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緊急クエスト開始

「グラントにクロースか・・・お前達の装備のおかげで俺たちは随分助かってる・・・ありがとうな」


「・・・」うんうん←グラントが満足そうに頷いている


「・・・」ニコッ←クロースが嬉しそうに微笑んでいる


・・・


「・・・おい、ガット、コイツらしゃべれないのか?」


アウルたちだって返事ぐらいしてくれるのに。あい!とかうー!とかだけど。


「・・・人見知りなんじゃよ」


・・・なんだ今の間は。こっちの感謝の気持ちは伝わったみたいだから別に良いんだが。しかし、アウルたちもこんな感じで成長するのだろうか?楽しみなような、今のままで居て欲しいような・・・悩ましい。


「・・・お主が何を悩んどるのか手に取るようにわかるぞ。グラントもクロースもお主らの【眷属】のように幼い感じに姿を変えられるぞい。まあ、本人たちが嫌がって滅多に変わらんがの」


・・・そうか。アーテルたちのような【幼体】と【成体】みたいな感じで姿を変えられるのか。それは朗報。しかし・・・


「嫌がる?」


「どうも【眷属】たちの思考や性格は成長するにつれて主たちに似てくるようなのじゃ。ワシもヴィオレも容姿をからかわれるのが好きじゃないからのー。その辺りの性格が似通ってしまったようじゃ」


・・・なるほど。主の影響か・・・ガットやヴィオレの職人気質を受け継いだって所か?まあ、悪い事じゃないよな。・・・俺も気をつけないと。アーテルやアウルがスカポンタンに育ってしまったら間違いなく俺のせいだ。


アテナたちが、グラントやクロースに、えー、見せて欲しいなー、とかお願いしているが当人達は首を横に振るだけだ。頑固な所まで似てしまったらしい。


・・・ん?人見知りなのもガットやヴィオレに似たのか?・・・いやいや、二人とも威風堂々と構えているタイプだし、【精霊】たちの元々の性格だろう・・・多分。


「なるほど・・・俺も気をつけないといけないな・・・ところでラングの奴は一緒じゃないのか?」


ラングもロゼさんも姿を見せない。・・・まあ、別に会う約束をしているわけでもないのだが、いつもは勝手に集まってくるからな・・・まさか、ラングの奴、まだ根に持ってるのか?


「アヤツらならエリア1を元気に飛び回っとるぞ?」


ガットが空を指差すと、遠くの方に【眷属】のグリフォンに乗って飛び回っているラングの姿が見えた。


「・・・なにやってんだ?アイツ?」


「偵察じゃよ。前のべヒーモスの時もそうじゃったが有力なプレイヤーやクランが数多く揃う滅多にない機会じゃからのう。しかも今回は事前予告があった分、多くのプレイヤーが参加するとふんでそれはもう張り切っておるわい。【インフォガルド】だけではなく他の情報系クランもな」


・・・そういえば上空を忙しなく動いている奴らが結構いるな。俺たちの上空を飛んでく奴もいるし。ご苦労な事だ。順位予想でもするのだろうか?


「ここに来るまでの間にも、ワシでも知ってるようなプレイヤーが結構おったし、今回のクエストは荒れそうじゃわい」


「そうだねぇ。アタイの客だった奴も何人かいたしねぇ」


ふむ、俺たち以外の【アイゼンガルド】製の装備を持ってる奴らか・・・手ごわそうだな。


「そういえば、私たちが【邪霊】と戦いに行ったときも、結構な人数が同じ事をしてたわよ?」


「ええ、私達と同じように【邪霊】たちとの戦い方を試しているような感じでした」


アテナとアルマの報告だ。どうやら考える事は皆同じらしい。


「油断しとるとお主らも足をすくわれるぞ?アルク?」


油断はしないが、気合を入れて望まないといけないようだ。


「大きなお世話だ。人の心配より自分たちの心配をしたほうが良いんじゃないのか?」


「ガハハハハ!!ワシらはレベリングが主目的じゃから、順位と報酬はそこそこで良いんじゃよ・・・ああ、無論、貴重で生産に使えるような素材が報酬にあったら高値で買い取るぞい?」


・・・それは俺たちが上位に入る結果を出せたらの話だろうが。・・・信頼されていると受け取って良いのだろうか。ヴィオレもウンウン頷いてるし。


「・・・その話は結果が出てからだ」


「そうじゃのう。ではワシらはもう行くぞい」


そう行ってガットたちは去っていった。


・・・なんか発破をかけられた気分。


「・・・どうやら強そうな奴らが参加してくるようなのだ」


「燃えてきたっす!!」


アヴァンは冷静に、アシュラは情熱的に燃えている。別に直接やりあうわけじゃないからね?


