クランいろいろ
「まず一位だった【あア亞あア亞】・・・言いにくい名前だね。カオス・・・だったっけ? 目撃情報はあるけど・・・詳しくは分からないね」
「出だしからそれかよ」
一番詳しく知りたい情報なんだが・・・
「そもそも名前からして初めて知ったからね。おそらく、そのカオス君はソロプレイヤー・・・他のプレイヤーとかかわりがほとんど無いんだろうねぇ。クランにも所属していないようだし、そういうプレイヤーの情報は集まりにくいんだよ。目撃者の話だと、白い男が高レベル帯のフィールドやダンジョンをよくうろついているんだってさ」
ああ、やっぱり白い男って呼ばれてるんだ。
「中には、あれは運営が用意した幽霊なんじゃないかって言い出すプレイヤーもいるくらいだよ」
まさかの幽霊扱いとはヒドイな。・・・あの全身真っ白に出くわしたらそう思うのも無理ないかもしれんが。真っ白お化け?
「ただ、別の噂では強豪クランからの勧誘を断り続けているプレイヤーがいるって話もある。きっとそれが彼なんだろうねぇ」
・・・結局、名前と実力以外は謎か?
「あの人、一人クランで1位になったって言ってたけど本当かしら?」
アテナはカオス一人(プラス【眷属】)で1位になったことに懐疑的なようだ。まあ、俺たちの苦労を考えれば無理も無いが・・・
「圧倒的なレベルとプレイヤースキル、強力なスキルと【眷属】がいれば不可能では無いと思うよ。ソロプレイの利点は経験値を独り占めできるからレベルが上がりやすいって事だからね」
パーティを組む利点は確かに大きいが欠点もある。どんなプレイをしようとプレイヤーの勝手だが、単純にレベルで比べようとすると普段のプレイスタイルがものを言う。
「そういう意味では今回のクエストで更に強くなった可能性が高いな」
奴は俺の【韋駄天の俊走】にしっかり反応していた。最低でも【剣鎧の精霊】以上の強敵である事は間違いない。
「・・・あまり、考えたくない事実ですね。それになんというか・・・あの人はアルクさんと真逆な感じがするんですよね」
真逆? 急になに言ってんだ、アルマ?
「見た目もそうですが、雰囲気というか・・・アルクさんは真面目な雰囲気の中でもおふざけが入る陽気な人ですが、あの人はなんというか・・・怖いというか冷たい感じがします」
・・・おいこら。誰がおふざけを入れてるって? ・・・入れてるな、確かに。
「確かにね。二人がトーナメントで当たるのが楽しみだよ。さて、カオス君に関しては以上だね。まあ、今回のクエストで名前は知れ渡っただろうから、その内新しい情報があるかもしれないよ? ・・・次、2位のクラン【ディアボロス】は君達も知ってるよね」
知ってはいるが詳しいわけじゃない。せいぜい名前と戦い方が少し分かるだけだ。
「【魔法界】を中心に活動しているけど、他の世界にもちょくちょく足を運んでいるようだね。基本的には【魔法界】でのクエストを積極的に行っている。・・・あとは【魔導具】を集めているらしいね」
「【魔導具】?」
ここに来て初めて聞いた単語が。
「【魔導具】っていうのはいわゆる【魔剣】や【魔杖】・・・ああ、【魔杖】ならアルマ君も持ってたっけ? まあ、魔の力が宿った特別な装備の事だよ。プレイヤーメイドもそうだけど、クエスト報酬やボスドロップで手に入る【魔導具】には特殊な効果があるらしいよ?」
・・・俺が持ってる【霊刀ムラクモ】や【妖刀オロチ】みたいな物か。当然、トーナメントでも使ってくるだろうし、厄介だな。
「【ディアボロス】は少数精鋭ながら着実に力をつけているクランだよ。正直、僕は【ディアボロス】か【双星騎士団】が1位になると思っていたよ」
ラングがそこまで評価するのか・・・実際に会ってみるとなんともいえないんだが・・・
「で、今話に出てきた3位の【双星騎士団】だけど、このクランは【武術】と【魔法】の二つに力を入れているクランだ。【武術界】と【魔法界】を主に攻略してるね」
「たしかラーサーって人がリーダーで、シャンテって人がサブリーダーだったっすよね?」
「そうだよ、アシュラ君。ラーサー君は【騎士】、シャンテ君は【魔女】の実力者として有名だ。他にも【聖剣】や【聖杖】を始めとした【聖動器】を持っていることでも知られているよ。【聖動器】は聖なる力が宿った特別な装備の事だね」
「武器も防具もお主ら【アークガルド】のそれに引けを取らん。トーナメントで当たれば苦戦は必死じゃろうのう」
・・・【聖動器】か・・・確かにそれらしい物を持ってたが・・・
「ラングはともかく、ガットはなんでそんなに詳しいんだ?」
「奴らの装備を作ったのはワシじゃからのう」
「お前かよ!?」
確かベルバアルの装備を作ったのもお前じゃなかったか!? 何してくれてんだよ!?
