畳み掛け
「【結晶粒子】!」
その他大勢(【上級精霊】を含む)を皆に任せ、俺たちは【大邪霊 禍白虎】と相対する。まずは俺の【結晶魔法】で先制攻撃!
「ガア?」
しかし、効果は薄いようだ!何故だ!!
「敵が巨体だからですかね?【雷鳴疾槍】!!」
アルマの手から雷の槍が発射され【禍白虎】に突き刺さる。しかし、あまり効果があるように見えないな。確かに雷の槍もあの巨体から見ればエンピツ程度の大きさにしか見えないが・・・
「レオーネ!【雷獅虎襲撃】よ!!」
「ガオオオオオオオオ!!!」
アテナの指示でレオーネが雷を纏い、巨大な雷の獅子となって【禍白虎】へ突進していく。まあ、巨大といっても大きさは【禍白虎】の半分程度なのだが。
「ガアアアアア!!」
ライオン対虎の構図である。レオーネが何時もより張り切っているように見えるが対抗心でも燃やしているのだろうか?ライオンと虎って似てるしな。だが・・・
「ガウ!?」
ペシッと言わんばかりにレオーネが【禍白虎】にはたかれた。やはり体格の差が問題なのか?いや、それにしては・・・
「予想以上に効果が無いわね・・・キャア!?」
今度は【禍白虎】が攻撃してきた。それは猛吹雪を思わせるような強力なブレスだった。
「冷てぇ!【結晶の障壁】!!」
避けきるのは無理だと判断した俺は結晶の壁を作り出す。全員避難できたが、【禍白虎】の近くにいたレオーネだけはダメージが大きかった。というか足が凍り付いている。
「ガウゥ・・・」
「待ってなさい、レオーネ。【解呪】!」
アテナの【浄化魔法】でレオーネの足は回復したが・・・こんな状態異常があるとは手ごわいな。
「あの【禍白虎】は間違いなく氷属性だ。それなら・・・」
「火属性が弱点のはずですね。フィオレ!【フレイムトルネード】!!」
「ピュィイイイ!!」
フィオレがブレスの隙間を縫うように上空へ飛び出し、炎を纏って回転しながら【禍白虎】に突進して行く。
「ガア!?」
お、効いた?フィオレの突進を【禍白虎】は身をよじるようにかわした。おかげでブレスは止み、自由に動けるようになった。
「ビンゴですね。あいつは火属性の攻撃が弱点、というかそれ以外の属性攻撃はあまり意味がないようです」
それはそれで厄介ではあるのだが、弱点がわかったのであれば戦いようがある。
「【火属性魔法】を【魔法付加】!【俊天の疾走】!!」
【豪剣アディオン】に火属性を付加し、【禍白虎】へ突進して行く。
「【マキシマムスラッシュ】!!」
「ガア!?」
よし効いた!俺の剣は確かに【禍白虎】の体を切り裂いた。あの巨体からすれば傷はまだ浅いだろうが・・・
「レオーネの仇よ!怒れる炎よ、渦巻く嵐よ、すべてを焼き払え【大爆発】!!」
俺とフィオレが離れたところでアテナの怒りの【爆発魔法】が炸裂した。あの【魔法】も火属性が含まれているから効果は十分のはずだ。
爆煙に包まれ動く様子の無い【禍白虎】。それならばと今のうちにポーションで回復しておく。
「・・・やったのかしら?」
「おい、アテナ。それ、フラグだぞ。ただダメージは確実にあるはずだ」
「火属性しか効かないというのは縛りが厳しいですが、このまま押し切って・・・!?」
爆煙の中から出てきたのは【禍白虎】・・・ではなく巨大なつららだった。先が尖った鋭利な刃物のような巨大なつららが全方位に飛ばされる。
「危なッ!皆、避け・・・あ、駄目だ。【グランディスマグナム】バスターモード・・・シュート!!」
最初は避ける事に専念しようとした俺だが、とある方向に巨大なつららが向かっているのを見て、打ち落とす方向にシフトした。
とある方向と言うのは当然、その他大勢を相手にしているアスターたち(かなり苦戦している)のいる方向である。あちらを任せて、こいつの担当になった以上、こいつの攻撃をアスターたちに届かせるわけには行かないのだ。
こういった乱戦で気をつけなければいけないのは、他人の攻撃に巻き込まれる事だ。フレンドリーファイアはこのゲームには無い(その割りに味方からダメージを受ける事は多々あったが)ので自分達の攻撃が味方を巻き込む事は無い。
しかし、敵の攻撃は当たり前に誰彼構わず巻き込まれるのだ。例え直接相対していなくても、だ。
だからこそ、こういった場面では連携というかチームワークが大切になってくるわけだ。仲間に背中を預けると言う奴だな。
決して上手く連携が出来てるとは言えない俺たちだが自分に割り当てられた敵ぐらい自分で対処しないとな。仲間に被害が行かないように。
深く反省した俺に死角はないのだ!
幸いな事に巨大なつらら自体は火属性でなくとも打ち落とす事ができた。剣で切り裂く事もできた。火属性攻撃だけが有効なのは【禍白虎】本体だけのようだ。
その【禍白虎】が爆煙の中から出てきた。アテナの【爆発魔法】で相応のダメージはあるもののまだまだ元気な様子。・・・やっぱりボスキャラはそう簡単に倒せないよな。
アスターたちもまだ時間がかかるようだし、こっちは俺たちだけで抑えないとな。
「行くぞ!アテナ、アルマ!!」
「ええ!」
「はい!」
俺たちは再度、【禍白虎】に突撃して行くのだった。
「クルー!」
「あい!」
「うー!」
「だう!!」
アーテルやアウルたちの声援を受けながら・・・声援だよな?
・・・
ボスキャラだけあって中々しぶとい。しかし、着実にダメージを与えている。・・・与えているのだが、中々思うのだが、中々時間がかかっている。正確な時間までは分からないがもう10分以上経っているのは間違いない。
それにいつも以上にやりにくさも感じていた。やはり火属性オンリーという縛りが結構な邪魔になっている。武器による攻撃は【魔法付加】によってまだ何とかなるが、【魔法】にかんしては火属性を含む【魔法】に限られるわけだ。
アテナはまだ良いとしてアルマに関しては何時もの【氷結魔法】が使えないのが痛い。普段からどれだけ二人の【魔法】に頼りきりなのかが分かるな。・・・いつもぶっ放しまくりとも言う。
とはいえ、アルマも【火魔法】が使えないわけではない。
「【ファイヤボール】!!」
ただ、いつもより派手さがないというだけで。・・・いや、いつもが派手過ぎなのか?
しかし、それももう直ぐだ。それはこちらの問題ではなくあちらの方。アスターたちがもうすぐ【邪霊】たちを倒し終わるからだ。
思えばアスターやアシュラは格上の邪霊相手によく頑張ってくれたな。・・・少し酷だったか?しかしこっちに来たらもっと格上の【禍白虎】と戦うはめになるからな。ドンマイ。
なんにせよ、向こうが片付いたら全員がかりで一気に倒してやる!
と息巻いた所で・・・
「ピュイイイイ!!!」
フィオレが騒ぎ出した。
なんだ?と思ったらフィオレがとある方向を翼で指差した(器用だな)。
それは先ほど、【禍白虎】がやって来た方向。
そこに、こちらに向かってくる巨大な影が・・・
・・・畳み掛けてきやがったか・・・
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