盲点?
【精霊図書館】の案内板の端っこに分かりにくく書かれた文字。
456n¥
「落書きが文字化けにしか見えないな」
・・・ハッ! もしやこれは白いあの野郎の仕業とか・・・
「まさか、そんなわけ無いでしょう?」
「少なくとも落書きではないですよ」
自信満々に答える二人だが・・・
「なんでそんな事言い切れるんだ?」
「そもそも落書きに必要な物といえばなんだと思います?」
・・・質問に質問を返すとは失礼な奴だ。
まあ、それはそれとして、落書きに必要な物って・・・エンピツにボールペン、クレヨンに・・・ひどい所だとスプレーやペンキで落書きされてる場所もあるな。リアルでの話だけど・・・ああ、そうか。
「そういえばゲームの中でボールペンとか使った事が無いな」
それ以前に見た事もないような気がする。メモを取るって事がまずないし、【メニュー】を開けば会話ログも出てくるし。何か調べる時にも【メニュー】にくっ付いているキーボード入力だしな。
「ええ、クレヨンやペンキはあるみたいですが、専用の紙以外には書き込んだり、塗ったりすることはできません。ゲームの中で言うのもおかしいですが、公共の場所に落書きなんて出来ませんし、しようとしたら違反行為・・・通報される可能性があります」
・・・通報されるのはリアルでも同じだが・・・そうか、そうなると確かに落書きの線は無いのか。
「となると・・・バグか? 本来は別の何かが書かれていたとか?」
「そう思って問い合わせてみたのですが、これが仕様だそうです」
・・・仕様? つまりこれが正しい表記だと?
「・・・ってことは、これはこれで意味のあるものってことか」
「そうなりますね・・・意味はまったくわかりませんが」
456に小文字のn、あとは¥・・・お金のマークだな。・・・意味不明だな。456のお金を払えってことか?
「それだったら\456になるでしょう? きっと暗号よ! なにか隠された意味があるはずだわ!」
人の考えをさらっと否定して(口に出していないはずだが?)、興奮しているアテナ。・・・暗号ねぇ・・・いかにもゲームの中らしいが・・・暗号、暗号・・・ああ。
「・・・そうか、わかった」
「え!?」
「本当ですか!?」
詰め寄ってくるアテナとアルマ。ちょっと怖いぞ。
「ああ・・・カナ入力だ」
「え?・・・カナ・・・入力?」
「・・・ああ! なるほど! そういうことですか!!」
アルマは分かったようだが、アテナは分からんようだ。・・・仕方ない。説明してしんぜよう。
「良いか? まず【メニュー】を開くとキーボードが出てくるだろう? いわゆる日本語キーボードって奴だ。英数字と一緒に日本語のあ~んの文字が書かれているだろう?」
「あ、わかった! この文字列をキーボードの中に該当する文字に置き換えろって事ね!」
「そういうこと」
ミステリー小説の中に出てくる暗号にたまたま似た様な物があったのを思い出した。他にも色々考えられるかもしれんが¥が出てくるのはそうは無いと思う。
「・・・しかし、アルクさん。キーボードで確認してみると4がう、5がえ、6がお、nがみになりますが¥はアンダーバー・・・入力すると横棒になりますよ?」
「うえおみー? それともうえおみあんだーばー? 何のことなの? 解き方が間違った? それともここから更に別の解き方が?」
「・・・いや、アルマが惜しかった。¥になる入力はもう一つある。それは\・・・ろの文字のことだ」
「あ、本当ですね! ということは・・・うえおみろ・・・上を見ろ、ですか!」
そういうこと。まあ、暗号としては簡単な部類だろう。
「でも上って・・・あ! 何か書いてある!」
文字通り上・・・つまり天井を見てみるとそこにも文字が書かれていた。内容は・・・
js@6n¥
「・・・なんだかメルアドみたいにみえるわね」
「さすがに違うだろ。後半の6n¥はさっきと一緒だから○○を見ろだろう。つまり解き方はさっきと一緒だ」
「では・・・まと゛おみろ・・・窓を見ろ・・・ですね」
