神々の住まう場
門をくぐりぬけると同時に独特の浮遊感のようなものに襲われる。【転移装置】や【大転移門】を使用した時と同じだ。一瞬とはいえ、空中に投げ出されたような、無重力に囚われたような、自分の居る場所が定まらない独特な感覚。何度も体験しているとはいえ未だに慣れないな。
===移動===>???
一瞬の浮遊感の後に、着地。・・・着地?・・・あ、地面がある。門を抜けた先にあったのは・・・金色の・・・草原? 島、なのか? 島の周囲には雲が浮かんでいる。
「・・・全員いるか?」
「クルッ!」
「だう!」
「問題アリマセン」
・・・どうやら無事に全員、来られたようだ。・・・来られたのは良いんだが・・・ここはどこだ?
「各種センサー反応ナシ。・・・我々以外ノ生体反応認メラレマセン」
・・・要するに誰もいないって事ね。そもそもセンサーで神様を捉えられるのか疑問だが。・・・字面だけ見ると凄いこと言ってるな。
それはともかく、まずは現状確認だな。前面には草原が広がっている。しかも金色の草の生えた草原だ。美しい光景だが・・・見た感じ、他に何も無い。どこまでも草原が広がっているだけだ。
後方はというと、これまでと同じように雲が広がっている。状況的に考えて、俺たちは雲の上に浮いている島、その端っこの方にいるみたいだな。・・・うーん、ゲームの中とはいえ、ドンドン現実離れしていくな。
「カイザー、この島・・・島?・・・この島っぽい場所、どのくらいの広さなのか分かるか?」
「測定中・・・簡易測定結果、3000平方キロメートルト推定サレマス」
「へぇ、3000平方・・・キロ?」
・・・確か東京都の広さが約2000平方キロメートルだったような・・・つまり、ここは東京よりも広いってことか? ・・・なんという無駄に広い場所なんだ。
そして俺を呼んだ神様っていうのはどこにいるんだ? それらしい人影・・・神影? もないし、気配も無い。・・・まさかこの広い場所をしらみつぶしに探せとか言うんじゃないだろうな?
「・・・アーテル、ちょっと俺を上空まで連れて行ってくれ」
「クルッ!」
【成体】化したアーテルの背に乗り(アウルも一緒)、上空へ飛ぶ。カイザーも飛行ユニットを装着して付いてくる。
「・・・うーん、なんにも見えないな」
見渡す限り草原が広がっているのみである。もっともここが東京よりも広い場所である以上、全域を見渡せるほど俺の目は良くないのだが。
「・・・計測中・・・周囲数キロニワタッテ人工物、ソノ外ノ反応ハアリマセン」
手がかり0か。今のところ、何か起こるでもないみたいだし、とりあえず移動してみるか。
・・・ん? そういえば俺たちが今しがた通り抜けてきた門が無いぞ? 【転移装置】にしろ【大転移門】にしろ、ちゃんと転送元を転送先に同じ設備が存在して双方向を行き来できるようになってるのに・・・【謁見の門】は一方通行なのか?
「・・・退路は無い、前進あるのみ、ってか?」
「クルー・・・」
「だう・・・」
「・・・」
・・・どうも【神仏界】っていうのは不安を煽りたがる場所らしい。やれやれだな。
「・・・このまま、ジッとしてても何も起き無そうだ・・・とりあえず、島の中心まで行ってみるか」
とあるヒーローだって、ジーッとしててもどーにもならねぇ!って言ってたしな!!
「クルッ!」
「だう!」
「了解デス」
と、言うわけで俺たちは早速移動を開始した。
・・・
「・・・各種センサー、依然反応ナシ」
島の中心に向けて順調の移動中(けっこうな速さで)もカイザーは索敵を欠かさない。だが・・・
「カイザー、センサーに必ずしも引っかかるとは限らないぞ。【武術界】の【ツクヨミ神社】とかだってセンサーには引っかからなかっただろ?」
【武術界】にあった【ツクヨミ神社】【アマテラス神社】【スサノオ神社】は不可視の結界に覆われていて、視認は勿論、センサーなどによる探索も無効化していた。【神気】を感知するか、何らかの違和感(もしくは勘)が無ければ発見できなかっただろう。それらは機械的な探査ではなく肉体的な感知でしか発見できない物だ。
「カイザーも称号効果で【神気】を感知できるようになっているんだろう? センサーよりも感知に集中すべきなんじゃないか?」
「・・・ナルホド、シカシ・・・」
・・・まあ、あくまでこの場では、という話だがな。実際、カイザーのセンサーも十分に役には立ってる。しかし、だ。
「・・・ロボットのカイザーに言うのもなんだが、機械系に傾倒しすぎなんじゃないか? カイザーは【武術】や【魔法】だって使えるんだろう?」
最初にカイザーと会った時・・・まあ、敵だった上に【ガティアス】に取り憑かれていたんだが・・・その時は、【兵器】だけではなく【武術】や【魔法】も使っていた。そして今もそれらは使えるはずだ。にも関わらず、最近のカイザーの戦い方は【兵器】一辺倒になりつつある。・・・まあ、俺たちがそうさせている、という面もあるが。
「せっかくラグマリアとは違う能力を持っているんだ。使わないと損だぜ?」
「うんうん」
「・・・確カニ、戦術ノ幅ヲ狭メルノハ作戦成功確率ヲ低下サセマス。・・・了解デス。ツキマシテハ指導ヲオ願イシタイノデスガ・・・」
「おう、俺でよかったらいくらでも付き合ってやるぞ」
カイザーの戦力アップはクラン全体の戦力アップに繋がるからな。損は無いし、むしろ望む所だ。
「・・・ならまず、【神気】を感知する所から始めてみろ」
俺が今現在感じている【神気】と同じ物を感じられれば合格である。
「・・・」
静かに集中し始めるカイザー。・・・なお、ロボットのカイザーにこの表現が的確なのかは謎である。
「・・・【神気】ノ感知ヲ確認。シカシ、周囲全方向カラ感知シテイマスガ・・・」
「おおー!」
・・・まあ、ここは【神仏界】、【神気】が充満している世界だからな。
「・・・違和感を探すんだ。周囲の【神気】に溶け込んでいない、浮いた【神気】を。感じ方は人それぞれだ。その部分だけぽっかり穴が空いているようにみえたり、そこだけ温度が違うように感じたり、あるいはそこから声のような何かが聞こえたり、な。そういう違和感のある場所を探せ」
これを突き詰めていけば、人ごみの中で特定の人物を見つけたりする事が出来るようになる。・・・一般人には無理? それは失礼。
「・・・!?」
俺のアドバイスを受け、集中していたカイザーが突如、停止した。それを見たアーテルも慌てて停止する。
「あわわわわ!?」
・・・そして俺たちの後を付けていた奴も急停止する。
「・・・マスターアルク。何時カラ気ヅイテイタノデスカ?」
ソイツを見て警戒を強めるカイザー。と、アーテルとアウル。
「・・・10分くらい前、かな? センサーに引っかからなかったみたいだから妙だとは思っていたんだが・・・気づくのが遅いぞ? アーテルにアウルもな」
「・・・面目次第モアリマセン」
「クルー・・・」
「だう・・・」
・・・まあ、今回は相手のほうが上手だったみたいだけどな。地の利もあちらにあるんだろうし。
さて、俺たちの後を付け、ついでにちょこちょこ会話に入り込んできた相手なんだが・・・
「・・・なんだ、気づいちゃってたんだ! まあ良いや! ククリはククリだよ!!」
そこにいたのは・・・小学生くらいの女の子だった。
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