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準備は万全に

「【神仏界】か・・・十分に気をつけなよ?」


これはラングの言。


「準備は怠らず、万全の状態で望んでください」


これはロゼさんの注意。


「ふむ、まあ、お主らなら大丈夫じゃろう・・・多分」


これはガットの・・・励まし?


「あー、まあ、そのー・・・大丈夫さね、きっと」


これはヴィオレ。何故かいつもの覇気が無い。


「普段なにも言ってこない奴らが急に注意を促してくるとすっごく不安にならね?」


「「「「「「・・・」」」」」」


全員が沈黙してしまった。俺たちの中に【神仏界】に行った奴はいないらしいが、いずれは行かなければいけないというのは全員の共通認識だ。


ただ、Lv.40以上にならないと行くことが出来ない特別な世界。今までの世界のようにはいかないという認識も全員共通だ。


「・・・何故か知らんが、おもっっくそプレッシャーをかけられたからな。【神仏界】には全員で向かおうと思うんだ」


「「「「「「異議なし!」」」」」」


俺たちの心が一つになった瞬間だった。


「それに伴ってまずはアスターとアシュラの装備製作、後はアウルたちのレベリングをある程度終わらせてから向かおうと思う。・・・順調にいけば4日後くらいかな」


「分かったわ」


「妥当だと思います」


反対意見は出なかったので、そういうことで決定。


「じゃあ、まずは畑・・・というか農場・・・なんか名前が欲しいな・・・アスターファームに行くか」


「・・・なんか恥ずかしいのでクランファームとかにしません?」


・・・アスターよ。お前の畑だろ? ・・・まあ、良いけど。


「分かった分かった、まずはクランファームの拡張と種植えをしてから行動開始と行こう」


というわけでまずは【精霊界】へ移動する。


===移動===>【精霊界】エリア0【農業ギルド】


「・・・なかなか良い値段だな」


「そうですね」


俺とアスターは【農業ギルド】に来ていた。目的はもちろん拡張のために畑を買うためである。・・・なんか不動産屋に来たみたいだ。他の連中には肥料やら人数分の農具やらを買いに行って貰った。


「畑は一度購入すれば後はプレイヤー次第で継続的に利益を出せますからね。言うなれば先行投資と言ったところでしょうか」


なるほど。【精霊界】の作物は高値で売れるからな。初期費用がバカ高くても直ぐに取り戻せるだろう。


だからこそ畑の費用、いや土地代? ・・・まあ、初期費用が高いのだろう。ちなみに200m×200mに拡張するのに200万Gである。【アイゼンガルド】なら、それなりに上級な装備が買える値段だ。


畑を持っているプレイヤーはあまりいないらしいがこの値段だからな。尤も、今回の緊急クエストの報酬で畑を購入するプレイヤーも増えているらしいが。ただし、仮に買えたとしても小規模・・・他のプレイヤーに売り出すほどの量作物も作れないだろう。だからこそ【精霊界】産の作物が高値で売れるのだが。


「まあ、ここはケチらず豪快に買っちまうけどな。資金はまだまだ余裕があるし」


「こんな大金をポンっと出せるのもクランの利点ですね。ソロのプレイヤーではこうはいきませんよ」


クランで活動すれば素材も資金もソロの何倍も集まってくるからな。代わりに成果物をクラン内で共有しないといけないから、必ずしも利点というわけではない。


例えば大人数のクランの場合、どれだけ大規模な畑を用意しても、育てられる作物には限りがある。種もそうだし、人手も必要だからだ。そのため一人当たりに割り当てられる作物が少なくなる。それなら一人で小規模の畑を用意し、作物を独り占めした方が、当人には利益になる。これに関してはどちらが良いのかは判断できん。


俺たちの場合は・・・少数精鋭のクランだから一人当りに割り当てる作物は問題ないと思う。後は農業がどれだけ大変なのか、だな。


「ありがとうございましたー」


俺たちは受付嬢さんの声を受けつつ【農業ギルド】を後にした。


===移動===>エリア0 農業区画1【アークガルド】クランファーム


「ふむ、結構な広さだな」


「そうですね。学校のグラウンドくらいの広さですか・・・」


さっそくクランファームまで来てみると確かに畑が広がっていた。といっても元々あった畑以外は平たんなただの地面だが・・・


「アルクー、買ってきたわよー!」


アテナたちも戻ってきた。とりあえず農業の準備は完了だな。


「それじゃあ、さっそく耕しますね」


アスターが張り切ってクワを取り出しているが・・・ちょっと待て。


「待てアスター。耕すのは全員で、だ。農具も用意したしな。これからも手伝いをすることになるだろうし、どれぐらい時間と手間がかかるかも知っておきたいしな」


アテナ、アルマ、アーニャ、アヴァン、アシュラもそれぞれクワを持っている。皆やる気満々だ。・・・アーテル、なんでお前までやる気なんだ? お前、クワ持てないだろう? 他の【眷属】の皆も・・・君らは屋敷で遊んでいなさい。


「・・・わかりました」


納得してくれたのかアスターも頷く。


というわけでさっそく農業開始!


・・・15分後。


「・・・これは中々重労働ね」


「・・・ええ、クワもそうですが土も案外重くて耕すのも一苦労です」


「お前らはどちらかというと魔法職だから体力と筋力が足りていないんじゃないか?」


アテナとアルマは早くもバテ気味だ。慣れない作業だからか、クラスやステータスの関係なのかは謎だ。


「ふみゅー、これは中々きついのです。・・・テールちゃん、ありがとうなのです」


「キュウー」


俺たちの中で一番体力の低いアーニャは早くもギブアップ気味だ。それでも少しずつ進めてはいるのだがペースは遅い。ということで【地竜】のテールがお手伝いしている。・・・テールが一踏みすると勝手に耕されていくのはさすが【地竜】と言うべきなのか?


「むぅ・・・重労働なのだ」


「オ任セクダサイ」


同じく頭脳派のアヴァンもバテ気味だ。ラグマリアがクワを持てるタイプの【眷属】で助かったな。・・・ちょーと深く耕し過ぎだと思うけどな。大量の土が宙に舞っている。


「アーッハッハッハ!!」


「負けないっすよー!!」


アスターとアシュラだけ元気だ。というか活き活きしている。・・・これが若さか・・・もとい慣れなのか?


「そういうアルクもあんまり疲れているようには見えないけど? 慣れているようにも見えるけど・・・もしかして農業経験あるの?」


アテナが不思議そうに俺を見る。なぜ自分たちの様に慣れない作業でバテないのかと。


「あるわけないだろ? 現代っ子で都会っ子の俺が。・・・多分、普段から剣を振ってるからじゃないか? 某えらい軍師さんが兵農一体って言ってたしな」


「なんなのよそれ」


「剣を振る動きとクワを振る動きが似ていることから、農業はそのまま兵の訓練にもなる、という意味ですね」


・・・よく知ってるな、アルマ。さてはお前も封神○義、読んだな?


「・・・まあ、そんな俺でも疲れてきたけどな。・・・やっぱり農業は重労働だ」


結局、30分かけてすべての畑を耕し終えた。


・・・俺たちが農家の方々への感謝を深めたのは言うまでもない。

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[一言] ふじ○ゅー版の封神○義は神作、異論は認めない 神仏界に出てこねーだろうな…
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