本日の教訓
「こちらはプレイヤーのアスターとその【眷属】のミコトちゃん」
「どうも」
「あい!」
普通に挨拶するアスターと元気に挨拶するミコトちゃん。アスターは元気成分が足りてないな。
「こっちはプレイヤーのアシュラとその【眷属】のルドラくん」
「よろしくっす!」
「まうー!!」
こっちは逆に元気が有り余ってるな。その元気を俺とアスターに分けて欲しい。
「で、アーテルの背中に乗ってるのが俺の新しい【眷属】のアウルだ」
「だう!!」
うむ、元気があって大変よろしい。さすが俺の【眷属】・・・あいだだだだだ!腕を締め上げるな、アテナ!アルマ!
「かわいいのですー・・・」
ちびっ子たちをうっとりした表情で見ているアーニャ。
「そこのドラゴンを連れてるのがアーニャ。白いドラゴンがブラン、黒いドラゴンがノワール、土色のドラゴンがテールだ」
「よろしくなのです」
「キュイー」
「キュアー」
「キュウー」
うむ、ブランたちも挨拶できて偉いぞ。ミコトちゃんたちもブランたちを怖がる様子は無いな。よしよし。
「ふむ、これが【精霊】なのだ?興味深いのだ・・・」
どこからか虫眼鏡を取り出しているアヴァン。意味あんのか?それ?
「そこの生意気そうなのがアヴァン、隣の毒舌がラグマリアだ」
「よろしくなのだ」
「ヨロシクオ願イ致シマス・・・毒舌トハドウイウコトデショウカ?」
・・・毒舌なのは意識していなかったのか、ラグマリア。でも主がディスられてもスルーしたよね?
「で、俺の右腕を捻りきろうとしているやばい顔の奴がアテナで、ドン引きしているライオンが【眷属】のレオーネ」
「だ、誰がやばい顔してるのよ!えっと、ヨロシクね?」
「がうー」
お前だお前。ミコトちゃんたちが可愛いのはわかるが、顔がだらしない。レオーネが引くのも無理は無い。
「俺の左腕を握りつぶそうとしている無表情がアルマ、ヤレヤレって感じで空から見てる鳥がフィオレだ」
「・・・そんなことしません。・・・宜しくお願いします」
「ピュイー」
クールな顔を装っているが、だらしない顔になりそうなのを必死に抑えているアルマ。挨拶がおざなりになっている。それに引き換えちゃんと挨拶が出来ているフィオレは良い子だ。
以上、まとまりの無い【アークガルド】のクランメンバーである。
ラングたち?ヤツラは余所のクランだ。自己紹介は自分でやれ。
「・・・よくそんな状態で冷静に紹介できるっすね?」
・・・冷静ではないよ?俺の両腕を押さえ込んでる奴らが、やばい目でちびっ子たちを見てるから防波堤になろうとしているだけだよ?・・・俺の両腕は二人が平静を保つ為の犠牲となったのだ・・・
「そんな状態で紹介されてもリアクションに困るんですが・・・」
うん、俺も現在進行形で困ってるんだよ。出来れば助けて欲しい。
「それで、どうしてこんな裁判みたいな事になっているんですか?」
「ああ、それが実は・・・」
「リーダー・アルクノ二股疑惑ヲ追求シテイタノデス」
「ラグマリア!?」
「「なるほど」っす」
「納得するなよ!?」
いかん、どんどん濡れ衣が増えていく!俺が一体誰と誰を二股かけたって言うんだ!!ラグマリアめ・・・俺が毒舌って言ったのを根に持ってるな?だが図らずしも自らが証明してしまっているぞ?
「・・・証人が来た所で審議を進めようか?」
「・・・なんだラング、まだいたのか・・・あいだだだだだ」
「ドサクサで誤魔化そうとしてもそうはいかないんだよ?」
アイアンクローで俺を責めるラング。・・・フッお見通しだったか・・・
「とはいえ、【アークガルド】に新しいメンバーが加わったんだ。アルクなんかより、お祝いが先だよね?」
・・・お?流れが変わった・・・なんかってなんだ、この野郎。
「だから簡潔に聞こうか、【精霊界】でアルクと行動を共にしてたのは君達?」
「え?ええ、そうですね。偶然助けてもらって情報を交換し合って、協力してクエストに行きました」
ラングの謎の迫力に怖気づいてぺらぺら喋ってしまうアスター。しかし、アイアンクローを食らっている俺には何も出来ないのであった。
「そうかそうか・・・所でアルクに【精霊界】産の野菜とかを分けなかった?確か【精霊キャベツ】と・・・」
「ええ、【精霊イチゴ】を分けましたけど・・・」
「・・・」
「・・・」
・・・アスターはラングのかまかけにまんまと引っかかってしまった。
「有罪ね」
「ギルティですね」
・・・ばれちった。
・・・
再び証言台に引き戻される俺。今度はアスターたちも傍聴席に座っている。
「・・・さて、被告人、最後に言い残す事はあるかい?」
・・・ああ、もう最後なんですね?
