チュートリアル
『それでは精神をアバターに移します。・・・完了。違和感がないか確認してください。』
そう言われて一瞬目の前が暗くなった後、普通に見えるようになった。手を動かしてみる。普通に動く。頭を触ってみる。あ、ポニーテールになってる。すごいな。髪の感覚までリアルに感じる。さすがフルダイブ。
ふと気が付くと目の前に姿見がある。全身をチェック。うん、違和感がない。無さ過ぎて逆に違和感を感じるような気がするけど。まあいい。・・・ちょっと顔が美形になった気がする(笑)
「うん、問題ないな。」
『かしこまりました。それでは引き続き身体能力測定に移ります。指示に従って行動してください。』
そして始まったのが体育の時間でお馴染みの50M走やら走り幅跳びやら反復横とびやら。本当にただの身体測定(笑)。ただし、現実のそれとは結果が全然違う。明らかに現実より力強く、素早く動く事ができている。それもほとんど違和感がない。すごいなフルダイブ(2回目)。
そしてこけたらちょっとだけ痛かった。転んだ感覚はあるのに痛みがほとんど無いって言うのは不思議な感覚だった。ちなみにHPは1/3も減ってしまった。DEFの値が低すぎる代償だな。極端ステータスにちょこっと後悔。
『今ならステータスを振り分け直せますが?』
あ、できるんだ、それ。さすがチュートリアル。でも・・・
「いいよ、とりあえずこのままで。」
『・・・かしこまりました。それでは続いて戦闘訓練に移りますが、スキップする事もできます。戦闘訓練に移行しますか?』
「え?スキップ?さっきはできなかったのに?」
『先ほどの身体能力測定はゲーム内でも問題なく活動できるかどうかのテストのために実施しました。が戦闘訓練に関しては戦闘が目的ではないプレイヤーもいらっしゃるのでスキップが行えます。なお、チュートリアルに関しては最初の街で再度行う事ができます。』
あ、そうなんだ。親切仕様、いやこれが普通なのか?
「まあ、戦闘訓練は受けたほうがいいよな。YESで。」
そして戦闘訓練が始まった。相手は・・・案山子?みたいな人型の人形だった。顔がへのへのもへじだ。人間みたいになんかフットワークを踏んでる。・・・どうもこのゲームの開発者は遊び心満載のようだ。
ミッション1:攻撃してみよう・・・思いっきり殴って終了。
ミッション2:攻撃を避けてみよう・・・殴りかかってくる案山子を避ける避ける。3分ほどで終了。
ミッション3:攻撃を受けてみよう・・・攻撃を受ける。めっちゃ痛い。一発でしゅーりょー。
まあ、ココまではいいな。次が問題だな。
ミッション4:スキルを使ってみよう・・・取ってねぇよ!スキル!
『今回は特別に取得していないスキルを使用できるようにしています。【鋼拳】と唱えてください。』
「【鋼拳】」
お、手が硬くなった。色も鉄っぽくなってちょっと気色悪い。
『それがスキルです。今は声に出しましたが、心の中で呟く程度でも発動します。』
へぇそんな簡単なのか。試しにそのまま案山子を殴ってみる。うん、確かに強くなってるな。
ミッション5:武器を使ってみよう
目の前に木刀が落ちてくる。拾う。
『武器に関しては手に持った時点で自動的に装備されます。ただし、自分の物限定で他人の武器を手に持っても装備はされません。防具やアクセサリーに関しても同様です。』
なるほどなるほど。まあ、そんなことしたら普通に泥棒だけどな。それは置いといて。
木刀で案山子を切りつける。うん、さっき殴ったときもそうだけどはっきり感触があるな。重さも感じるし、さすがフルダイブ(3回目)。
『ステータスに見合わない武器については装備できません。つまり手に持つことができません。その場合は【収納箱】に収納されます。取り出しは【メニュー】から行えます。』
でたー。【収納箱】、このゲームではプレイヤーの標準装備だったはずだ。たしか箱って言う名に反して亜空間にしまう的な設定だったはずだ。まあ、なんにせよ便利だ。現実でも欲しい。
ミッション6:アイテムを使ってみよう
今度は緑色の液体が入った・・・150mlのペットボトル?が現れる。
『それは【ポーション】です。使い方は飲み干すか傷口にかければ回復します。』
こ、これが【ポーション】。確かにポーションって書いたラベルが張ってあるけど。昔からあるアイテムなのにペットボトルに入っているとはこれいかに。とりあえず蓋を開けてにおいを嗅いでみる。アレ?この匂い・・・、そのまま飲んでみる。
「・・・りんご味だ。」
というかりんごジュースだろこれ。匂いも味も。確かに回復している気はするが。ま、まあいいか、飲めさえすれば。そして味覚も嗅覚もちゃんとあるんだな。さすがフルダイブ(しつこい)。
『アイテム類は【収納箱】内にある場合、スキルと同様に言葉にするか心で呟けば自動で出てきます。それ以外の場合は今のように直接手に取る必要があります。』
つまり、【収納箱】にアイテムを溜め込んでおけってことだな。戦闘中にいちいちメニューを開かなくていいのはありがたい。
ミッション7:実戦してみよう
『それでは実際にモンスターを倒してみましょう。』
そういって現れたのはファンタジーでお馴染み、ゴブリンだった。手に棍棒を持っている。
「クギャー!」
奇声を上げながら向かってくるゴブリン。大して早くは無い。振り下ろしてきた棍棒をサッと避けた後、カウンター気味に木刀で突く。
「クギャー!」
ゴブリンは光となって消えていった。え、これで終わり?
『・・・STRの値が高いため、一撃で撃破になったようです。もう一度行いますか?』
「・・・いや、いいです。」
ま、まあ狙い通り、だよね?
『戦闘訓練については以上です。より詳しい情報を知りたい場合は各ギルドにお尋ねください。』
フム、まあ基本は判ったかな。基本って言うより最低限か?
『それではチュートリアルを終了します。』
目の前に扉が出現した。
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