進化の神殿
===移動===>【進化の神殿】
一通りの準備をしたところで、【進化の神殿】前までやって来た。
・・・うん、文字通り神殿だな。もう少し詳しく言うならギリシャのパルテノン神殿とかドイツのヴァルハラ神殿といった感じか。巨大な石柱で囲まれた巨大な建造物。
その建物に唯一ある入口から中へと入っていく。そして・・・
「ようこそおいでくださいました。私はレリエル、と申します」
一人の女性【天使】が迎えてくれた。
長いブロンドの髪の美しい女性だ。先ほどのラグエルさんもそうだが、どうにも浮世離れした雰囲気を感じる。
それにレリエルって確か・・・懐妊を司る天使じゃなかったっけ? 出産を見守り、守護する天使って聞いた事があったような・・・
「・・・確か産まれてきた子供の運命を予言する、という話もあったはずです」コソッ
アルマが補足してくれた。なるほど、その辺りを【転生】と絡めているのかもな。
「それではご案内いたします。私の後を付いて来て下さい」
ラグエルさんの時と同様、俺たちを案内してくれるレリエルさん。通されたのは・・・執務室のような個室だった。椅子が用意されていたのでそこに座る俺たち。レリエルさんは俺たちに向かい合うような形で椅子に座った。あちらには机もある。・・・なんか面接受けるような感じだな。
「それで、本日はどういったご用件でしょうか」
やはりレリエルさんもラグエルさんと同じように柔らかな微笑みを浮かべながら尋ねてくる。・・・【天使】は皆そうなのだろうか・・・いや、アテナは「なに?」・・・いえ、何でもありません。
「・・・俺たちはここで【種族スキル】の取得と【転生】が出来ると聞き、やってきました。【転生】は今すぐするつもりは無いのですが、【種族スキル】は取得できるようなら取得したいと思います。・・・何分、俺たちも初めて訪れたので詳しい説明をしていただければ、と思っています」
・・・できるだけ丁寧にうかがってみる。礼儀を忘れない男、それが俺である。
「なるほど・・・それではご説明させていただきます。まずは・・・こちらの宝玉をお持ち下さい」
そういってレリエルさんが机に置いたのは7つの水晶玉のような・・・宝玉? だった。数からしてプレイヤー用だろう。俺を筆頭にメンバーが一人一つずつ手に取り、着席する。
「それは【進化の宝玉】といって、この【進化の神殿】内で使用できる特別なアイテムです。それを手に持ち、情報を見たい、と念じてみてください」
言われたとおりにしてみると【メニュー】が勝手に開き、更に二つの項目・・・【種族スキル】と【転生種族】というのが出てきた。
「今、皆さんに見えているのが現在取得できる【種族スキル】及び【転生】できる種族の一覧になります。【種族スキル】は種族によって種類は千差万別であり、さらに種族によっては複数の【取得スキル】を覚えられる場合もあります。条件を満たしていない場合は???と見えるはずです。その場合は強さが足りないか、他に特殊な条件があってまだ解放されていないので、是非探求してみてください」
ふむふむ、なるほど・・・と言いたいが・・・
「あの、すいません。俺の【種族スキル】の項目、何にも無いんですけど・・・」
取得できるスキルも???の項目も何も無い。
「あなたの種族は・・・【人間】ですね。【人間】には【種族スキル】がありません」
なん・・・だと・・・
「代わりに【人間】はバランスよく成長し、更に多くの【転生】先を持つ事ができる種族でもあります」
「多くの【転生】先?」
試しにアテナやアルマの【転生種族】の項目を見せてもらうが・・・本当だ。二人の【転生】先の種族は10種類も無い。対して俺の【転生】先の種族は・・・【天使】【魔族】【エルフ】などなど100種類以上ある。
「ほぼ全ての種族に転生できる・・・それが【人間】という種族の特性ともいえますね」
だそうだが・・・なんか悔しい。
とりあえず俺が取得できる【種族スキル】は無いみたいなので他の連中の物を見てみる。
「私は【神眼】っていうスキルだって。【看破】よりも更に詳細な情報が知る事が出来て、敵以外にも色んな生物や物も解析できるって」
ふむ、アテナ・・・【天使】の【種族スキル】は何でも見通すような神の目、らしい。
「私は・・・【魔核】だそうです。【魔族】が持つ第二の心臓みたいなもので、魔力を貯蔵する事が出来るみたいですね」
アルマの【魔族】の【種族スキル】・・・これスキルなのか? 第二の心臓って事は、体の一機能ってことだよな?
