クランメカロイドの謎
続いてやって来たのは【機甲界】のコーナーだ。
もう何となく分かっているとは思うが【クランメカロイド】について調べる為だ。
・・・正直、【天龍馬】の話だけで腹一杯な気がしないでもないのだが、一度やると決めた以上、ちゃんとやり通さないとな。
目的の本は程なく見つかった・・・と思う。
タイトルは『クランメカロイド開発記録 上巻』。
・・・多分、これであってんだよな? とりあえず中を読んでいく。
『私の名はアルキメデス。
本日より同士たちと共にとある兵器の開発に着手する。
それに伴い本日よりこの記録を付けることにする』
「・・・」
俺は一旦、本を閉じた。
・・・確かアルキメデスって古代ギリシャで活躍した有名な発明家じゃなかったっけ? 多方面で活躍し、様々な功績を残した高名な人物だ。気になる人は調べてみてくれ。有名な話が結構出てくるから。
それはともかく、まさかここでそんな大物の話が出てくるとは。・・・とりあえず先を読み進めようか。
『なお、この記録はあくまで私的に付けているものであり公的な資料ではない。
故に機密となるような情報を載せることは出来ないので予め了承して欲しい。
まずは経緯について説明しよう。
事の始まりは、北極の氷の分厚い氷の下からとある物が発見されたことだった。
それは明らかに自然にできた物ではない人工物だった。
しかし、それは過去の人間たちが作り上げた遺跡などでは断じてない。
なぜならそれは過去、いや人類の歴史上、決して存在しえない、いわゆるオーパーツだったからだ。
そのオーパーツを解析する為に私を含めた世界中の優秀な研究者や科学者が集められた。
かの高名なエジソン博士やダヴィンチ博士、ライト兄弟らの協力を得られたのは極めて僥倖であった』
・・・なんか色々混じってんな。北極という事はこれは地球の話なのか? だがアルキメデス、エジソン、ダヴィンチ、ライト兄弟・・・俺でも知ってる有名人だが時代がバラバラだ。これらの人物が同じ時代にいるはずが無い。・・・まあ【武術界】にもヤマトタケルやイシカワゴエモン、ハットリハンゾウがいたから、いわゆるこのゲーム内の設定、ということなんだろうが・・・
『各分野の研究者たちが協力し、オーパーツの解析を行った。
何度も確認を行い、議論を重ねる日々が続いた。
いや、我々も本当は一目見た時点で気づいていたのかも知れない。
オーパーツの正体に、そしてその中に存在した物について、だ。
しかし、私も含め、多くの者がそれを信じることができなかった。
なぜなら現代の我々の文明でようやくロケットを開発して地球を飛び出し、月へと辿り着く事が出来たという状態なのだ。
しかし、いやだからこそ、オーパーツの存在を信じることができず解析を行っているのだ。
だが、解析を進めれば進めるほど、その信じがたい事実を信じざるを得なくなっていった。
そして我々はとうとう結論を出さざるを得なくなった。
このオーパーツは我々より遥かに進んだ技術で作られた宇宙船。
そして宇宙船の中にあったのは現代の技術では到底作る事が出来ない人型ロボットだった』
・・・若干、どこかで聞いた事があるような気がする話だが、なんとなく話が見えてきたな。
『当然、我々はこの宇宙船がいつ、どこで、何者の手によって作られたのか調べようとした。
我々の計測によると、恐ろしい事にこの宇宙船は製作されてから数百万年もの月日が経っていると判明した。
しかし、それでもなお原型を留めている事実、一体いかなる物がこれを作り出したのか・・・
試行錯誤を繰り返しながら我々はこの宇宙船、そして内部にあったロボットの解析を続けた。
まず、宇宙船は我々人間と同サイズの知性体が乗るための物だと推測された。
宇宙船内の通路や部屋の大きさ、そしてロボットにあった操縦席らしき物がそれを裏付けていた。
宇宙船の規模から考えて搭乗できる人数は数人から10数人。
ロボットが一体しかなかった事から考えればもしかしたら一人用なのかもしれない。
宇宙船やロボットを構成する金属については我々の技術においても解析できなかった。
少なくとも我々の暮らす星には存在しない物質であると推測された。
その後、10年という月日が流れ、我々は遂に宇宙船に残されたブラックボックス・・・データベースの復元、アクセスに成功したのだった』
・・・未知のテクノロジーとの出会いと研究か・・・ロマンがあるな。
『そのデータベースは言わば知識の宝庫だった。
現代の技術の数百年先を行くと思われるテクノロジー・・・
我々の世界は飛躍的な技術革新を迎えた。
エジソン博士は現存するどんな物よりも小型で強力な動力源の開発に成功、ダヴィンチ博士はその動力源を元に様々な機械を開発していった。
