スタコラサッサ
「申し訳ないミミングさん・・・今日はお暇させてもらうよ」
さすがに2度も注意されて居座るほど面の皮は厚くない。
「・・・あ、その前に【禁忌魔法】につ・・・わぷっ!」
「そうね! お暇しましょう!!」
何か言いかけたアルマの口を塞ぎつつ、立ち去るよう促すアテナ。・・・そのあぶねぇ話題は俺たちがいない所でしてくれ、アルマ。
「・・・そうですか。私としては他のお客様のお邪魔にならなければ良いのですが・・・では出口までお送りしましょう」
そう言うとパチンっと指を鳴らすミミングさん。
次の瞬間、視界がぶれた。
「え?・・・おぅわ!?」
「「キャア!?」」
そして俺たちは地面に落ちていた。
「おわっす!!・・・あれ? アニキ?」
「・・・どこから落ちてきたんです?」
そしてそこにはアシュラとアスターがいた。
「アシュラ? アスター? ・・・ここは・・・【精霊図書館】の入口か」
・・・どうやら俺たちはミミングさんによって【転移】されたらしい。・・・今のが【転移】か・・・本当に一瞬だな。・・・落ちたのはミミングさんがわざとやったのだろうか。
「アイタァ・・・やっぱりミミングさん、怒ってたのかしら」
「・・・それより私の上からどいてくれませんか、アテナ。重いです」
「なんですって!?」
やいやい言い合う二人。・・・無視してアシュラたちに向き合う。
「・・・ちょっと色々あってな。二人はどうしてここに?」
「アニキたちが時間まで【精霊図書館】で時間を潰してるってメールが来てたっすから、迎えに来たっす」
・・・そういえば入れ違いにならないよう前もってメールしておいたんだっけか。今日の本題は【精霊図書館】の調べ物じゃないからな。・・・にしてはどっと疲れているのは何故だろう?
というかもうそんな時間になってたのか。
「そうか・・・悪いな、二人とも。中にアーテルたちがいるから皆で一旦クランホームに戻ろう」
「いえいえ、ボクらも来たばっかりっすから」
「そもそも厳密に時間を決めていたわけでもなかったですからね」
・・・そういえばそうだった。うちは時間の緩い気楽なクランです。
「・・・じゃあ、行くか」
言い合っているアテナとアルマを宥めつつ、【精霊図書館】の1階にいたアーテルたちを拾ってスタコラサッサとホームへ帰還する。
「・・・ところで、アテナにアルマ。さっきのクラッカー、誰に貰った?」
「私はアテナに渡されましたが・・・」
「私はラングさんから貰ったわ!」
・・・やっぱりか。あの野郎・・・
この借りはいつかヤツに返そうと心に決める俺であった。
===移動===>【アークガルド】クランホーム
「あ! お帰りなさいなのです!!・・・アルクさん、なにやらお疲れなのです?」
戻ってきた所に丁度アーニャがいた。・・・そんな疲れた顔をしてたんか、俺。いかんな、今日はまだこれからなのに・・・これからなんだよなぁ・・・はぁ。
「いや、なんでもないんだ、アーニャ。・・・皆揃ったから会議室に集合・・・ってアヴァンはまだ?」
「はいなのです。【工房】に引きこもりっぱなしなのです」
職人気質というべきか・・・どうも一つの事に集中すると他の事が見えなくなりがちなんだよなぁ、アヴァンは。ガットもだけど。
とりあえすメールで【機甲界】マル秘情報有り、と送信しておく。アヴァン本人が見なくてもラグマリアが見ればアヴァンに伝えて直ぐに来るだろう。
全員で会議室へと移動する。
・・・
「それで? マル秘情報とはなんなのだ?」
・・・会議室に行ったら既にアヴァンがスタンバっていた。・・・おかしい。地下の【工房】からどうやって俺たちより先に会議室に入ったんだ?
「ああ、と言っても重要と思えるかどうかは本人次第だけどな」
全員が席に着いたところで、ついでにアーニャにお茶(ミミングさんが出したお茶と良い勝負)をもらった
所で【精霊図書館】であったことを話す。
ただし、2階にあった【ガティアス】に関する事と、アテナ、アルマに関する事は伏せる。前者に関しては自分の目で確かめて欲しい。後者に関しては本人が話すべきことなので俺から特に言うことは無い。
なのでこの場で話すことは、『天馬と魔龍』『クランメカロイド開発記録 上巻』『魔法と魔術』の概要と2階への行き方だ。
「ノワールちゃんにそんな過去があったなんて・・・これは是非、【白竜王】とやらを探さなければならないのです!!」
「キュア?」
おお、やはりアーニャがその気になったか。俺としても同感だ・・・当のノワールがよく分かってないみたいだが。
「そうだな。俺もアーテルを【白竜王】に会わせなきゃいけない・・・と思う」
「クル?」
・・・うん、こっちもよく分かっていないようだ。やはり生まれ変わりのようなものだからだろうか?・・・万が一の時は俺が守ってあげなければ!
一方でアヴァンの方は・・・
「むう、過去の偉人キャラが【クランメカロイド】を作ったとは意外だったのだ・・・是非、会ってみたいのだ。それに【オーパーツ】とやらも気になるのだ・・・」
確かに俺も会ってみたいとは思うが・・・本の内容からして大分過去の話のような気がするから本人に会えるかどうかは微妙な所だ。【クランメカロイド】の元になった【オーパーツ】も結局出所不明だし・・・まずは下巻を探さないといけないだろうな。
その他の人たちの反応はというと。
「色んな事が知れたし、また行かないとね!」
「うぅ・・・【禁忌魔法】・・・」
アテナとアルマは・・・うん、アルマのことはアテナに任せ(押し付け)よう。
「ボクもルドラのこととか【竜人】のこととか調べないといけないっすね!!」
「僕は農業関係かなぁ・・・新しい情報があれば良いけど・・・」
アシュラとアスターは元々【精霊図書館】の事は知っていたが、2階には行ったことが無いので興味があるらしい。
「・・・まあ、今日は出だしから色々あったが、予定通りアシュラとアスターの装備用に【ミスリルタイト】の入手に行こうと思うが・・・」
・・・アヴァンとアーニャが何かを訴えかけるようにこちらを見てくる。・・・やれやれだ。・・・アルマも同じくこっちを見ているが、こっちは無視。
「・・新しい【兵器】や【料理】のヒントが得られるのはクランとしても利益になる。・・・行ってこい」
「わかったのだ!!」
「行ってくるのです!!」
もの凄い勢いで会議室を飛び出していくアヴァンとアーニャ。・・・と、それを慌てて追いかけていくラグマリア、ブラン、ノワール、テール。・・・頑張れ。
俺はアシュラとアスターに向きなおる。
「スマンな二人とも。今日はアヴァンとアーニャ抜きで行く」
「いえいえ、元々、こちらがお世話になっている身ですから」
「そうっす! 本来ならボクとアスターだけで行くべきっすから!!」
・・・ええ子やなぁ、二人とも。まあ、元々、手伝えるやつが手伝うって話だったから、用があるヤツはそっちを優先で良いんだけど・・・発端が俺だけに駄目とは言えなかった。・・・俺が二人の分まで頑張らねば。
「あの・・・アルクさん・・・」
何かを言いかけるアルマ。
「明日にしろ」
【精霊図書館】に行きたいのだろうが、ミミングさんに半ば追い出された俺たちが戻るのはなんというか・・・体面が悪い。
「・・・わかりました」
しぶしぶといった感じだが納得してくれた。・・・そんなに【禁忌魔法】に興味があるのか。俺まで気になってきたじゃないか。
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