転生とは
「皆様、【種族スキル】の取得は終わったようですね。では、今回は誰も【転生】を行わないようですが、【転生】について詳しく説明いたしますね」
「お願いします」
実行しないのに説明だけさせるのは相手に申し訳ない気がしないでもないが、今後の方針を決める意味でも説明は聞いておきたい。
「まず、【転生】後の種族レベルは必ずLv.1になります。また、最初の【転生】を行う際は、Lv.40以上まで成長する事が条件です」
「・・・最初の?」
Lv.40以上で【転生】できるのは判るが、最初の、とはどういうことだ?
「一度【転生】した場合、次の【転生】を行うにはLv.50、更に次の【転生】にはLv.60と【転生】可能レベルが上がっていきます」
・・・つまり、【転生】可能レベルがカンストより上になったらもう【転生】は出来ないってことか。事実上の回数制限・・・レベル上限が上がれば再度可能になるんだろうが・・・これは慎重に【転生】先を選ばないとな。
「また、特殊なアイテムなどを用いると特別な種族に【転生】できる場合も有りますので、是非皆様で探求してみてください」
・・・特殊なアイテムか・・・これに関しては情報が何も無いな。ラングたち【インフォガルド】に情報はあるだろうか。
「そして【転生】に関して一番重要なのは引き継ぎです」
「引き継ぎ?」
「はい。まず【転生】前に取得したスキルに関しては【転生】後も全て使用できます。ただし、レベル制限など条件があるスキルに関しては条件を満たす必要がありますが。そしてもう一つ。【種族スキル】も引き継ぐことができます」
「【種族スキル】も?」
【種族スキル】はその種族以外に使えないんじゃあ・・・【転生】した場合は例外って事か? 例外っていうか・・・抜け道?
「そうですね。例えば【魔族】の【種族スキル】、【魔核】を取得した状態で【人間】に【転生】すれば、【魔核】を持った【人間】となりますし、さらに【天使】へと【転生】すれば【魔核】を持った【天使】という存在になる事が出来ます」
・・・ふむ。本来ならありえない組み合わせの種族になる事が出来るってことか。手間はかかるが他に無い自分だけの種族になれる・・・いわゆるキャラカスタマイズ。
「そしてもう一つ、ステータスの引き継ぎです。【転生】後の皆様のステータスは【転生】前のステータスによって底上げされ、成長率も上昇しています。種族によって差も有りますが、同レベルの【転生】前と【転生】後のステータスを比べると、およそ1.5倍から2倍近く強くなります」
そんなにか・・・強くてニューゲーム状態って事だな。
「それは例えば【人間】から【人間】・・・同じ種族に【転生】した場合も、ですか?」
「勿論です。中には種族にこだわりのある方もいらっしゃいますからね。同じ種族であるのなら、より【転生】を繰り返した者のほうが強くなります。それと【転生】前のレベルが高ければ高いほど【転生】後のステータスも高くなりますからできるだけ鍛えてから【転生】を行う事をおススメします」
・・・ふーむ。要約すると高レベルで【転生】を繰り返せばすんごく強くなれるよ! ってことか。
そう考えると【転生】するのがおススメなのは分かるが・・・問題はレベリングにかかる時間だな。ただでさえ現状のレベルになるまで数ヶ月かかってるのに、今【転生】してしまってトーナメントまでに今以上の実力になるだろうか? ・・・確実に間に合わないだろうな。
「【転生】に関する説明は以上です。他に何かありますか?」
説明が終わったレリエルさんに質問タイムとなった。まず最初にアルマが手を挙げた。
「先ほど、私とアテナ、アルクさんの【転生種族】の項目を見せてもらいましたが、【魔族】である私には【天使】の項目がありませんでした。先ほどの説明では【人間】を経由すれば【転生】できるそうですが直接はやはり無理なんですか?」
そういえば、俺の【転生種族】の項目には【天使】も【魔族】もあったのにアテナの【転生種族】の項目には【魔族】が、アルマの【転生種族】の項目には【天使】が無かったな。
「そうですね。【転生】できる種族は、現在の【種族】に近しい【種族】、または同じ系譜の【種族】に限られます。唯一の例外が【人間】という種族です」
・・・【人間】が特別なのか平凡なのか異常なのか判断しかねるな。
「なお、先ほど【人間】はほとんどの種族に【転生】できるとは言いましたが、【転生】できない種族もいます。・・・いわゆる【上位種族】ですね」
「【上位種族】?」
「例えば【大天使】という種族は【天使】という種族の上位種であり、【人間】から【転生】する事はできません。あくまで【天使】からのみ【転生】する事が出来ます」
・・・要するに【大天使】は【天使】の進化系だから、間をすっぽ抜かす事はできないよ、と。まあ、この辺りは納得できるな。
「ああ、逆は出来ますよ? 【大天使】から【天使】や【人間】に【転生】することは出来ます。もっとも好んでやる人がいるかどうかは別ですが・・・」
・・・確かに。よほどの理由が無いとやらないわな。
「では別の質問なのだ」
今度はアヴァンが手を挙げる。
「どうぞ」
「先ほど、【謁見の門】で神々に認められれば【加護】や【守護】を得られると聞いたのだ。それは【転生】を行っても、そのままなのだ?」
・・・おー、そんな話もあったな。種族が変わったらその辺りどうなんだろうか? 仮に【魔族】から【人間】、そして【天使】に【転生】した場合、【魔族】系の神様から【天使】系の神様へ鞍替えしたことになるんだろうか。
「・・・難しい問題ですね。あくまで【加護】や【守護】はその神から認められた証ですので、その神を裏切るような行為をすれば取り消しになります。それは種族が変わることを裏切りと取る神もいれば、その程度では変わらないという神もいます。ただ、アナタがしっかりと目的があってそれらを行うのならばその旨をしっかりと伝え、神がそれをお認めになれば問題は無いと思います」
・・・要するにきちんと話をしろってことか。しかし、【魔族】の神に、俺【天使】になります! とか言っても大丈夫なのか? 普通に怒られそうな気がするが・・・仮に【加護】や【守護】を取り消されたとしても、自分の行動の結果として、すっぱり諦めるしかない、か。
逆に今の話からすると複数の神様からも【加護】や【守護】を得られるみたいだから、結局は本人次第なんだろう・・・多分・・・きっと。
・・・こんな所かな。他の皆ももう質問は無いみたいだし・・・では最後に・・・
「せっかくですから最後に一つ、聞いてみても良いですか?」
「はい、なんでしょう?」
興味本位だが、是非聞いてみたい事が一つだけあったりする。
「・・・レリエルさんが思う、一番強い種族ってなんですか?」
「・・・」
・・・やべぇ、黙り込んでしまった。・・・いや、レリエルさんはニコニコ微笑んでいるんだが・・・今は逆になんか怖い。
「・・・実は私たちもそれを探している最中です。もし、皆様の中で結論が出たら是非、教えてください」
・・・
・・・俺たちの用件は済んだので【進化の宝玉】を返して、【進化の神殿】を後にした。
・・・上手く誤魔化された気がしないでもないが、【天使】が一番です! と言われなかっただけ、信頼は出来る、かな。
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