ライト兄弟は宇宙船の模倣に成功、地上と宇宙の行き来を容易とする飛行艇が次々と開発された。
そして私は・・・宇宙船内に残されたロボットの復元を試みた。
ロボットは明らかに戦闘を目的として作られていた。
それが一体何故なのか私は知りたかった。
私はデータベース内に残された情報を元にロボットの復元に明け暮れた』
どうやら【機甲界】の進んだ科学力の原因はここにあるようだ・・・それにしても戦闘用ロボットか・・・ちょっと雲行きが怪しくなってきたな。
『ロボットは左足を完全に失い、右足は膝上までしかなかった。
同様に左腕も無く、右腕は残っていたがボロボロだった。
胴体は比較的無事ではあったが頭部は半分なくなっていた。
そんな状態でもこのロボットを構成する技術の一つ一つが素晴らしいものだという事が理解できた。
もし、このロボットが完全な状態だったのなら・・・そのスペックは計り知れないものとなっていたであろう。
それだけに私は不安であった。
このロボットは明らかに戦闘による損失で機体の大半を失っている。
一体、どんな存在と戦えばこのような有様となるのか・・・この宇宙船にも、そしてこのロボットにも、現行の私達の技術では傷一つ付けられないというのに・・・
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さらに10年の月日が流れた。
ロボットの修復はまだ完全では無いものの、その過程で得られた成果は多く、私達の・・・いや人類の生活は大きく様変わりした。
世の中には人型のお手伝いロボットが当たり前のように存在し、一般人でも宇宙へ、月へ、火星へ行くことが容易となった。
しかし、これらの技術がもたらしたのはプラスの面ばかりではない。中にはテロ行為に使用する者、軍事兵器へと転用する者もいた。
中でも問題となっているのは、原因不明の暴走事故が多発している事だ。
直前まで何の問題も無かった機械たちがまるで何かに取り憑かれたように暴れ始めるのだ』
・・・あちゃー、やっぱりここでもか・・・
『その原因の答えも宇宙船のデータベースの中にあった。
ロボットの修復が進み、ロボットのAIもわずかながら修復が出来ていた。
そのAIからのアクセス権限を使用してデータベースの更に深層にあった情報を開示する事に成功したのだ。
そこで分かったのはガティアスと呼ばれる謎の存在が原因である事。
ガティアスは生物、無機物問わずありとあらゆる物に取り憑き、暴れまわるという。
そしてこの宇宙船はガティアスという存在から逃げ出す為に別の世界からやって来たらしい。
もしかしたら、この宇宙船に乗ってやってきた人物こそ我々の遠い祖先だったのかもしれない。
しかし、この世界にもガティアスは現れてしまった。
我々に必要なのはガティアスに対抗する為の手段だ。
幸いな事にデータベースの中にはガティアスに対抗する為の機動兵器の設計図が数多く存在した。
我々は来るべき脅威に対抗すべく様々な兵器の開発を決定した。
その要となるのが人型ロボットをコピーし、ありとあらゆる技術を結集して作り上げた対ガティアス用人型機動兵器クランメカロイドだ』
・・・なんというか・・・人に歴史有りというか・・・ロボットにも歴史有りって事か。
クランメカロイドが対ガティアス用の兵器っていうのはそういう意味があったのか。
・・・しかし、これは【機甲界】のどれくらい前の話なんだろうか? そもそも俺が行った事があるのは・・・本の内容からして火星・・・だけだ。地球・・・この人たちが暮らしていた星は現在どうなっているのか・・・
気にはなるがこの本はここで終わってしまっている。上巻がある以上、下巻も必ずあるはずなんだが・・・いくら探してもどこにもねぇ。
なんで無いんだよ! 下巻!!
中途半端な所で終わらせやがって! すげぇ気になるじゃん!!
ちくしょーめ・・・こうなったらしらみつぶしに探してやろうか・・・
「ちょ、どうしたのよ? アルク? 凄い顔をしてるわよ?」
「何かあったのですか?」
おお、ここで天の助けが!
「良い所に来た! 二人とも!! この本の下巻を探してくれ!!」
「な、なに! 急に!!」
「なんだか怖いですよ!?」
二人が何か言っているが耳に入らない。俺は中途半端なところで終わらせられると続きが気になってしょうがないタイプなのだ!!
・・・と、ここで、
「図書館ではお静かに願います」
「「「ごめんなさい」」」
・・・怒られちった。テヘペロ。
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