「・・・そうだな。・・・なら【剣鎧の精霊】とシークレットクエストの情報を・・・」
「被告人、無罪!!」
声たからかに俺の無罪を宣言するラング。
「「ええ!?」」
逆転無罪に驚くアテナとアルマ。
「リーダー!?」
何言ってんだコイツと言う感じでラングを見るロゼさん。フッ、付き合いの長い俺にはコイツが何に飛びつくかわかってんだよ。
あまりの急展開に傍聴席でもざわざわしている。
「ほう、我の作った装備が役に立ったか」
「ええ、それに・・・」
「このドラゴンちゃんたち、親近感わくっすねー」
「【竜人】さんには初めて会ったのです」
ゴメン、してなかったわ。というかこっちに興味なしだったわ。
「やはり争いは良くないよね。話し合いで解決が出来るのならそれが一番だよね」
白々しいラングのセリフ。当然、この場の誰もそんな言葉を信じていない。
「リーダー!忙しい時期に情報を押し付けられるのが嫌だったのではないのですか!?」
ロゼさんが怒り気味にラングに詰め寄る。確かにさっきと言っている事が違うよな。だが・・・
「いや?情報クランが情報提供を拒んでどうするんだい?僕がさっき言った事は、アルクが情報を隠そうとしたんじゃないかと思ってかまかけただけだよ?」
つまりブラフである。ラングは俺の言葉ではなく、俺の反応から情報を持っているかどうかを確認する為に、わざとあんな事を言ったのだ。面倒な奴である。
「それに僕が本命で知りたかった食材関係はそっちの二人が出所だったみたいだけど、二人が【アークガルド】に所属するのなら、結局今までどおりって事だしね」
あ、本命はそっちだったか・・・その言葉の裏にはアーニャの料理のように僕達にも融通してくれるよね?という言葉が含まれているよな。やれやれだ。
ロゼさんが頭を抱えている。味方には説明しておけば良いのに。
そしてアテナとアルマは予想外の事態に呆然としている。今がチャンスか!?と思ったが、いまだに俺の腕ががっちり掴まれてるんだよね。良い加減、離して欲しい。
「・・・【精霊イチゴ】」
ボソッとアテナが呟いた。
「はい?」
なんだと思ったら今度はアルマが呟いた。
「・・・【精霊イチゴ】はおいしかったですか?」
「それは勿論・・・」
・・・ここで嘘を言えない俺は正直者だな。うん。
「・・・そうなんだ。それで?」
「・・・もちろん、私達にも食べさせてくれるんですよね?」
・・・ステレオで話しかけてこないでほしいんだが。怖いし話しにくい。
「勿論でございますよ、お嬢様方」
「「よろしい」」
こうしてようやく俺の腕は解放された。
・・・腕が痺れて動かないんだが・・・
「アーニャも食べたいのです!」
「無論、我々の分も用意してくれるのだ?アルク?」
「勿論だ・・・だよな?アスター?」
俺はすがるような目で作成者のアスターを見る。
「ハハハハ、勿論ですよ」
良かった。祈りは天に・・・ではなくアスターに通じた。
「・・・おっかない二人っすねー」
おい、本人たちに聞こえるぞ、アシュラ。
本日の教訓。
女は怖い。
食べ物の恨みは恐ろしい。
以上である。
・・・
「やれやれ、アテナもアルマも何をそんなに怒っていたのだ?」
「きっとお二人はアルクさんが居なくて寂しかったのです」
「?そんなに長い時間は離れていないのだ。数時間前には会っていたのだ」
「実際には数時間でも、乙女には何週間にも感じるのです!」
「・・・ふーむ、よくわからないのだ・・・」
「マスターハ、オ子チャマデスネ」
「うっさいのだ!お前には分かるのだ!?」
「・・・アンドロイドデスノデ」
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