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1階の報酬

「いやー、まいったね! 完敗だよ!!」


・・・光となって消えたはずのゼルエルがなぜか元気な姿で目の前にいる。


先ほどゼルエルを倒して戦闘終了! となったはずだが、その途端、当のゼルエル本人が空から舞い降りてきた。・・・どこから出てきたんだ?


「僕は1階の対戦相手であると同時に、この塔の案内人でもあるからね。倒されてもすぐに復活するのさ! あ、安心して! 2階以上ではそんなことは起こらないからさ!」


起こってたまるか!・・・とりあえす【試練の塔】の1階はクリアした。・・・モンスター相手とは別の疲れがあったが。やはりモンスター戦と対人戦では勝手が違うな。レベリングもそうだが、対人戦の練習もしておかないと駄目だな。


見学組の皆の感想はというと・・・


「アルクと互角に戦える力強さと素早い動きに対応する必要があるわね」


「【魔法】メインで倒すとなると先制攻撃でどれだけダメージを与えられるかどうかがカギでしょうか」


「【兵器】で倒す場合は・・・火力が問題なのだ。それに防御系の【兵器】も用意しておいた方がよいのだ」


「ブランちゃんたちが戦うなら・・・スピードがネックなのです。上手く連携が取れれば何とかなると思うのです」


「うーん、空中に飛び上がられる前に速攻で何とかするっす!」


「・・・それは結果論だからね? アシュラは実際に見てみる前にそんなこと考えていなかっただろう? 僕やほかの人のフォローがあればなんとかなると思うけど・・・」


・・・それぞれ感想はあるみたいだが、誰も負けるとは思っていないみたいだ。・・・頼もしいと思えば良いのだろうか?


「ハハハ! ・・・君の仲間もすごそうだね! ・・・それはそうと本当にここで止めちゃうのかい?」


ゼルエルと戦う前に、今回は1階だけチャレンジしてみる、という話をしていた。・・・さすがにこのまま上の階に上がっていくには準備不足だ。


「ああ、本格的な挑戦は準備万全にしてからにさせてもらう」


「・・・そっか! それじゃあ仕方ないね! ・・・その冷静さも君の武器だと思うよ!」


勢いがある内に行けるところまで行くのも時には必要だが、やはり時と場合による。見極めは大事だよね。戦いはクールで情熱的に、というのが俺のモットー! ・・・今考えたけど。


「それじゃあ、さっそくギブアーップって「あ?」・・・叫ばなくても止められるようしてあげるよ。・・・今回は特別だからね」


なぜ勝った俺がギブアップなんて叫ばなきゃならん、という思いを込めてゼルエルを睨んだらなぜか免除された。


「やれやれ・・・じゃあ、今回の報酬はこれだよ!」


そう言ってゼルエルが差し出してきたのは・・・先ほどまでゼルエル本人が使用していた槍だった。


「・・・なんか適当じゃないか?」


正直、微妙。若干の残念さを込めて言う。


「とんでもない! 確かに見た目は普通の槍だけど他じゃお目にかかれない逸品だよ!」


と力説するゼルエル。


なので槍を受け取り、【鑑定】してみる。


【不朽の槍 ☆8】

特性:ATK+30 属性:無 消耗度:---

SLOT1:破壊不可

不朽の力が宿った槍


・・・攻撃力は大したことはないが・・・【破壊不可】だと? 消耗度の欄が点線になっているし、これはつまり・・・


「絶対に壊れないってことだね。その槍自体の性能は大したことがないけど色々使えるよ? 現に君の大剣・・・圧倒的な性能差があったのに打ち合っても壊れなかったしね」


・・・そういう武器もあるのか。【豪剣アディオン】で思いっきり斬りかかったのに手ごたえがいまいちだったからおかしいと思ったが・・・攻撃用ではなく防御用としてはかなり有用だな。・・・普通、槍を防御用としては使わない気がするが。


