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三柱神

俺たちは全員、地面に降り立ち相対する。


【太陽神アマテラス】【月光神ツクヨミ】【戦闘神スサノオ】・・・


日本人であるなら、名を知らない者はいないだろう、というくらい有名な神々だ。太陽神に月光神、戦闘神というのはこのゲームのオリジナルっぽいが。


【太陽神アマテラス】・・・豪勢な巫女服を着た和風美女だ。黒く長い髪と黒い瞳はいかにも日本人らしいが、その美貌は日本人離れ・・・いや、人間離れしているように見える。そして全てを包み込むような優しい微笑みを浮かべている。


【月光神ツクヨミ】・・・十二単衣のような着物を着た、黒髪黒目の和風美女だ。こちらの容姿も人間離れしていて、その瞳からは知性の光を感じさせる。無表情でどこか冷たい印象を受ける。


【戦闘神スサノオ】・・・古代の武士を髣髴とさせる鎧姿の青年だ。日本人らしい黒髪黒目だが、鍛えられた肉体と傷が残る男前の顔は歴戦の戦士という相貌だ。そしてイケメン・・・昔風に言うなら美丈夫と言うのだろうか・・・チッ。


「おい、今舌打ちしなかったか?」


「滅相もございません」


してはいない。心の中で思っただけだ。・・・【戦闘神スサノオ】は心も読めるのか?


「おつかい行ってきたよー!」


「ありがとう、ククリちゃん。偉いわねー」


一方で【太陽神アマテラス】に駆け寄っていき、頭を撫でられているククリ。・・・はて? 確か神話ではククリヒメは天照大神の叔母だったはずだが・・・どう見ても逆転してるよな? ゲームの世界では神話と違うのか?


「・・・今、貴方が何を疑問に思っているのか見当はつきますが深く追求するのは止めてください」


・・・【月光神ツクヨミ】に釘を刺された。どうやら事情があるらしいな。追求するな、と言うのなら止めておこう。・・・今は、だが。


「さて、改めて【高天原】へようこそ。人の子よ」


おお! なにやら神様っぽい挨拶をされた。・・・そういえばこちらの自己紹介がまだだった。


「お初にお目にかかります。俺・・・私はアルク。こちらが順にアーテル、アウル、アークカイザーです」


「クルー・・・」


「だう・・・」


「・・・ヨロシクオ願イシマス」


・・・むう、なんだか畏まってしまうな。アーテルたちにいたっては腰が引けてしまっている。・・・連れて来ない方が良かったかもしれないな。


「そう緊張しないでー。私達は、貴方たちに危害を加えるつもりは無いからー」


・・・確かに、巨大な【神気】こそ感じるものの、敵意や悪意は感じない。ククリと同じく、俺たちをどうこうしようというつもりは無いんだろう。・・・だからといってリラックスできるか、といえばそんなことはありえないんだが。


うーん、この感じ、読者の皆サンにも伝わるだろうか。例えるなら、どこかの国の大統領や王族といきなりご対面してしまった時のような、緊張感というか圧迫感というか・・・すごく偉い人に会ってしまったときの小市民の気持ち? みたいな?


「それに俺たちが顔を合わせるのは確かにこれが初めてだが、俺たちはお前達のことを以前から知っていた」


・・・俺たちのことを以前から知っていた? ・・・それは・・・


「それは、もしかして【不死山】にあった三つの神社のことですか?」


【ツクヨミ神社】【アマテラス神社】【スサノオ神社】の三つだ。その三つが【ヤマタノオロチ】を封印していた、という話を【忍びの里】で聞いた。そしてその封印を施したのが目の前の三柱の神々である事も・・・。復活した【ヤマタノオロチ】と戦った俺たちのことを知っていても不思議ではない、か。


「うむ。【ヤマタノオロチ】の封印は、長き年月を経てヒビ割れを起こし、分身を地上へと解き放ってしまった・・・あのまま放置しておれば甚大なる被害を地上にもたらしていたであろう。そなた達の尽力、感謝する」


・・・ああ、俺たちが倒した【ヤマタノオロチ】は分身だったのね。本体はまだ封印されている、と。だから1週間ごとにレイドクエストとして挑戦できるようになっているのか。・・・ここに来て新たな事実が判明したな。


