ガティアスと7つの世界
「それではごゆっくり」
そう言ってフッと消えるミミングさん。・・・本当に【転移】が出来たんだな。
それはともかく、彼女が置いていった【ガティアス】に関する本。
タイトルは『悪意ある天災』である。
「なんというか・・・不吉なタイトルよね」
「ええ・・・あまり積極的には読みたくありませんね」
・・・正直、俺も同意見だ。
あくまで俺のイメージだが天災=人類ではどうする事もできない事象だと思う。そんなものに悪意なんてあったら・・・なぁ?・・・人類オワタ?
「・・・いずれにせよ【ガティアス】に関する情報はこれしかないみたいだし、読んでみるしかないんだけどな」
これまでの情報をまとめると、アーテルやアウルとも関係があるわけだし・・・無視するわけにもいかない。主の責任として!
と、いうわけで早速本を開く。
『ガティアスは遥か太古より現在に到るまで存在し続けている。
その正体は誰にも・・・神々でさえも分かっていない。
とある神によれば、ガティアスとは神々よりも更に古き存在。
世界の始まりから、いや世界が始まる以前から存在していたとも言われている。
ガティアスが一体どこから現れるのかは分からない。
しかし、ガティアスはどこにでも現れる。
ガティアスが神々にとっても脅威であることは疑いようの無い事実である』
・・・のっけから微妙に重たい内容だな。【ガティアス】ってそんな大げさな存在だったの?
『ガティアスとは神々がつけた名である。
その意味は悪意ある天災であるという。
ガティアスは生物、無機物を問わずあらゆる物に取り憑き、破壊を撒き散らす。
それはガティアスが取り憑いた器が壊れるまで続く。
器が壊れると同時にガティアスは何処かへ消える。
そしてまた再び現れ、同じ事を繰り返す。
言葉が通じず、意思疎通もできず、一度取り憑かれれば助かる事は無い。
その存在が現れた時、戦うか逃げるか、どちらかを選択せざるを得ないのだ
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ガティアスはどんなものにも取り憑く。
人間にも、モンスターにも、機械にも、精霊にも・・・神々にでさえも。
そして一度でも取り憑かれれば助かる道が無いのは同じである。
ガティアスによって奪われた命の数は計り知れない。
ガティアスによって壊されてきた物は数え切れない。
ガティアスによって滅ぼされてきた全ては・・・もう元には戻らないのだ』
・・・
「・・・なんか、どんどん大事になっていくな」
しかもさらっと神様にも取り憑くって書いてあるぞ。
「そうね。これまで何度か戦った事はあったけど随分スケールが大きくなったわね」
「でもなんだか私たちが知ってることと微妙に食い違っていません?」
・・・確かにおかしいな。【ガティアス】に取り憑かれていたカイザーや【剣鎧の精霊】は倒したら元に戻って【ガティアス】から解放されたはずだが・・・違うのか?
『無論、ガティアスに対して神々も黙って見ていたわけではない。
長い年月をかけてガティアスと対峙しつつ、その対策を講じてきた。
その策の一つとして神々は世界を無数に分割した。
完全に他の世界から遮断された生物の存在しない世界。
一種類の生命しか存在しない世界。
意思は持たないが無数の種類の生命が存在する世界。
生命を持たず意思のみが存在する世界。
これはガティアスによる被害を分散させると同時に、ガティアスが何を目的とし、何を標的としているのかを知るための試みでもあった。
結果としてガティアスは全ての世界に現れたが、その出現には偏りがあった。
意思を持った生命が多いほど、より多くのガティアスが現れることが分かった。
特により高度に進化した生命ほどより多くのガティアスから狙われた。
このことから、ガティアスは意思を持ち高度に進化した生命を狙っているという予測が立てられた。
そこで神々は更なる対策を講じた。
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神々はさらに世界を分割した。
そしてそれぞれの世界に様々な制限や制約をかけた。
生命の有り方を限定し、進化の方向性にも制限をかけた。
その結果、様々な形で無数に存在する世界ができあがっていった。
そして神々自身も自らを封印し、その行動に制限をかけた。
広く薄く平行して存在する無数の世界・・・それが功を奏したのかガティアスの出現は分散され、破滅的な被害が出ることは無くなっていった』
・・・とんでもない話だな。しかもここで平行世界の話が出てくるのか・・・もしかしてこのゲームの・・・7つの世界の話に繋がっていくのか?
