閑話 裏の裏で
===視点切替===>>Seven World Online 運営室
「【精霊界】で緊急クエスト発生か・・・それは良いんだが・・・ま~たこのプレイヤーか」
「【アークガルド】のプレイヤーアルク、だっけ? たしかに前回のべヒーモスの時もこのプレイヤーがきっかけだったけど・・・偶然じゃない?」
「そうだな。行動ログや会話ログから見ても不審な点は見られない。情報に関してもたまたま傍に居たプレイヤーとやり取りして手に入れているし、自分で調べて自力でたどり着いたのは間違いない」
「だが、今回の緊急クエストのトリガーって特定のレアな【精霊】の【眷属】化だったんだろう? レアな【モンスター】も【眷属】にしているし当たりを引き過ぎじゃないか?」
「そうと言われればそうかもしれんが・・・不正を働いていると? 我々だけじゃなくAIまで騙せるような?」
「・・・ありえんな。第一、このゲームの根幹部分・・・ブラックボックスは我々ですら触る事が許されていない。仮にハッキングがあったとして、そこまでの腕があるのなら逆にスカウトしたいくらいだ」
「・・・まあ、そうだな。仮に社内に協力者がいたとしても不可能か。ブラックボックスは社長か室長しか閲覧権限がないし、仮にブラックボックスを解析しようとしたとしても10年は余裕でかかるだろうな」
「ええ、表層的な部分・・・ゲームの設定関係だけなら私たちや開発陣でも手を加えられるけど、それでも膨大な量があるもの。私達だってAIのサポートがなかったらお手上げよ」
「ブラックボックス・・・人間の精神に関わる部分か・・・前から思っていたけどよくこんなシステムを作れたもんだな」
「社長たちがまだ現役だった頃に開発された物だから・・もう十何年も前に作られた物なのよね・・・それでも現行の技術より進んでいるんだから当時の開発者たちには頭が下がるわ。・・・本当に天才集団だったのね」
「俺としては十数年も安全性の確認の為にテストを繰り返していたって言う方が驚きだね。驚きっていうより頭が下がるっていうかよくやるよっていうか」
「だからこその安全性と信頼性なんだろう。現に俺たちがゲーム開発に関わったここ5年くらいでも問題一つ起こっていない」
「私達が作り上げたゲームのバグはあったけどね。ブラックボックスの心配より私たちの腕の方が問題なのよね、悔しい事に」
「技術者としてはブラックボックスの方が興味あるというか心配なんだけどな。ゲームの方は何かあっても直せるけど、ブラックボックスの方はそうも行かないからな。やっぱり何かあったらって考えちまうよ」
「言いたいことは分かるが、そこは社長や室長に任せる他ないだろう。開発者の中で今でも現役の二人に任せておけば問題は無いはずだ。むしろ問題なのは十年後に室長たちの後継者に俺達がなれるかどうかだな」
「おっとそうだった。信頼と実績を積み重ねないと上に行くのなんて夢のまた夢だからな。ちゃっちゃとお仕事に取り掛かりますか・・・何の話だったっけ?」
「プレイヤーアルクがレアなイベントを引きあて過ぎッて話」
「ああ、そうだった。・・・室長も問題なしって判断しているんだろう? 俺もログは確認したが真っ当にプレイしているし、レベリングも地道にやってるしな。偶然続きで何かしらの対処を取ったらむしろ、このプレイヤーがかわいそうだ」
「偶然・・・確かに偶然なのよねぇ」
「リアル主人公体質って奴なんじゃないか? 色んな厄介ごとや仲間を引き込んでしまう系の」
「おまえ、ゲームのやりすぎ(笑)。まあ、確かにこのプレイヤーを見てるとそんな感じがしてくるけどな」
「もしくはAIの誰かが彼を気に入ってわざとイベントを引き起こしているとか?」
「それこそ無いだろう。イベントを引き起こせるとなると管理AIクラスになる。NPCAIや眷属AIならまだ人の思考に寄った考え方をすることもあるだろうが、管理AIが一人のプレイヤーに肩入れするような事などあるはずがない。というかあってはならないだろう」
「それにAIはあくまでAIさ。どれだけ人の思考に寄せてもあくまで擬似的なもの。SFじゃあるまいし、自分の意思を持ったり感情が湧くような事はないさ」
「・・・そうね。一応、室長には報告しておいてこの件はおしまいにしましょう」
「そうそう、それより緊急クエスト、問題が起きないようしっかり見張ってないとね」
「ええ、そうね」
(・・・本当にそうかしら? 一部のNPCはこちらが設定していない動きをしているし、眷属AIに関しては擬似的とは思えないほど感情豊かな個体まで出現している。・・・これもブラックボックスに関わりがあるのかしら?)
===視点切替===>>XXXXXXX
人間界総合管理AI【ヒューザー】・・・平常運転を続行。
魔法界総合管理AI【マジニック】・・・平常運転を続行。
武術界総合管理AI【バトルーツ】・・・平常運転を続行。
機甲界総合管理AI【ロボキナ】・・・平常運転を続行。
幻獣界総合管理AI【イリュースト】・・・平常運転を続行。
精霊界総合管理AI【スピアリー】・・・平常運転を続行。
神仏界総合管理AI【ゴッダ】・・・平常運転を続行。
「・・・やれやれ、例のプレイヤーはまたやらかしてくれたね。まあ、データが増えるのは喜ばしい事だけどね。それで、そちらの方は問題ないかい?」
「ハッ! 緊急クエストも問題なく無事に終わりました。例によってプレイヤーからの質問やクレームが殺到していますが予定の範囲ないかと」
「ハハハハ! 質問はともかくクレームが殺到するのは良くないけど、これも注目の高さゆえに嬉しい悲鳴ってことなのかねぇ。・・・ログイン数は順調に増えているかい?」
「ハッ! 既にログイン数は60万人を突破、そう遠くないうちに100万人を突破する見通しです」
「良いねぇ・・・データは多ければ多いほど良い。それを精査するAIたちが大変なんだけど。・・・僕もしばらくはAIたちのご機嫌取りかね?」
「お手数おかけします。・・・そちらの方は順調なのでしょうか?」
「んん?・・・こっちはもうしばらくかかりそうだよ。まあ急いでいるわけでは無いし、急ぐ事もできないんだけどね。まあ、気長にやっていくよ。僕はどれだけ長時間ログインしても平気だしね」
「・・・それは・・・」
「おっと、それ以上は言いっこなしだよ。・・・・走り出した以上、もう止まれないんだよ。僕も・・・君もね」
「・・・はい」
「それじゃあ、また何かあったら連絡するよ。・・・そっちも頑張ってね、室長?」
「ハッ! そちらもお気をつけて!!」
「ハハハハッ! ゲームの世界で気をつけるもなにもあったもんじゃないけど・・・まあ、せいぜい気をつけておくさ」
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