農業計画
===移動===>エリア0 農業区画1
「畑ね」
「畑ですね」
「畑なのです」
「畑なのだ」
うん、どう見ても畑だ。・・・その確認いるか?
俺たちはそのまま、アスターたちの畑のある区画に来ていた。
ちなみにアスターたちが使っていた日本家屋型のホームはそのまま使用可能だ。ホーム持ち、がクランホーム持ちのクランに所属した場合、ホームを手放すかそのまま使用するか選択できる。アヴァンの場合は借り物のマンションイプだったので手放したが、こちらの方は手放す理由が特に無いのでそのままだ。本宅がクランホームでこっちが別荘兼農作業部屋といったところか。
それはそれとして畑には昨日種を植えたばかりなのに、もう芽が出ていて成長している様子が見て取れる。
「葉っぱというか雑草のようにも見えますが、白い草が【体力草】、黄色い草が【気力草】、赤い草が【魔力草】、青い草が【霊力草】になりますね。それぞれHPポーション、BPポーション、MPポーション、LPポーションになります。あと2日もすれば収穫できますよ」
「へぇ、これがそうなのね」
「初めて見ました」
みんな興味津々だ。今後は収穫の手伝いもすることになるだろうし、我がクランの回復アイテムの貴重な入手先にもなるのでしっかり見ておいて貰いたい。
「アスター、この規模だとどのくらいのポーションが作れるんだ?」
「そうですね・・・ミドルポーションだと各2本ずつ、ポーションだと各10本ずつと言った所でしょうか」
ミドルポーションは普通のポーションより効果が高い分、より多くの素材が必要になる。この規模を常に維持すると考えると、三日に2本ずつミドルポーションが確保できる計算になる。・・・メンバー全員に満遍なく配布するとなると数が足りないか?
「クランとして畑を拡張して行くんですよね?まずはどのくらいの広さと考えているんですか?」
「ざっと100倍かな」
「「「100倍!?」」」
現在が20m×20mの畑だから一気に200m×200mだな。ちょっとした学校のグラウンドくらいの広さであるが・・・
「正直、それでも足りないと思ってるがな。ポーション用の畑と食用の畑、最低でもクランのメンバーに満遍なく行き渡ることを考えるとなるとまだまだだ。・・・だが一度に拡張するつもりも無い」
「それはまたなんでっすか?」
「資金の問題もあるが、一番の問題は作業量だな。成長が早いとはいえ、種はミコトちゃんが作るし、畑を耕したり種を植えたりするのは人力だ。一度に大規模の畑を手に入れても、俺たちの手が回らない事は目に見えてる。普通大規模の畑となると、トラクターみたいな機械を導入するもんだが・・・」
俺はアヴァンを見る。
「うむ、そのような物は聞いた事が無いのだ。探せばレシピがあるかもしれないのだ」
とやる気になってくれるのは良いことなのだが・・・
「いや、機械の導入には別の問題が出てくることになる」
「別の問題、なのです?」
「【農業】スキルだ。スキルは当然、使わなければレベルが上がらない。機械作業は便利だろうが、【農業】レベルが上がらなければ効率も上がらないだろうし、畑で育てられる種類も増えないだろう」
「なるほど・・・機械の導入は【農業】スキルがある程度上がってから、ということですね?」
「そういうこと」
資金が必要なのは畑だけではないのだ。武器や防具、アイテム代などもかかる。後はアーニャの作る食材費、アヴァンの作る機械の材料費なども必要だ。・・・クランを運営するのって大変だな。
「お金の無駄遣いはしない・・・なんて事は言わない。ここはゲームの世界だからな。だからと言って無駄な事を推奨したいわけでもない。必要だと思った事にはどんどん使えば良いし、不要だと思えば使わない、それで良いと思う」
リアルだとそうもいかないのが世知辛い話だ。だからこそ、ゲームの中でまで世知辛いことは言いたくないのだ。
「・・・さて、場所も分かったし、【転移装置】の登録も済んだことだし、私達は【邪霊】とやらと戦いに行って来るわ」
アテナが皆を代表して言う。アテナと一緒に行くのは【邪霊】との戦闘経験が無いアルマ、アーニャ、アヴァン及びその【眷属】たちだ。今までと戦い方が違う【邪霊】と、緊急クエスト前に一度戦っておいて感覚を掴む為だ。
物理攻撃の効かない【邪霊】との戦いは、戦い方が制限されてしまう。幸いというべきか、俺が知っている限り、クランのメンバーの中で魔法攻撃が出来ない奴はいないはずだ。レオーネたちもブレスが有効だし、ラグマリアもエナジー系の武器なら効くからな。・・・あ、そういえば新参のテールだけ戦い方知らねぇや。まあ、アーニャはブランたちがフォローしてくれるだろう。
とにかく【邪霊】との戦い方は前もって慣れておいたほうが良いということだ。
「おう、行ってらー」
皆を見送る俺、アスター、アシュラとその【眷属】たち。
こっちはこっちで確認しておきたい事がある。
昨日仲間になったばかりのアウルとルドラくんのことだ。
「だう?」
「うー?」
うん、君達の事だよ。まずはステータスとスキルの確認だな。俺はアウルの、アシュラはルドラくんの確認だ。アスター?お前はちびっ子たちと遊んでろ。
・・・ふむ、ステータスはやっぱり低いな。Lv.1だから当たり前だが。もう少しレベルが上がらないとどういう感じに成長して行くのか分からないな。
そしてスキル。
待望の【精霊憑依】だが・・・使えるみたいだな。・・・0.1秒だけ。舐めとんのか。ま、まあこれもアウルのレベルが上がれば使用時間も延びるはずだ。
だが、効果の方が凄い。
【剣術】系スキルと【鎧術】系スキルの消費BPが0になるだと?制限時間内であればスキル使い放題じゃないか。
だったら、・・・ま、まさか・・・もしかして【勇天の一撃】も撃ち放題なのか!?・・・あ、駄目だ。【勇天の一撃】は消費したBPで攻撃力が決まるから消費0だと攻撃力0だ。
そもそも【勇天の一撃】って【剣術】系スキルだったっけ?俺は剣でしか使った事ないが、そんな縛りはなかった気が・・・おんやー?ここに来て【勇天の一撃】に新たな可能性が?というか俺が気が付かなかっただけか?・・・後で確認してみよう。
話が逸れた。アウルとの【精霊憑依】はかなり有効だ。今回の緊急クエストでは間に合わないだろうが、可及的速やかにアウルのレベリングを始めないとな。
他は・・・無いな。まあ、Lv.1だし・・・だがこの表示は何だ?【???】って何か隠されたスキルでもあるのか?潜在能力的な・・・
「アシュラ、そっちはどうだ?」
「すごいっすよ!ルドラとの【精霊憑依】すれば【体術】系スキルや【格闘】系スキルの消費BPが0になるっす!!今はまだLv.1ですんで大した時間は使えないっすが・・・」
ふむ、そっちも似たような感じか。どうやら武術系の【精霊】との【精霊憑依】は【精霊】の系統の武術スキルを補助する物らしいな。
「あと、よく分からんのが一つあるっす」
見てみるとルドラくんのステータスにも【???】が。
「・・・あ、それならミコトにもありますよ?」
アスターにミコトちゃんのステータスを見せてもらったが確かにあった。
「あい?」
「まう?」
「だーう!!」
・・・どうやらアウルたちにはまだまだ秘密があるようだ。
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