「安心せい、ワシが作ったのはラーサーとシャンテの装備だけじゃ。他の連中の物は知らん」
・・・それは安心できる要素ではない。
「・・・と言うわけでその二人も注意なんだけど他のメンバーにも気をつけないといけないよ?【双星騎士団】は結構大人数のクランだけど、中には実力派もいるからね。油断していると足元をすくわれるよ?」
このクランも要注意か。・・・しかし、【魔導具】に【聖動器】か・・・実は【魔剣】と【聖剣】を両手に携えて装備するのが俺のささやかな夢なんだよな・・・俺もトーナメントが終わったら探してみよう。
「続いて4位、【秘密結社DEATH】・・・ここに関しては情報はほとんどない」
「・・・それは秘密結社だからか?」
「秘密結社だからだね」
「・・・そうか、ならしょうがないな」
「納得しちゃうんだ!?」
仕方が無いだろう、秘密結社なんだから。
「ちなみに【人間界】にクランホームがあって随時メンバーを募集中だよ?」
「秘密結社どこ行った!?」
堂々とメンバー募集してる秘密結社がいてたまるか! 堂々と緊急クエストに参加してたみたいだけど!
「まあまあ、世の中には正義の味方に年賀状を出す秘密結社だっているくらいだから・・・」
「何の話だ!?」
もっと真面目に秘密結社やれよ! ・・・すまん、言っててなんだが意味不明だな。
「噂では【幻術】か、それと同じ効果の機械を使って、変装や変身もしてるって話だから、中々尻尾がつかめなくてね。まあ、今までは謎だったけど今回の緊急クエストに4位になれるってことはそれなりの数と実力者がいることは確定だね。注意するに越した事はないよ?・・・どんなプレイヤーが所属しているかは分からないけどね」
変装に変身、ね。どっかのクランにスパイでも紛れ込んでそうだな。・・・このゲームでそんなことが出来るのかどうか知らんが。
しかし、なんとかビーを放ってきた所を見ると向こうもこちらを警戒しているようだ。トーナメントに向けてこちらの動向を探っていると見て良いだろうな。・・・まあ、うざいようなら打ち落とすだけだけど。
「それで次が問題の5位のクラン、【アークガルド】だね」
・・・おい? そのクラン目の前にいるだろう?
「最近になって目立つようになって来たクランだね。戦闘面だけでなく、【料理】、【兵器】の面でも掲示板をにぎわせてるね。あと、【眷属】掲示板でもいろいろ見かけるよ」
・・・掲示板をにぎわせてるのは俺じゃないんだよなぁ。
「え? アニキたちって掲示板に書き込んだりしてるんすか?」
なぜかアシュラが食いついてきた。
「【料理】掲示板には新しいレシピやその発見方法が載ってたりするのです!」
「うむ、【兵器】掲示板も同じなのだ。チェックして行くと中々面白いのだ」
そして自分達も何か発見したら書き込む、と。まあ、重要な内容なんかは情報クランとかも絡んでくるから書き込んだりしないから、あくまで雑談程度で楽しめるレベルってことだけどな。それでも意外な発見もあったりするらしい。あと単純に書き込んだ後のリアクションが面白い。
「そうなんですね。・・・僕も書き込んでみようかな」
・・・お前の場合は【眷属】掲示板でミコトちゃんの可愛さを伝えたら神なれると思うぞ? アスター?
「まあそんな感じで色々注目を集めているクランだよ。・・・これは極秘情報だけど実はレアな【眷属】の発見や緊急クエストの発見にも関わってるって噂だよ?」
フフフッと悪い顔で笑っているラング。多分、第三者からはそう見られてるよって教えたいんだろうが・・・本人たちを前にして極秘もクソも無いだろうに。
しかし、そうか。
俺たちのクランもそれなりに注目されてんだな。
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