一進一退
不意に訪れた休憩タイムが終わり、バトル再開である。・・・バトル開始から5分と経たず休憩タイムになった事は突っ込んではいけない。
「行くわよ! 【俊天の疾走】!!」
【俊天アクセル】が再度加速する。残像を残しながら高速でこちらに向かってきている。しかも直進ではなくジグザグに・・・目で追いきれないな。・・・うーむ、自分以外で使っている奴を見た事がないから分からなかったが俺もあんな感じなのか・・・なるほどね。
「【グランディスマグナム】バレットモード」
対する俺はというと【グランディスマグナム】を実弾モードで構える。目標は当然【俊天アクセル】。だが普通に撃ったところで当たりはしない。避けられるのが関の山だ。あのスピード考慮しつつ弾道を計算して・・・
「・・・そこだっ!!」
パァン!!
「アイタッ!?」
・・・当たったようだ。【俊天の疾走】が解けて痛がっている【俊天アクセル】。やはりな。予想通りスピード特化の【俊天アクセル】は防御力が低い。弾丸一発でもあの様だ。当てるのには苦労すれば、当たりさえすれば・・・!?
「・・・加速状態の【俊天アクセル】に当てるなんて、すごいね。【全天の属性】」
今度は【全天エレメント】か。両手を虹色に輝かせて向かってくる。さすがに【俊天アクセル】ほどのスピードは無いが、あの両手はやばい。
「【結晶の障壁】!!」
【全天エレメント】の前方に結晶の壁を展開、足止めしようとするが・・・
「無駄・・・」
【全天エレメント】が触っただけで結晶の壁が粉々に砕け散ってしまった。
「・・・【全天エレメント】の【全天の属性】だけ、俺のと威力が違いすぎね?」
少なくとも俺が【全天の属性】を使った時はあんな風に触っただけで大ダメージを与えるような事にはならなかったはずなんだが・・・
「それは君が本来の力を半分も使えていないからだよ」
【グランディスマグナム】で牽制するもあの虹色の手によって簡単に弾かれる。というか弾丸が蒸発しているぞ、おい。
・・・本来の力の半分も使えていない、だと? 【全天の属性】はMPを半分消費して自分が持っている全属性効果を付与するスキル・・・ってそうか。
「・・・要するに俺が持っている属性じゃあ全然足りないってことか!?」
「そういうこと」
・・・逆に言えばもっと所持属性を増やせばあれぐらいの威力に・・・って今はそれどころじゃねぇ!
俺は【グランディスマグナム】をしまい、【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】を取り出す。
「【疾風連斬】!!」
二本の刀で滅多切り・・・とはならない。あの虹色の両手が相手ではパワー負けするのは目に見えている。現に【全天エレメント】もそれぞれの手で刀を掴もうとしている。・・・掴まれたら刀がぶっ壊されそうだ。
・・・が、そうはさせない。手に触れるか触れないかの間際で刀を引き、別の角度から斬りかかる。【全天エレメント】は強力な攻撃方法があってもスピードがない。両手が間に合わない場所を、両手が間に合わないスピードで・・・
「・・・クッ!?」
・・・抜けた! このまま【全天エレメント】を切り伏せ・・・!?
「・・・同じ失敗を」
ここで再び割り込んでくる影。【勇天ストラッシュ】だ。・・・先ほどといい不意打ちが好きなのか? それとも他のヤツラのフォローに? どちらにせよ良いタイミングで割り込んでくる。だが同じ失敗は・・・
「するわけないだろ。【風遁:旋風壁】!」
俺を中心として竜巻のように渦巻く風の壁が【勇天ストラッシュ】を足止めする。必殺の一撃は打たせない! さらに・・・
「【火遁:乱れ花火】!!」
全方位に向かって無数の火の玉を放つ。
「・・・クッ!」
「うわっ!!」
「きゃあ!!」
【勇天ストラッシュ】と【全天エレメント】、そしてどさくさにまぎれて俺の背後にまわり込んでいた【俊天アクセル】に直撃した。・・・油断も隙もあったもんじゃないな。
火の玉を食らい、距離を置く三者。当然、追撃する。狙うのは・・・【全天エレメント】!
「【一刀突き】!」
刀を【全天エレメント】に向かって突き出す!
「させん!」
そしてやはり邪魔をする【勇天ストラッシュ】。ならば、と俺は二本の刀を両手から離した。
「なにぃ!?」
困惑している【勇天ストラッシュ】の懐に素手のまま素早く入り込む。【勇天の一撃】を放つ前に、剣を持つ腕を掴み・・・
「【無刀取り】、【背負い投げ】!」
掴んだ腕をねじりながら投げる。
「がはっ!」
地面に叩きつける【勇天ストラッシュ】。このまま追い討ちを・・・
「・・・!!」
「させないわ!!」
しようとする俺の両側から【全天エレメント】と【俊天アクセル】が迫ってくる。挟撃か・・・だが【俊天アクセル】の方が圧倒的に速いな。・・・タイミングが合っていないとも言う。
俺は【俊天アクセル】の方を向く。【全天エレメント】に完全に背を向ける形になるが、わずかなタイムラグがある。その間に・・・
「【ダブルラッシュパンチ】!!」
両手で拳の連打、連打、連打。
「当たらないわよ!!」
しかし、その全てを避ける【俊天アクセル】。・・・やはり正面からではきつい。だが、この攻撃は倒す為のものじゃない。
拳がギリギリ【俊天アクセル】の腕を掠めたところで・・・掴む!
「・・・え!?」
「ふんぬりゃああああ!!」
そしてそのまま力任せに【俊天アクセル】をぶん回し・・・
「ええ!?」
【全天エレメント】にぶち当てる!
「うわぁ!?」
「きゃあ!!」
・・・当たりはしたがダメージはなさそうだ。そういえばこのゲーム、フレンドリーファイヤは無効だった!! ・・・惜しいな。今のは【全天エレメント】の【全天の属性】が確実に【俊天アクセル】にあたってたのに。
しかし、気落ちしている時間は無い!
「【グランディスバンカー】セット!どっせい!!」
まだ体勢が整っていない二柱に、右手に装着したバンカーを打ち込む! 上手くすれば同時撃破!と思ったが・・・
「・・・【勇天の一撃】!!」
・・・ちぃ、【勇天ストラッシュ】が起き上がって来た。やはり上手く合わせてくるな!
ぶつかり合う剣とバンカー!
結果は・・・
「・・・ぐわっ!?」
バキィィィン!!
やはり俺の方が力負けしてやがるな! また吹っ飛ばされた。
しかも【グランディスバンカー】が砕けた! たった一撃で!
・・・だがさっきと違って俺にはまだ・・・
「【グランディスマグナム】バスターモード」
左手が残ってるんだよ!
「シュート!!」
吹き飛ばれながらも放たれた閃光が三柱をまとめて包み込んだ。
「・・・ふぅ」
きついな。一瞬も気が抜けないし。
今のうちに回復回復、と。
「・・・むぅ、なんという戦いだ・・・血が疼くな」
【戦闘神スサノオ】がなにやら呟いていたが聞こえないフリをした。
・・・頼むから参戦しようなんて言い出さないでくれよ。
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