借りは返す
「次、8位の【GGGヒーローズ】だけど・・・文字通りヒーローの集まりだね」
・・・漠然としすぎていてわかんないんですが?
「コスチュームを着て人助けをする集団って事なのか?」
「あながち間違っていないね。種族やクラスを問わず、初心者から上級者まで加入できて、全ての世界で活動している大規模クランさ。初心者向けのサポートもやっていて人気No.1クランだね」
初心者向けサポートとはまた親切なクランだな。誰でも入れて、サポート充実なら人気が出るのも分かる、か?
「メンバーは皆、カッコいいスーツとかカッコいい武器とかカッコいい防具とかカッコいいスキルとかを使うプレイヤーばかりだね」
「・・・コスプレ集団?」
いや、スキルやら魔法やらを使えるんだからコスプレではなくある意味本物ということにはなるんだろうけど・・・
「ちなみに10位の【アマゾネスプリンセス】とよく喧嘩をしていて、【秘密結社DEATH】とよく戦ってるよ」
「なんだよそりゃ・・・」
意味がわかりません。
「【アマゾネスプリンセス】は・・・まあ、ヒーロー集団に対するヒロイン集団といった所か。文字通り女性しか参加できないクランで・・・ゴリゴリの戦士姿からフリフリのドレス姿までいろんな姿の女性プレイヤーがいるね」
「こっちもコスプレじゃね?」
同じコスプレなら一緒のクランでやれば良いのに・・・確かに男子と女子で好きなヒーロー、ヒロインは分かれたりすることもあるが・・・
「喧嘩っていうのは何だ? あと【秘密結社DEATH】と戦ってるっていうのは?」
秘密結社と戦うっていうのはまあ分かるが・・・分かるか? まあ、それは置いておいて、喧嘩と戦いって一緒じゃないのか?
「・・・」
なぜか微妙そうな顔をして答えるのを渋るラング。代わりに答えたのがガットだった。
「あぁ~・・・なんじゃい。【GGGヒーローズ】と【アマゾネスプリンセス】はいつも揉めておってのう。やれ、どっちが強いじゃの、世界の平和を守っているのは自分達じゃのと」
「え? そんな壮大な話?」
どっちが強いかはともかく、世界の平和を守っているクランなんて初耳なんだが?
「よくPvPで争っておるんじゃが、そこにいつも【秘密結社DEATH】が乱入してきおって破壊活動を行うんじゃよ。それを【GGGヒーローズ】と【アマゾネスプリンセス】が力を合わせて食い止める、というのが何時もの王道パターンなんじゃ」
・・・それ、マッチポンプって言うんじゃないか?【秘密結社DEATH】も乗っかってるよね? まさか事前打ち合わせとかしてるんじゃないだろうな。
「おおー! 熱い展開っすねー!!」
「・・・アシュラ・・・」
「・・・君って奴は・・・」
俺とアスターは眩しそうにアシュラを見る。俺たちが失った純粋さをアシュラはまだ持っているんだね。羨ましく・・・は無いな。
「・・・で、その事をガットが知ってるってことは・・・」
「うむ、【GGGヒーローズ】と【アマゾネスプリンセス】は、【アイゼンガルド】のお得意様じゃい」
またか。お前のところ、えらく手広く商売してるじゃないか。
「まあ、こっちの方はワシではなく、ヴィオレやヒューナス、他にこういうコスチューム作りが得意な者がおっての。そいつらに任せておるわい」
ガットが作った物じゃなくても【アイゼンガルド】製っていう時点で十分脅威だと思うんだが・・・
「あと【GGGヒーローズ】も【アマゾネスプリンセス】も【人間界】に拠点があってプレイヤーからのクエストも積極的に受け付けてるね。君達も助っ人が欲しいときは依頼すればきっと助けてもらえるよ。勿論報酬は必要だけどね」
他のプレイヤーやクランの助っ人までやってんのか。さすがは正義のヒーローあんどヒロインず。
「まあ、そんなわけで、彼らはPvPも経験豊富なんだよ。自分たちの方が順位は上だったからと言って油断しないほうが良いよ」
・・・なるほど、普段からPvPしまくっているって考える事もできるのか・・・すごい結果論のような気がするが。あと正義の味方が一番平和から程遠い気がするんだが気のせいか?