「アーニャのは【ハーフリングの祝福】なのです。このスキルを使用すると【眷族】の能力を一時的にアップさせる事ができるらしいのです!」
【ハーフリング】の【種族スキル】は・・・アーニャにドンピシャだな。本人よりブランたち【眷属】の方が戦闘要員なわけだし。
「我のは・・・【思考加速】? だそうなのだ。高速で考える事が出来て機械系の生産効率がアップするらしいのだ。あともう一つ、【並列思考】・・・これは同時にいくつもの物事を考える事が出来るらしいのだ」
アヴァンの種族は【ジーニア】だっけ? らしいスキルだが・・・脳みそが疲れそうなスキルだ。アヴァンに後で使用感を聞いてみよう。
「ボクのは【竜闘気】らしいっす! 身体能力が劇的に向上するらしいっす」
アシュラは【竜人】だったか。そのまんまだな。・・・ド○オーラとか紋○閃が撃てるようになるのかな?
「僕は・・・【農耕励起】? 農作業の効率アップと作物がより美味しくなるスキルだそうです」
【ファームエルフ】のアスターのスキルもそのまんまだ。・・・地味ながら、実はクランに一番貢献してくれるスキルかもしれない。
とまあ、皆の【種族スキル】はこんな感じだ。当然、取得しない理由も無いので皆、その場で取得した。・・・俺も次に【転生】する種族、真面目に考えておかないとな。
「皆様、取得なされたようですね。それと皆様は【眷属】をお連れですね。では一体ずつ【進化の宝玉】を持たせてあげてください」
「・・・アーテルたちに?」
「クルー?」
この流れはもしかして・・・試しにアーテルに【進化の宝玉】を渡す。渡すといってもアーテルが宝玉に触れる程度だが。すると【メニュー】の表示が切り替わった。今度はアーテルの【種族スキル】と【転生種族】の項目が出てくる。
「おお・・・アーテルたちにも【種族スキル】と【転生種族】があるのか」
「ええ、勿論です。皆様の【眷属】も一つの存在、一個の生命ですから」
と、言う事らしい。俺が【種族スキル】を取得できなかった分、アーテルたちに期待したい!
なになに・・・アーテルの【転生種族】の項目は???だった。条件を満たしていないらしいが、アーテルも進化可能って事だよな! そして【種族スキル】については・・・取得可能な物が一つ。
「・・・【魔龍覚醒】?」
【魔龍覚醒】
その身に宿る魔龍の力を一時的に覚醒させる
物理攻撃力、魔法攻撃力アップ
・・・単純に攻撃力アップのスキルみたいだが・・・魔龍の力って大丈夫なのか?・・・後でちゃんと確認しよう。
「・・・ふむ、次はアウルだ」
「だう!」
アウルの【種族スキル】と【転生種族】は・・・残念ながらどれも???だった。どれも条件を満たしていないらしい。しかし、空欄では無い以上、期待は出来る。もっとレベリングしてリベンジだな。
「じゃあ、最後にカイザー」
「了解デス」
さてさてカイザーは・・・【転生種族】は???だな。というかカイザーにも【転生】先の種族があるのか・・・【クランメカロイド】以上の何かってことか? ・・・まあ、良い。【種族スキル】の方は・・・
「【オーバーリミット】・・・」
【オーバーリミット】
クランメカロイドの残り制限時間を一気に消費して機体性能を大幅にアップさせる事ができる
・・・うーん。これも強力そうなスキルだな。そして何時もの事だが、このスキルがクランクエストや緊急クエストの時にあれば、と思わずにはいられない。まあ、デメリットもあるから、必ずしも有利になったとは限らないが。
他のメンバーもそれぞれ確認したらしい。
レオーネは【獅子咆哮】、攻撃力をアップさせる。
フィオレは【火鳳炎凰】、火属性効果をアップさせる。
ブランは【聖竜の羽ばたき】、味方全てに聖属性を付加する。
ノワールは【黒龍の呪い】、攻撃時にランダムで状態異常を付加する。
テールは【地竜の恵み】、味方全ての防御力をアップさせる。
ラグマリアは【マキナチャージ】、【兵器】使用時のエネルギーチャージ時間を短縮する。
ミコトちゃんは【生命の祝福】、味方の状態異常回復、及び一定時間状態異常を予防する。
ルドラくんは【武闘演舞】、【精霊憑依】中、格闘能力がアップする。
・・・なぜ同時期に【眷属】になったルドラくんは【種族スキル】をゲットできたのに、アウルは出来ないのか。・・・きっと俺の努力が足りないんだな、うん。・・・頑張ろう。
なお、【転生種族】の確認はまた今度ということで。今すぐ【転生】を試す訳でもないしな。
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