空中戦
俺とアーテル、アウル、カイザーは【禍朱雀】の方へと向かっていた。【禍朱雀】もこちらに向かっているので直ぐに相対する事になる。
・・・が、その前に確認しておきたい事ができた。
「カイザー、その背中のは何だ?」
俺とアウルはアーテルの背中に乗って飛行している。結構なスピードで。カイザーもそれに続いているのだが、いつも移動用に使っている【空飛ぶバイク】ではなく、カイザーは単独で飛行していた。いや、正確にはカイザーの背中にユニット・・・羽付きのブースターみたいな物がくっ付いているのだが・・・
「マスターアヴァンガ作成シタ飛行ユニットデス。空中戦闘用ニ必要ダト渡サレマシタ」
「・・・そうか」
いつの間に・・・用意良すぎないか? アヴァンよ。
・・・ん? メール? アヴァンから?
『言い忘れたのだ。カイザーには飛行用ユニット【クラウドドライブ】を渡しておいたのだ。単体での空中戦闘を可能にする上、【メカロイド】形態でも使用可能な優れ物なのだ。上手く使うと良いのだ』
・・・まるで図ったようなタイミングでメールが来たんだが偶然か?
『なお、このメッセージは自動的に消滅するのだ』
なに!? とうとう自爆機能が!?
『嘘なのだ』
嘘かよ!?・・・本当にどっかから見てんじゃないだろうな?
「・・・ん?」
何気なく後ろを振り返ると、そこにはアーテルに追走している【ビートル君】が。
・・・俺は何も見なかったことにして前を向きなおした。
「・・・さて、そろそろ接触するな。カイザー!」
「了解デス。【メカロイド】形態へ移行シマス」
全身からナノマシンを放出し、そのナノマシンが巨大な人型ロボットの形を形成していく。これぞカイザーの【クランメカロイド】としての真の姿、アークカイザーだ!
「だう!だーうー!!だー!!」
・・・分かったから、落ち着けアウル。そう興奮するな。気持ちは凄くよく分かる。・・・そんなキラキラした目でカイザーを見るな・・・嫉妬しちゃうだろ。
アークカイザーの胸部が開き、操縦席に乗り込む、俺、アーテル、アウル。本当は6人乗りでプレイヤーが乗ったほうが力を出せるのだが、状況が状況だけに仕方が無い。【眷属】が座っていてもスキルは使用可のなはずだから問題は無いはずだ。
乗り込んだ時点で【禍朱雀】が目前に迫っていた。大きさはアークカイザーより少し大きいくらいの巨大な鳥だった。【不死鳥族】のフィオレは美しい翼をしているのに【禍朱雀】は朱雀と言う名前にも関わらず全身が灰色だ。【大邪霊】っていうのはみんなそうなのだろうか?
まあ、それは置いておいて、さっきの【禍白虎】が氷属性で、火属性の攻撃以外はほとんど通用しなかった。ならこの【禍朱雀】は・・・
「キシャアアア!!」
奇声を上げる【禍朱雀】。
「緊急警報!!」
「!?」
ある程度の距離まで近づいてくるなり、【禍朱雀】は炎のブレスを放ってきた。不意打ちのつもりだったのかもしれないが、俺とアークカイザーは華麗に避ける。反省した俺にその程度の不意打ちは通用しないのだ。
そして今ので分かった。やはりこいつは火属性。だったら・・・!
「【水遁:水鳥乱舞】!!」
鳥の形をした水の塊が数十匹、【禍朱雀】向かっていく。【メカロイド】の効果で威力と規模が増した【水遁】だ。これなら・・・
「キシャアアア!!」
全部とはいかなかったが、半分くらいは【禍朱雀】に直撃した。かなり効いているようだ。やはり水属性が弱点だったか。ならついでにもう一つ試させてもらおうか。
俺はアークカイザーに【豪剣アディオン】を持たせる。
「【氷魔法】を【魔法付加】!【バスタースラッシュ】!!」
「キシャアッ!!」
体勢が崩れた【禍朱雀】に切りかかったが・・・こっちはイマイチ、か? どうやらコイツへの攻撃は水属性だけに集中した方がよさそうだ。・・・【水遁】があって助かったな。攻撃の幅が増える。
「さあ、時間が無い。さっさと・・・!?」
決めようと思ったら【禍朱雀】が大きく翼を広げ、急上昇を始めた。
「逃がすか! 追え、カイザー!!」
「了解デス!」
アヴァンの作った【クラウドドライブ】とやらを全開にして【禍朱雀】を追いかける。・・・中々速いな。【禍朱雀】も【クラウドドライブ】を装備したアークカイザーも。これが従来のアークカイザーのままだったら【禍朱雀】に振り切られていただろう。アヴァンさまさまだ。
逃げる【禍朱雀】に追いかけるアークカイザー。このまま背中から再び、【水遁】を食らわせようとしたその時、
「!?」
【禍朱雀】は突然身を翻し、炎を纏いながらこちらに向かって急降下、いや突進してきた。こっちを打ち落す気か・・・ならば!
「【レーザーダイブ】!」
「クルッ!」
アーテルのスキルを使って迎撃する。アークカイザーも全身に光を纏いながら【禍朱雀】に突撃して行く・・・だけではない。
「【水魔法】を【魔法付加】!【マキシマムスラッシュ】!!」
ぶつかる瞬間を読んで【豪剣アディオン】を振り下ろす。こうすれば相打ち以上のダメージを与えられるはずだ。
「キシャアア!!」
ドンピシャで攻撃が当たり、苦しそうな声を上げる【禍朱雀】。しかし、それでも羽ばたく事をやめず、空中でこちらを睨み続けている。
「頑丈な野朗だな・・・」
だがいける。こっちの属性攻撃は【禍朱雀】にもちゃんと通じる。この調子で行けば勝てるはずだ。
「だう!だーう!!」
「どうした? アウル、今は・・・」
急に騒ぎ出したアウルに静かにするよう言おうとしたとき・・・
「警告、直下ニ【邪霊】ノ反応ヲ多数確認」
カイザーの警告が聞こえた。見ると確かに遠く下の地面に【邪霊】たちの姿が見える。増援かと思ったが、そいつらは上空にいる俺たちを無視して【世界樹】の方へ向かっている。
・・・しまった、やられた!
【禍朱雀】は最初から俺たちをおびき寄せるために上空へ逃げたのか!? 俺たちを引き付けている間に他の【邪霊】たちを行かせるために・・・
どうする? 今からでも下の【邪霊】たちの所に・・・いや、駄目だ。そんなことをしたら【禍朱雀】に背中を見せる事になる。敵の思う壺だ。
・・・下の【邪霊】たちは、アテナやアスターたちに任せるしかない。
今の俺に出来る最善は速攻で【禍朱雀】を倒し、救援に向かう事だ。
「クエスト時間、残リ15分ヲ切リマシタ」
残り15分か・・・時間が無い、間に合うか?
「・・・皆頑張ってるんだ。俺だけ音を上げるわけにはいかない・・・行くぞ!」
「了解デス!」
「クルッ!」
「だう!」
俺たちは気合を入れ直して【禍朱雀】へと向かって行った。
作者のやる気とテンションを上げる為に
是非、評価をポチっとお願いします。
m(_ _)m