「さて、これでクエストで上位陣だったクランの説明は終わったよね?」
なにやら話しを切り上げようとしているラング。
「おいおい、まだ9位の・・・【クラッシュヘブン】? が残ってるぞ?」
俺がそう言った瞬間、ラングがもの凄く嫌そうな顔をした。それなりに付き合いがある俺でさえも見たことのない表情だった。
「・・・ガット?」
その理由を知るべくガットに目を向けるが・・・目を逸らされた。いかにも話したくないオーラが出ている。・・・なんなんだ?
「・・・アルクさん」
「おうわっ!・・・ロゼさん。もう歌い終わったんですか?」
「ええ、ひとしきり歌い終わったので満足しました」
そうですか。それは良かった・・・随分長い熱唱でしたけどね。
「それはそうと【クラッシュヘブン】に関してはリーダーの口からは言いたくないでしょうから私からお教えしましょう」
おおう、それは助かるが・・・なんでラングは言いたくないんだ?
「【クラッシュヘブン】は体育会系、ヤンキー、ガチムチの集まりです」
・・・ん?
「・・・今なんて?」
「【クラッシュヘブン】は体育会系、ヤンキー、ガチムチの集まりです」
・・・一言一句そのまま二度も言ってもらったのに理解が追いつかない。
「ようするに暑苦しい連中の集まりって事さね!」
同じく歌い終わっていたヴィオレがあっさりばっさりざっくり分かりやすく教えてくれた。
「・・・意味がわからないんだが?」
「ですね。私達も分かりません」
「・・・」
「・・・」
・・・なるほど。
「とりあえず関わりたくないって事だけは理解した」
「ご理解いただきありがとうございます」
要するにラングがきら・・・苦手なタイプの集まりってことか。情報屋がそれで良いのかと言いたくなるが無理強いは出来ないだろう。・・・できれば俺も関わりたくないな。トーナメントで当たったらどうしよう。
「まあ、そんなことはどうでも良いとして、11位以下でも有力なクランやプレイヤーはいるし、今回のクエストに参加しなかった所もあるから油断は禁物だよ?」
そんなことって・・・いや、言ってる事は間違いじゃないんだけどな。
「ならラングが他に注目してるのはどこなんだ?」
「そうだねぇ。スピード命のクラン【シルヴァリス】、ひたすら冒険を追い求めるクラン【アルバストーリア】、闇に生きるハードボイルドクラン【グランツシャッテン】、食材があるならどこにでも行く料理クラン【アフェクシオン】、あ、最近出来た忍者クラン【星影】なんかもあるかな」
・・・バラエティ豊富だな。どこから突っ込んでいいのかわからん。というか注意する対象が多すぎない?・・・とりあえず強豪プレイヤーが多数いることだけは分かったが。
「トーナメントまで後3週間ちょっと・・・できることは何でもやっていかないとな」
全員が頷く。少なくとも今のままでは勝てない相手がいる事が分かっただけでも収穫だろう。
「さて、話は出来たし、僕たちは失礼させてもらうよ」
「ワシらも自分たちのクランの元に戻るとするかのう」
そういってラングとロゼさん、ガットとヴィオレがそれぞれ出て行こうとするが・・・
「おい、ラング。今の話の情報料はいらないのか?」
「いらないさ。言ったろ? 公表されている情報しか知らないって・・・今僕が話したのは少し調べれば誰でも得られる情報だよ。さすがに情報料は取れないさ」
・・・さいですか。こいつがいらないって言ったら絶対受けとらなんだろうな。
「・・・あ、そうそう、アルク」
「?」
部屋を出ようと扉を開けたところで止まるラング。ついでにガットも。
「今日の借りはトーナメントで返すからね?」
「うむ、楽しみに待っておれ」
そう言って二人はクククッと笑いながらロゼさんとヴィオレを引き連れて部屋を出て行った。
「・・・やっぱり勝手に奢りにしたのを根にもってやがったか」
「当たり前じゃない?」
・・・その割には笑ってたけどな・・なにはともあれ、これでラングもガットも本気で俺を倒しに来るだろう・・・楽しみ・・・いや、おっかないなぁ(棒読み)。
その後、ほどほどに楽しんだ所で最後に一人ずつ歌って終わりにする事にした。
・・・のだが、女性陣がP○boを歌いだしたので男性陣の羞○心で対抗してやった。
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