「本来であれば私達が地上に降りて再度封印を施せば良いのですが・・・」


「そーもいかない事情があるのよねー」


三柱の神は深刻そうにため息をつく。


「・・・それはもしや、【ガティアス】を警戒して、ですか?」


俺の言葉を聞き、三柱の神は驚いたように俺を見る。


「・・・驚きましたね。何故、そう思ったのですか?」


「・・・【精霊図書館】で【知識神オモイカネ】が著した『悪意ある天災』という本を読みました。7つの世界と【ガティアス】の脅威について・・・」


「・・・ほほう、情報収集も怠らぬとは、ますます見所があるな」


「ええ、頼もしいわー」


・・・どうやら当たりらしい。つまり事情というのは・・・


「そう、貴方の想像通り【ガティアス】は神々にさえも取り憑いてしまう。もしも私達の内、一柱でも【ガティアス】に取り憑かれていたら・・・【武術界】は滅んでいたでしょう」


・・・さらっと恐ろしい事を言ってくれる。だが、それが誇張じゃない事は何となく分かる。しかし・・・


「しかしそれなら、過去に【ヤマタノオロチ】を封印した時は? 皆様が実際に【武術界】に赴いて封印をなされたのでしょう? その時は大丈夫だったのですか?」


俺の言葉に三柱の神は苦い顔をする。・・・やばい、地雷ふんじゃった?


「・・・正直な所、我々としてもあの時の行動は捨て身でした。当時の【ヤマタノオロチ】は、それこそ世界を滅ぼしかねないほど強く、さらに【ガティアス】に取り憑かれてしまえば神々でさえ、容易に手出しできない存在となっていたでしょう。我々は【ガティアス】に取り憑かれる事も覚悟した上で【武術界】へと赴いたのです」


「【武術界】へと向かったのは我々のみだったが、実際には多くの神々が万が一に備えて待機していたのだ。なにかあれば直ぐに介入できるように」


・・・つまり、三柱の神の誰かが【ガティアス】に取り憑かれるようなら、すぐさま他の神々が・・・ということか。・・・一歩間違えば【武術界】は神々の争う戦場になっていたんだな。


「結果としては【ヤマタノオロチ】の封印は上手くいったけど・・・少なくない犠牲は出てしまったのよ。・・・人々だけではなく神にも、ね」


・・・大勢の犠牲者が出る壮絶な戦いだった、と。しかも、人間だけではなく神にまで及ぶほどの。今更ながら【ヤマタノオロチ】は恐ろしいモンスターだったと。・・・経験値の美味しいボスキャラとしか思ってなかったよ。なんかすいません。


しかし、そうなると別の疑問が出てくる。


「では【ヤタガラス】は?【ツクヨミ神社】で実際に見ましたし、他の場所・・・世界でも目撃された記録がいくつかあるようですが・・・」


【ガティアス】に取り憑かれることを神々が恐れているのなら、なぜ【ヤタガラス】は普通にあっちこっちに出没しているんだ?


「・・・【ヤタガラス】は導きの神、故に己の定めに従い行動しているに過ぎません」


・・・急に抽象的な説明になった。抽象的というか、哲学的?


「神っていうのはね? それぞれの領分っていうのがあって、それを逸脱する事はできないの。例えどんなに強い【神気】を持っていたとしても、ね」


「【ヤタガラス】は導きの神、戦いの神にあらず。故に戦いは奴の本分ではない。さらに奴は外界で活動する為に己の戦う為の力を封印してしまっているのだ」


戦う為の力を封印? つまり【ヤタガラス】には戦う力が無いって事なのか? 例え【ガティアス】に取り憑かれたとしても戦う力が無ければ・・・って、その覚悟で【ヤタガラス】は外界にいるっていうのか?・・・それって、裸で地雷原を歩いているようなものじゃないか?


「幸いと言うべきか分かりませんが、【ガティアス】はより強い戦う為の力・・・いえ、破壊の為の力に惹かれる傾向があるようです。なので【ガティアス】からすれば【ヤタガラス】は取り憑く程の魅力を感じないのでしょう。・・・それでも危険な行為であることには変わりありませんが」


・・・どうやら【ヤタガラス】は生半可な覚悟で行動しているわけではないようだ。


俺たちの話を聞いていたのか、アーテルとアウルはなにやら複雑な表情をしている。


・・・似合わない顔だな。


「うりうりうりうりうりうりうり」


「クルッ!? クルクルクルー♪」


「だう!? だうだうだうー♪」


と、いうわけでアーテルとアウルの脇をくすぐって無理矢理にでも笑わせてやる。


「・・・お前らにどんな因縁があるか知らんが、考えすぎるな。今のお前達には俺がついてる。仲間もいる。・・・どうしても気になるのなら、今度【ヤタガラス】に遭遇した時にしろ。その時は俺も一緒にいてやる」


「・・・クル!」


「・・・だう!」


うむ、元気が戻って大変よろしい。


そんな俺たちの様子を三柱の神は優しく見守っていた。


作者のやる気とテンションを上げる為に


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― 新着の感想 ―
[一言] ゲームの中の話なのにそんな緊張する必要はあるのか?という 真面目だなぁ…
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