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日々進歩

『緊急クエスト開始30分前となりました。クエストに参加される皆様は【精霊界】エリア1へ向かってください』


ご丁寧にもこんな感じのアナウンスが流れてきたので移動する俺たち。まあ、実際には30秒で移動する事が出来る場所に居たので焦って移動する必要は無いのだが、じゃあ他にやる事があるのかと言われれば特にないので移動した几帳面な俺たちである。


なお、この時間から【精霊界】エリア1では【邪霊】たちは出現しなくなるらしい。なのでエリア1で【精霊】ゲットをもくろんでいたプレイヤーからすればいい迷惑である。なんかゴメン。


別にエリア0で集合しても良いと思うのだが、何か理由があるのだろう。深くは考えないで置く。


「私はいつも通り戦えましたね、ですが属性が・・・」


「弓が効かなかったのは痛いわね。【魔法付加(エンチャント)】があれば大丈夫みたいだけど・・・」


「ラグマリア、武装はエナジー系を中心にするのだ。あとは・・・」


「ブランちゃん、ノワールちゃん、テールちゃんのフォローをよろしく頼むのですー」


「いやー皆さんさすがっすねー」


「まあ、僕らが一番レベルが低いから頑張らないとね」


・・・俺以外の皆は対【邪霊】戦の戦い方を確認している。俺は特にアドバイスしていないのにちゃんと自分達で戦い方を学んできたか・・・偉いぞ!・・・なんで俺は話しに加わらないのかって?・・・まずは自分たちで確かめて来い!と言ったら、皆自分たちで確かめて自己完結してしまい、特に俺の意見は必要なかったためである。・・・少し寂しい。


「クルッ?」


「だーう!」


・・・そうだったな。俺にはお前達が居たな。寂しくないよ、うん。


「・・・何をたそがれておるんじゃ?お主は?」


と、アーテルとアウルに心の寂しさを埋めてもらっているところに話しかける輩がいた。このオヤジな話し方は当然、ガットだ。


「どうしたガット?トイレならここには無いぞ?」


「誰もトイレなんぞ探しちゃおらんわい!第一、そんなもんこの世界にはないじゃろうが!!」


そうだっけ?・・・そういえばゲームの世界には無いんだった。メンゴメンゴ。


「ならどうしたんだ?今回はクラン毎にクエストを受けるはずだろう?」


エリア1は広大だ。なのでどのクランも顔を合わさない程度に適度にばらけているらしい。なので、目的でもない限り顔を合わせることは無いはずなのだが・・・


「用があるのはアタイだよ。そっちの二人にね!」


おっとヴィオレも居たのか。・・・クラン毎のクエストなんだから当然だが。しかし二人以外に()()()()()()いないようだ。【アイゼンガルド】は別の場所に集合しているようだ。


「ボクっすか?」


「僕もですか?」


ヴィオレが指名したのは、アシュラとアスターの新人コンビだ。っていうことはまさか・・・


「そう!二人の戦闘服、ちゃんと作って持ってきたよ!!」


そう言ってヴィオレは二人に戦闘服を渡した。


【地褐の戦闘服 ☆10】

特性:DEF+70 MDEF+70 DEX+20 属性:水土 損傷度:0%

特殊な素材と手法で作成された戦闘服、高い防御力を誇りながら羽のように軽い衣服

製作者:アイゼンガルド:ヴィオレ

アスター専用


【武橙の戦闘服 ☆10】

特性:DEF+70 MDEF+70 STR+20 属性:風雷 損傷度:0%

特殊な素材と手法で作成された戦闘服、高い防御力を誇りながら羽のように軽い衣服

製作者:アイゼンガルド:ヴィオレ

アシュラ専用


アスターは茶色・・・褐色かな?・・・を基準とした銀のラインの入った軍服のような服でアシュラはオレンジ・・・橙色?・・・を基準とした銀のラインの入った軍服のような服だ。要するに俺たちとお揃いなのだが。