「それに腕の良い職人なら、その槍を素材として新しい武器を作ることもできるよ? もちろん、【破壊不可】を引き継いだ武器をね。・・・相当の腕が無いと無理だけど」


・・・ということは【破壊不可】を持った強力な武器も作れるってことか。・・・なるほど、【試練の塔】の報酬はかなり有用なものが多いようだ。


「・・・こんな所だね? じゃ、今度はちゃんと挑戦してくれよ?」


・・・満面の笑みだ、ゼルエルは。・・・負けたはずなのに。


・・・うーん、なんか勝ったような気がしないな。


「・・・ああ、そうするよ。その前にゼルエル、聞きたいことがあるんだが?」


「ん? なんだい? 僕が答えられることはなんでも答えるよ!」


ほほー、何でもか。


「・・・ゼルエル、アンタ、さっき()()で戦ったか?」


「え? 勿論だよ!! 僕は何時だって本気さ!!」


・・・表情変わらず、笑みのままだ。その様子に嘘は無いように見える。


「・・・じゃあ、()()で戦ったか?」


俺のその言葉にゼルエルの笑顔が止まった。


一瞬。


ほんの一瞬だけ、ゼルエルの目が真剣と書いてマジと読む目になった。


「・・・その答えはもっと上の階にたどり着けばわかるさ!!」


ゼルエルはすぐに笑顔に戻る。


・・・やはりそうか。力と戦を司る【天使】という割に装備が弱すぎるし、戦い方も俺に合わせるような感じがしていた。【天使】の特性を生かして最初から空中で戦えたはずだし、本人が言った事を無視して見学組を狙うようなこともなかった。終始フェアに徹してこちらの強さを試していたんだろうな。


ヤマトタケルさんと同じように力を抑えているんだろう。そしてもっと上の階に行けば全力のゼルエルと戦うことができる、と。


「・・・なるほど。なら全力のアンタと戦えるようしっかり準備しておかないとな」


「ハハハハ! 楽しみに待ってるよ!!」


こうして俺たちは【試練の塔】を後にした。


塔の外にて。


「・・・それで? 実際に戦ってみたアルクの感想は?」


アテナからの質問である。しかし、全員が聞きたそうにしている。・・・戦いを譲ってもらった手前、答えないといけないだろうな。


「・・・正直、強いな。あのゼルエルってのは。槍捌きは見事だと思ったが、槍のスキルは使ってこなかっただろ? 多分、俺の【豪剣アディオン】に対抗する為に槍を使っていただけで槍がメインウェポンじゃなかったんじゃないかな」


「あれだけの腕前でっすか!?」


俺の【豪剣アディオン】に対抗するのなら同レベルの大剣を用意するのが妥当だが・・・【破壊不可】という特殊な武器があるのなら大剣より取り回しの良く、かつリーチが同じくらいの武器が良いだろう。そういう意味で槍を出してきたんだと思う。・・・まあ、その槍を警戒して最初は刀で行ったんだけどな。


おそらくアシュラが戦っていたら別の武器を、アテナやアルマが戦っていたら対【魔法】メインの戦い方をしていたんじゃないかと思う。・・・食えない奴だ。


「それにレベル以上にパワーもスピードもあったと思う。レベルで上回っていたとしても楽に勝てるとは思えないな。だからこそ、あんな不意打ち気味な倒し方を選んだわけだが」


・・・外野にいたアーテルやアウル、カイザーに不意打ちしてもらうという手もあったが、さすがに卑怯だろう。もっとも、ゼルエル本人があれだけ、外野も戦闘中であることを強調していた以上、そういう卑怯な不意打ちも含めて戦いだと思っているとは思うが・・・


それは逆に言えば相手も同じということだ。事前に説明を受けている以上、敵の方も不意打ちや罠を張っていてもおかしくない。そしてそれを卑怯とも言えないだろう。


「・・・予想以上に過酷な塔みたいですね」


「だがその分、報酬が良いのは今のでわかったからな。確かに【試練の塔】とやらは挑戦する価値はあるんだろう」


いずれにせよ、今の俺たちでは準備不足でレベル不足だ。


だが、いつかきっと挑戦してやろう。


そう決意する俺なのであった。

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