・・・なんだろう、トイレなんかでよく見る、右を見ろ、上を見ろって続く落書きを思い出した。最後にはバカ、とか引っかかったぁ~とか書いてあったりするが・・・そんなオチじゃないだろうな。
「窓って・・・いくつかあるみたいだけどどの窓の事かしら?」
確かに【精霊図書館】を歩き回っている間にいくつか窓は見かけた。まあ、そもそも窓が一つしかなかったら逆に怪しすぎるんだが・・・
「この場合は多分、暗号の位置・・・案内板の暗号の目の前で、かつ天井の暗号の真下の位置。そこから見える窓は・・・あれだけだ」
俺が指差したのは図書館の奥のほうにある一つの窓だった。この位置から見える窓はあれだけだ。
「なるほど」
「行って見ましょう!」
さっそく窓の方に行ってみる。この窓は上下にスライドさせるタイプのようだ。窓の外には森が見える。【世界樹】の周辺にあった森だな。森に入り込んだら・・・【ガーディアン】に排除されるらしい。要するに入っちゃ駄目って事だな。・・・命知らず以外は。
「・・・うーん。別に変わった所は無いようだけど・・・窓の外は普通の森だし・・・」
「いえ、アテナ。暗号は窓の外を、ではなく窓を見ろ、でした。おそらく窓自体になにかあるんだと思います」
お、良い線行ってるな、アルマ。窓を見ろと言われると窓の外の風景を見てしまいがちだが、それは引っ掛け。窓を見ろと言ってるんだから、文字通り窓自体を見なきゃいけないんだろう。
「窓・・・窓・・・あ、何か線みたいなのが入ってる・・・でも」
「・・・文字には見えませんね」
「・・・どれ、俺にも見せてくれ」
場所を代わってもらい、該当の箇所を見せてもらった。確かに窓枠の少し高い所に線や曲線が書かれている。だがこれだけでは意味不明だ。これは多分・・・
「こうするんじゃないか?」
俺は窓を上にスライドさせる。良く見ると窓の方にもなにやら線が書かれている。それを窓枠側に合うように移動させると。
「あ! 文字になった!」
「なるほど。窓を開けた状態で読む為の暗号ですか」
そういうことらしい。・・・問題は中途半端な位置に書かれているせいで窓を固定できないって事だな。つまり位置的に、常に手で持ち上げておかないといけない。・・・正直面倒。
「えっと書かれてる文字は・・・」
cs6n¥
「どうやら同じ暗号のようですね。解くと・・・そとおみろ・・・外を見ろ、ですね」
「・・・え? でも外には森が広がっているだけで何も無いじゃない?」
そう、窓から見える景色はただただ森が広がっているだけという非情に殺風景な景色だった。・・・正直、こんな所に窓をつけて意味があるのかと問いたい。・・・が、今は違う。
「いや、窓を開けた状態で暗号が完成する所を見ると、窓を開けて外を見ないといけないんじゃないか?」
そう言って俺は窓から頭を出す。・・・手を離したらギロチンよろしく窓が俺の首に落ちてくるまずい格好である。
それはともかく、改めて窓の外を見ると、窓・・・つまり図書館の裏手だな。よくよくみると森まで1メートル無いくらいの幅がある。そして・・・
「・・・ああ、そういうことか」
窓から頭を出してキョロキョロ周りを見渡すと・・・それはあった。
「どうしたの?」
「なにかありました?」
二人も興味津々なので場所を代わって見てみるよう促す。・・・窓から頭を出す二人。・・・このまま窓から手を離したら・・・死ぬな。俺が。
「あ!」
「あんな所に!」
どうやら二人も見つけたらしい。
【世界樹】周辺の森に隣接している【精霊図書館】。
その裏側は森によって見えず、また入ってはいけない森だったために直接行って確認しようとも思わなかったが・・・良く見ると人一人程度通れるくらいの隙間があり、そこにあったのは・・・2階への階段だった。
・・・これもある意味盲点という事なんだろうか?
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