ストラッシュ】の持つ長剣が虹色の光を放っているからだ。
「・・・あの子がこんなことするなんて・・・」
同じくバスターを逃れた【俊天アクセル】の両手も虹色の輝きを纏っている。
・・・やられた!
今にして考えれば【全天の属性】は自分だけに付加するスキルじゃない! こうなる事も十分に予測できたはずなのに・・・
これじゃあ、数を減らしてもまったくの逆効果だ!!
倒れた【全天エレメント】が消えていくのを横目に二柱と相対する。
「・・・確かにお前は強い・・・我らの力を使うのに申し分もない・・・だが・・・」
【勇天ストラッシュ】は静かに・・・本当に静かに闘志を燃やしながらこちらに語りかけてくる。
「・・だけど! だからと言ってアンタに勝ちを譲る道理は無いわ!!」
【俊天アクセル】も怒気を含ませながら叫ぶ。・・・仲が良くないとはいえ仲間が倒されれば当然か。
そんな二柱に対して俺も応える。
「・・・覚悟の上だ。戦いである以上、決着を付ける以外に答えは出ない。そしてアンタたちは強い。だから俺も・・・全力で倒しに行く!!」
仲間を倒された怒りに対し、覚悟を持って応える。
それが戦士の矜持ってやつだと思う。
「うむ。これぞ戦いだ!!」
・・・【戦闘神スサノオ】、うるさいです。
「今度こそ! 本気で行かせてもらうわよ!!【韋駄天の俊走】!!!」
その瞬間、【俊天アクセル】の姿が消えた。
いつの間にか累計PVが700万を突破していました!!
多いのか少ないのか判断出来ませんが、これだけ読まれていると思うと嬉しいですねぇ~。
今後とも宜しくお願いします!!
m(_ _)m




