神々からの試練
「話が逸れてしまいましたね。私達が貴方を呼んだのは話をする為ではありません」
・・・おっとそうだった。つい流れで色々質問してしまったが、それが本題じゃなかった。
「そうでしたね。・・・えーっと俺・・・私を選んだのはあなた方三柱の神、ということで合っていますか?」
まさか、いきなり三柱の神に指名されるとは思わなかったが。
「そう畏まらなくても良いわよー。楽にして、普段の喋り方で大丈夫よー」
「うむ。礼を欠かさないのは見事だとは思うが、堅苦しい喋り方では息も詰まるだろう」
おお、神様の方から普通にしろと言ってくれた!・・・しかし、ここで調子に乗って慣れなれしくタメ口とか聞くのもどうかと思うので・・・
「ありがとうございます。では失礼にならない程度の話し方にさせてもらいます」
「うむ、それでよかろう。して本題だが、確かにお前を選んだのは我らだ。・・・正確には我ら三柱が同時にお前を選んでしまったゆえ、多少揉めてしまったがな」
・・・そういえばラグエルさんも神々が取り合ってる、みたいな事を言っていたな。
「・・・もしや一人につき一柱、のような制約が?」
「いえ、そのような事はありません。しかし、一人の人間に神の加護や守護が集中してしまうのはよろしくないのです。場合によってはその人間に相当な負担を強いてしまうことになりますからね」
「それにー、私達にも神としてのプライド? みたいなものがあってねー? 自分が選んだ人間が他の神をあがめたり、加護や守護を貰ったりするのは面白くないのよー」
・・・なるほど、言わんとしていることは何となく分かるな。
「そこで、縁結びの神でもあるククリに頼んだのだ」
「ククリに?」
・・・俺の後ろでアーテルやアウルの頭をよしよし、と撫でている少女神に?
「そう、ククリには正しく縁を結ぶ力があるのです。故に貴方を選ぶ神に相応しいのは誰か、その神の元へ貴方を連れて来るようククリにお願いしていたのです」
・・・当のククリはそんなこと言ってなかったけどなぁ。むしろ、どこに連れて行くべきか忘れてたみたいなんだが。・・・もしかして、あれは忘れたんじゃなくてククリ自身もどの神の元に連れて行けば良いか悩んでいたのか? だとすると・・・
「結局、ククリちゃんが選んだのは三柱みんな、だったけどねー」
確かにククリはこの場所に来て、みんなに声をかけていた。つまり、みんなを選んだって言う事なんだろうが・・・俺には何も考えずに言ったようにしか思えなかったが。
「ククリがそう選んだのならそれが運命、ということなのだろう。我らとしても異存は無い」
ククリが選べば納得って・・・案外、ククリって位の高い神様なのか? それとも縁結びの神様としての信頼?
「と、いうわけで貴方には私達からの試練を受けてもらいます。その試験に合格すれば私達三柱の加護を授けましょう」
やはり来たか、試練。そりゃあタダで加護だの守護だのもらえるとは思っていなかったけどな。
「ちなみにー、貴方には拒否権もあるわよー。私達から無理強いはしないから安心してー。それに、今すぐ試練を受ける自信が無いのなら、また今度に延期しても良いしー、失敗しても再チャレンジできるわよー?」
・・・拒否権があるのか。延期も再チャレンジも可、と。随分、寛容だな。今、この場で決めろ! チャンスは2度と無い! ぐらいの厳しい試練なのかと思った。
しかし、だ。ここは三柱の加護をいっぺんに貰うチャンス! しかも失敗しても挽回のチャンスがある! だったら・・・
「・・・分かりました。その試練、勿論受けさせていただきます。・・・それで、その試練の内容というのは・・・?」
「無論、戦いだ」
・・・ですよねー。
「俺自ら、と言いたいがお前はまだそこまでのレベルに達していない。それに他にも事情があってな。代わりの者たちが相手になる。・・・出てこい!!」
【戦闘神スサノオ】の掛け声と共に地面から再び三本の光の柱が並び立つ。・・・【戦闘神スサノオ】との戦いも興味あるんだけどな。とても敵いそうに無いが。・・・者たち?
三本の光の柱から出てきたのは・・・体格の良い青年、美しい女性、中学生くらいの少年の三人・・・いや、三柱だった。
「お前の相手はこの者たち・・・【天凱十二将】の内、三柱が務める」
「・・・」コクッ
「よろしく!」
「・・・眠い」
青年は頷き、美女は元気良く挨拶し、少年は・・・やる気あんのか?
っていうか【天凱十二将】って何? 十二天や十二神将なら聞いた事があるが・・・なんかカッコいい。
俺が疑問に思っていると【太陽神アマテラス】【月光神ツクヨミ】は後方に下がって距離を取り、【戦闘神スサノオ】は少し下がって宙に浮いた。
そして今現れた三柱の神々が俺の前に並ぶ。
体格の良い青年は金髪金眼で長剣を持っている。どうやら剣士のようだ。
美女の方は赤髪赤眼で何も持っていない。素手で戦うのだろうか?
中学生ぐらいの少年は白髪黒眼で同じく何も持っていない。・・・戦えるのだろうか?
そして三柱とも共通して黒い軍服のようなきっちりとした制服を着ている。・・・俺が着ている【黒天の戦闘服】に似ているかな? ちょっとシンパシー。
しかし、ここまで和風の神々が出てきてたのにここに来てガラッと雰囲気が違う神々が出てきたな。
「・・・この三柱と戦って勝てば良いのですね? アーテルたち【眷属】の助っ人はありでしょうか? それとも3対1で?」
「うむ、今回はお前の力を見たいのでな。まずはお前一人で戦ってもらおう。そして・・・お前から見れば理不尽に思えてしまうかもしれんが3対1だ」
・・・むう、寛容だと思ったらやっぱり厳しかった。いきなり3対1で戦えとは・・・
「代わりと言っては何だが必ずしも勝つことが条件ではない。我らに資格有りと認めるだけの力を見せてもらえれば良い。そしてこれが一番重要なのだが・・・【天凱十二将】は神々の中でもかなり特殊な者たちなのだ」
「特殊?」
特別強い、とか? おいおい、勘弁してくれ。ただでさえ聞いたことも無い相手なのに・・・おまけに多勢に無勢とは・・・俺、泣いちゃうよ?
「強さもそうなのだが・・・お前も良く知っているはずだ」
「・・・はい?」
良く知っている? 俺が? どういうことだ?
「アハハハハ! スサノオ様! そこだけ言ってもきっとわかんないと思いますよ? 実際に戦ってみればきっと直ぐにわかりますよ!!」
美女が高らかに言う。・・・意外と好戦的?
「うむ、そうだな。・・・ではアルクよ。準備は必要か?」
「いえ、既に準備は出来ています」
なにせ、なにが起こるかわからないからこの世界に来る前に既に準備は万端にしておいた。
「よかろう、では始めるが良い」
そう言って【戦闘神スサノオ】も距離を取った。・・・随分静かなスタートだな。
とはいえ、もう始まっているようなので、俺は警戒しながら三柱の様子を見る。
「・・・そういえば・・・」
そうしたら美女の方がなにやら話し始めた
「自己紹介がまだだったわね」
・・・そういえば名前をまだ聞いていない。
「アタシは【天凱十二将】の一角、【俊天アクセル】だよ!」
・・・え?
「・・・同じく【勇天ストラッシュ】」
・・・なに?
「僕は【全天エレメント】だよ」
・・・ほわっつ?
「じゃあ自己紹介も終わった所で早速行かせて貰うわよ! アルク!! 【俊天の疾走】!!!」
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