「す、すごいっす!服を着てるのに着てないみたいに軽いっす!!」


「着心地も良いですね。今まで着てた服とは段違いです」


早速、戦闘服を着た二人がそれぞれ感想を漏らす。二人は大変気に入ったようでそれは良いんだが・・・


「早くね?」


前まで一着作るのに一日くらいかかっていたと思ったんだが・・・


そう疑問に思っているとヴィオレが俺を見て、


「舐めんじゃないよ!アルク!!アタイだって日々レベルアップしてんだ!!半日あれば二着作るのも余裕さね!!」


だそうです。


そうかヴィオレの服の製作スピードも上がっているのか。・・・そうだよな。レベリングしているのは俺たちだけじゃないんだよな。ガットもヴィオレも日々進歩してるってことか。


「なるほど・・・んで?」


「ん?でっていうのはなんじゃい?」


「とぼけんじゃねぇ。後ろの【()()】はなんだ?って聞いてんだよ」


そう、この場にはプレイヤーは二人しか居ない。しかし、二人が引き連れてきた【精霊】が二人、この場に居たのであった。


「フッ、気づきおったか!」


当たり前だ、ボケ。


「コイツはワシの【眷属】、【鍛冶の精霊】グラントじゃ」


「こっちはアタイの【眷属】、【衣服の精霊】クロースだよ!!」


・・・


【鍛冶の精霊】グラントと呼ばれた【精霊】は、成人男性くらいの大きさの男性だが、肌が赤い筋肉質マッチョで、手、足、髪が炎のように燃えていて、巨大なハンマーを持っている。赤い瞳に無表情の顔でペコリと頷いた。


【衣服の精霊】クロースと呼ばれた【精霊】は、成人女性くらいの大きさで、全身銀色の着物というか羽衣を身に纏っている。真っ白な肌にさらさらの銀の髪で、銀の瞳と柔らかな微笑みでこちらにお辞儀をしている。


二人とも宙にぷかぷか浮いていて、浮世離れした雰囲気があることから、プレイヤーではなく【精霊】だと言う事が分かる。


「・・・二人とも凄いですね。もう中級・・・いえ、【上級精霊】くらいまで育っているんじゃないでしょうか・・・」


アスターが感嘆したように呟く。


「ガッハッハッハ、そうじゃろうそうじゃろう!お主らの装備が高いレベルで作成できたのはコヤツラのおかげでもあるんじゃ!!」


ガハハと笑うガット。どうやら俺たちの装備が強力なのは素材だけの問題じゃなく彼らの力も影響していたらしい。ということは・・・


「・・・その言い分だと大分前から彼らはお前達の【眷属】だったってことか?」


「む?当然じゃろう?アルクがゲームを始める前からずっと【眷属】じゃよ」


つまり一ヶ月以上前から、ということになる。


「・・・なんで今まで黙ってた?」


「先に言ってしまったらつまらんじゃろ?」


・・・納得してしまった俺がいる。


どうやら俺はガットたちを舐めていたようだ。モンスターの【眷属】を必死に探していたからてっきり【眷属】自体が居ないもんだと思っていたがそんなことはなかったらしい。先入観というヤツに囚われていたようだ。反省。


「今回のクエストにはコヤツラも参加させる予定じゃ。レベリングのためにな。そんでもってお主らがようやく【精霊】の【眷属】の存在を知ったんでお披露目に来たというわけじゃ」


・・・左様で。


まあ、とにかく、俺たちの装備が強力なのはコイツラのおかげらしいし、感謝しておかないとな。


当の【鍛冶の精霊】グラントと【衣服の精霊】クロースはと言えば・・・


「だう?」


「うー!」


「・・・」


アウルとルドラはグラントの頭をペシペシと叩いている。怖いもん無しか!お前ら!!当のグラントは静かに目を瞑ったままされるがままにされているが・・・後で謝っておこう。あと、アウルとルドラに人の頭を叩いてはいけません、と教えておかないとな。


「あい!」


「・・・」ニコッ


クロースは元気よく挨拶するミコトちゃんを抱きながらニコニコ笑っている。こっちは仲が良いな。そして非常に華やかだ。


どうやら【精霊】同士の仲は悪くは無いようだ。それは良いのだが・・・


こら、アウル、ルドラくん、いつまでペシペシしてんだ!

作者のやる気とテンションを上げる為に


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