「やるのですー!殲滅するのですー!!」


「・・・まあ、やれるだけやるしかないですよね」


アーニャは物騒に、アスターはやや疲れ気味に気合を入れる。・・・ほどほどに頑張ってくれ。


「やるんだったら当然、一位を狙わないとね!!」


「ええ、全力で行きませんと・・・でしょう、アルクさん?」


「当然だ」


アテナもアルマも、そして俺も全力で行くつもりだ。何せ他のクランの目も無く思いっきり暴れられるんだからな!!・・・え?いつもそうじゃないかって?・・・気にするな!!


『クエスト開始時間になりました。参加クランの皆様を特別フィールドへ転送開始します』


そんな感じのアナウンスが流れ、俺たちの体が光に包まれ・・・この場から消えた。


・・・


俺たちが転送された先は・・・草原だった。だだっ広い平坦な草原が地平線のかなたまで続いている。ただし、後方には【世界樹】の姿は見える。ここが【精霊界】のクエスト専用のフィールドらしい。


「広いっすねー、戦いやすそうっす!」


「・・・でも遮蔽物が無いね。隠れる場所はなさそうだよ?」


アシュラの言う事もアスターの言う事も、もっともだ。何も無い場所の方が戦いやすいのは間違いないが、万一の時に隠れる場所が無い。まあ、それは敵にしても同じ事だが。


「・・・アルクさん、見てください」


アルマが指差した先、俺たちが転送されてきた場所の後方、10メートルくらいの場所の地面にうっすらと光の線のようなものが惹かれている。その光の線が曲線を描いてどこまでも続いている。


「何の線かしら?これ?」


「クエストに関係あるんだろうな」


一通り周囲を確認したところで再度アナウンスが鳴り響く。


『これより緊急クエストのルールを説明します。大量発生した【邪霊】たちが【世界樹】に向かって進行を開始しました。プレイヤーの皆さんは【邪霊】たちがエリア0の防衛ラインを超えないよう討伐をお願いします』


「ふむ、この光の線は防衛ラインということなのだ。おそらく【世界樹】を囲うように円状に引かれているのだ」


「だろうな。多分、エリア0とエリア1の境界線なんだろう・・・分かりやすいのは素直にありがたい」


『【邪霊】たちが一体でも防衛ラインを超えた場合、クエストは失敗になります。また、クエスト内で死亡したプレイヤーはそのままクエスト離脱となりますので注意してください。プレイヤー数が0になった場合もクエスト失敗になります』


「うわぁ、結構厳しいルールですねぇ」


「失敗は許されないのです!!」


『現在、配置されている場所が貴方たちに割り当てられた防衛箇所になります。他の場所は他のクランの皆様が防衛しますので、自分たちの割り当てられた場所の防衛に専念してください』


「・・・え?どういうこと?」


「つまり、【邪霊】たちは俺たちが今居る場所に向かって来るってことだ。他の場所、例えば【世界樹】をはさんで反対側の場所とかは他のクランが防衛しているから、俺たちが気にする必要はないってことだろう」


『制限時間は1時間、時間経過と討伐状況に応じて敵のレベルと数が増えますので注意しながら制限時間を過ぎるまで防衛戦を維持してください。それでは5分後にクエストを開始します』


ここでアナウンスが終了した。


「・・・ふむ、まとめると1時間、ここから先には行かせない!を繰り返していれば良いんだな」


「おお!簡潔にまとめたっす!さすがアニキっす!!」


「なにがさすがなのか分からんがさっさと準備しろ、アシュラ」


他の皆は既に装備しなおして準備を始めてるっていうのに。


「大丈夫っす!ボクは既に準備万端っす!!」


・・・ああ、そういえばコイツ、素手で戦ってるんだった。戦闘服を既に装備している以上、もう準備は終わってるのか。


おっと、俺も準備しないとな。装備は【剣鎧の精霊】の時と同じ【豪剣アディオン】【攻鎧アルドギア】【霊刀ムラクモ】【妖刀オロチ】【グランディスマグナム】だ。これぞ今の俺の最強装備。


なお、今回はパーティ編成などは必要ないらしい。クランメンバー全員の総力戦なので経験値も参加メンバー全員に配られるそうだ。


全員の準備が終わった所で開始を待つ。


『時間になりました。それではこれより緊急クエスト【クラン対抗戦 制限時間内に出来るだけ多くの敵を倒せ!】を開始します』

作者のやる気とテンションを上げる為に


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