守護者
【大邪霊 禍玄武 Lv.58】
大精霊たる玄武が理性を失い、邪霊へと変貌を遂げた存在
・・・え? あれ、マジでどうすんの?
デッカイ亀、もとい【禍玄武】をはじめとした、たくさんの【邪霊】たちが団体でお越しになっているんですが?
「あれ、どうするのかしら?」
「クエストは終わったんですよね?」
終わったはずだ。アナウンスがあったんだから間違いない。
それにここから出るにはどうすれば良いんだ? 来た時は自動で転送されてきたのに・・・戻る時はどうするんだ?
俺たち全員(俺はアークカイザーの中だが)で首をひねっていると・・・
「緊急警告!! 後方ヨリ巨大ナ反応ヲ検知!!」
カイザーがいつになく焦った声で警告を出す。・・・え? 後方?
後方って【世界樹】しかないんだが・・・
ひゅうううううう。
・・・ん? なんだこの音?
「上デス!!」
その言葉に全員が上を見る・・・と直ぐそばになにか巨大な物が落ちてきた。
なんだ? 方向から察するに【世界樹】の方から飛んできたみたいだが・・・まさか敵か?
俺たちは用心深く落ちてきた何かを見る。
これは・・・木か?
アークカイザーよりもデッカイ木の塊?
「いや、違うのだ! 全員離れるのだ!!」
アヴァンの声が響く。見ると木の塊が動いている。いや、違う。立ち上がろうとしている!?
それは人の形をした木の塊・・・いや、木で出来た巨人と言うべきか。立ち上がるとアークカイザーよりもさらに巨大な巨人となって俺たちの前に姿を現した。
【ウッドガーディアン Lv.100】
世界樹を守護するガーディアンの一体
「・・・」
・・・おおう。
アレが噂の【ガーディアン】さんですか。Lv.100って冗談きついっすよ・・・マジで敵じゃないよね?
戦々恐々としている俺たちを余所に【ウッドガーディアン】はその巨体に見合わぬ恐るべきスピードで駆けて行った。
向かった先は【禍玄武】を始めとした【邪霊】軍団。
あっという間に【禍玄武】の目の前に到達した【ウッドガーディアン】は腕を大きく振りかぶって・・・【禍玄武】を殴りつけた。
ドゴンッ!!!!
と、ここまで衝撃が伝わってくるほどの強烈なパンチを食らった【禍玄武】は・・・光となって消えていった。
「ワンパンッ!?」
「「「「「「ええー!?」」」」」」
一撃で【禍玄武】を仕留めた【ウッドガーディアン】はその場にいた【邪霊】たちを倒し(というか踏み潰し)、更に奥へと向かっていった。
「・・・なんだったのです?」
「「「「「さあ?」」」」」
急展開過ぎてついていけてないのですが? なんで急にあんなのが出てきたの? クエストはどうなったの?・・・俺たちはいつになったら戻れるの?
と思ったその時、再びアナウンスが!
『ウッドガーディアンによって全ての敵は殲滅されました。これより皆さんをエリア0に転送します』
そんな表示が現れると共に俺たちの体が光に包まれた。
って、ちょっとちょっと!
「カイザー! 【ヒューマロイド】形態に! 急げ!!」
「了解、ハッチヲ開キマス」
急いでカイザーから降りると同時に目の前が真っ黒になった。
・・・
再び光が見えるようになると、通常の【精霊界】の光景が見て取れた。
「・・・どうやら戻って来れたようですね」
「いやー、何がなんやらっすねー」
・・・まったくだ。
だがどうやら無事に戻ってこられたようだ。
周りを見ると遠くに他のプレイヤーの姿が数多く見える。
「ここは・・・エリア0の東部・・・でしょうか・・・どうやら適当な場所に戻されたようですね」
クエストが終わったからエリア1も元の状態に戻ったんだろう。おそらくまた【邪霊】とエンカウントするようになっているはずだ。エリア1ではなくエリア0に戻されたのは不慮のエンカウントを心配したゲーム側の配慮だろうな。
「・・・どうやら戦闘の心配は無いようだし、武装を解くか」
俺の言葉に皆、思い思いに普段の姿に戻っていく。といっても戦闘服姿なのだが。武装した常態のままでいないのは単に他のプレイヤーに目撃されないようにするためだ。バトルトーナメント向けに。・・・神経質? いやいや用心に越した事は無いよ?
本当はアーテルたち【眷属】組もクランホームに送還しようかと思ったんだが、アウル以下一部の【眷属】たちが駄々をこねたので止めた。甘いなぁ、とは思うが情が移ってしまった俺たちの負けである。・・・なお、あれだけ駄々をこねていたくせに、アーニャが飴玉をあげると静かになるのだから現金なものだ。
「・・・それにしても最後の・・・【ウッドガーディアン】? あれはなんだったのでしょうか?」
アルマの疑問だが、おそらく全員の疑問でもある。おそらくは・・・
「多分、【世界樹】を守る為にでてきた・・・という設定なんだろうな」
「設定っすか?」
「ああ、元々、今回のクエストは【スタンピード】で大量発生した【邪霊】たちの【世界樹】への侵攻を食い止める防衛の為のクエストだろ? 何で敵の殲滅じゃなく、制限時間まで耐えるのがクエスト目標だったのか疑問だったんだが・・・ようするに時間稼ぎだったんだろう」
他の例を挙げるなら、敵を殲滅する為に爆弾を設置する為の時間を稼げだとか、とある兵器のチャージする時間を稼げだとか。そういった部類のクエストだったんだろう。
「なるほどなのだ。ならば、クエストに失敗して防衛ラインを越えられた場合も、同じように【世界樹】の【ガーディアン】が出てきていたかもしれないのだ」
一応、俺たちは時間まで防衛に成功したので、失敗した場合の事は分からないが・・・
「多分、そうだろうな。クエスト失敗で【世界樹】に侵攻されたはずなのにクエストが終わったら、何事も無かったように元に戻っている、じゃあゲーム的には有りでも話的には繋がらなくなるから、そこら辺の辻褄あわせの為のお助けキャラだったのかも知れんな」
細かい事ではあるのだが、それはそれで文句言ってくる奴もいそうだし。
「お助けってレベルじゃなかったと思うんだけど・・・私達の苦労はなんだったの? って言いたくなるんだけど・・・」
確かに、俺たちがあれだけ苦労した【大邪霊】や【上級邪霊】があっという間に倒されたからな。次元の違う強さを見せ付けられた感じだ。
「逆に言えば俺たちだってあれぐらい強くなれるかもしれないって事でもあるんじゃないか? Lv.∞とかなら無理だが、Lv.100だったら俺たちだっていつかなれるだろ? それに・・・」
「それに?」
「・・・多分だが、あのクエストには続きがあったんじゃないか? ただ、俺たちがそこまで到達できなかったと言うだけで・・・。例えば【ウッドガーディアン】が出てくる前のプレイヤーたちだけで全滅させると特別な報酬が出てくるとか」
【世界樹】を守りきったお礼に【世界樹】に招待してくれるとか、【世界樹】の【ガーディアン】と戦わせてくれるとか・・・できればしばらくは勘弁だが。
「まっ、悔しかったら強くなってリベンジしろって事だな。今回の緊急クエストもべヒーモスの時のように常設されるだろうし」
まだまだ、お楽しみは続くって事ですな。
・・・あれ、そういえば結果は? 順位は? 報酬はどうなった?
『集計が終わりました。これより緊急クエストの結果を発表します』
・・・うむ、良いタイミングだ。
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