『神々はそれぞれの世界の生命の有り方と進化に制限と制約を設けた。
それはガティアスに対する措置であり、ガティアスを遠ざける為の策でもあった。
しかしそれでも生命は次々に誕生し、進化をやめる事はなかった。
同時に神々は期待した。
進化は生命に許された特権である。
もしかしたら、いずれかの生命がガティアスに対抗しうる生命へと進化するのではないか、と。
長き長き時間を経て、その期待通りの生命が誕生した。
人、という名の生命が。
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ある世界では猿が進化した人間という種族。
ある世界では様々な獣が進化した獣人という種族。
ある世界では魔の力を扱う魔族という種族。
ある世界では人間が生み出した機人という種族。
ある世界では自然の力を受け継いだエルフという種族。
世界は違えども知と力を進化させ、他者とも意思を交わす事ができる人という種が増えていった。
人という種もまたガティアスに狙われる生命であったが、人はガティアスを撃退する事ができた。
そして人は器を壊さずガティアスを滅ぼす事もできた。
神々ですら出来なかった事をなぜ人ができるのか。
理由は分からない。
もしかしたら人はガティアスに対抗する為に世界が生み出した突然変異なのかもしれない』
「・・・おいおい、今度は人類誕生にまで話が行っちゃったぞ」
「人類っていうか・・・人、でしょ? 魔族とかエルフとかも含めた人全般」
「ゲーム風に言えばプレイヤーが選択できる種族の事を人、と言っているんでしょうね」
『人は知と力を持っていた。
しかし、それゆえか人自らが自然を破壊し、同じ人同士傷つけあうこともあった。
神々は悩んだ。
ガティアスの脅威はいまだ無くならない。
しかし、人という種の進化はいまだ不完全。
全てのガティアスを滅ぼすには至らないだろう。
人という種に対し、神々が干渉するのか、それとも更なる進化を遂げるまで静観を続けるのか。
神々が考え抜いた末に選んだ選択。
それは数多ある世界の中から特に力がある6つの世界を選抜し、それぞれの世界を繋げるというものだった。
6つの世界に交流を持たせ、人々を行き来させることで更なる進化を促そうとしたのだ。
さらに神々が人々を助ける為の特別な世界を用意し、自らがそこに座する事を選んだ。
こうして7つの世界で人々を進化させるための長い計画が始まった』
「・・・」
「・・・」
「・・・」
・・・これ、明言はされていないけど明らかにこのゲームの7つの世界の事だよな。
「・・・割と気軽なVRゲームだと思ってたけど、裏には随分壮大な設定があったんだな」
「・・・そうね。っていうかこの設定、表に出さなくて良いのかしら?」
「・・・このゲームは戦いが全てではないですからね。おそらく戦い好きな人向けの設定ではないのでしょうか?」
・・・なんか身も蓋もないメタな話してるな、俺たち。だがそうでもしないと、ちょーっとスケールの大きさに飲み込まれそうだ。
「・・・次が最後のページだな」
『この計画はいわば諸刃の剣である。
人という種が増え、より強い進化を辿れば辿るほどガティアスに狙われる可能性が高くなる。
現状でこそガティアスは各世界に分散していて、いわゆる下級種しか姿を現していないが、計画が進むに連れて中級種、上級種と姿を現してくるだろう。
特に上級種となれば、我々神々でさえ容易に手が出せない。
上級種が出現する前に人の進化を促さなければならない。
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計画の場となった6つの世界に暮らす生命たちには申し訳ないことをしていると思う。
しかし、これは全ての世界を救う為の戦いでもあるのだ。
神々のエゴを押し付けるようですまないが協力してもらいたい。
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全ての生命と世界に未来あれ。
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知識神オモイカネ』
「・・・最後の最後でブッこんできやがった!?」
クリスマスの日にクリスマスとはまったく関係ないトンデモ話をぶっこむという暴挙(笑)
ちなみに年末年始も普通に続きを投稿する予定です。
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