愉快な仲間たち
===移動===>エリア0 農業区画1
「やっと戻ってこれたっすねー」
「たった数時間のはずなんだけどもう何週間も経ったような気がするよ」
おいおいアスター、何言ってんだよ。そんなわけ無いだろ?・・・と思うのに共感できてしまうのは何故だ。
「あーいーいー!」
「うー!」
「だうー!!」
ミコトちゃんを中心にちびっ子達が駆けて行く。元気だね君ら。対してお疲れ気味の主たちは家屋に入って一息つく。若さが足りない?ほっといてくれ。
「ようやく一息つけたな。それぞれ目的も達成できたわけだし、成果としては大成功と言って良いだろうな」
最後に余計なのもついてきたが。
「そうっす!これもアニキとアスターのおかげっす!!」
お、アシュラ。俺だけじゃなくアスターにもちゃんと感謝してるんだな。えらいぞ。親しき仲にも礼儀あり、感謝の言葉を忘れちゃいけないってやつだな。
「僕は少し手伝っただけでほとんどアルクさんのおかげだよ」
うんうん、感謝の眼差しと言葉は大変心地よいが、俺が話したいのはそんな事じゃない。
「うむ、そんな二人に話したいことがあるんだ。まずはこれを見てくれ」
そう言って俺は【収納箱】の中から目的のブツを取り出す。
「こ、これは・・・」
「いったい・・・」
二人は期待と困惑の眼差しでブツを見ている。
「あいー」
「うー」
「だうー」
いつの間にかやってきていたミコトちゃん、ルドラくん、アウルも同じくブツに釘付けだ。・・・よだれ出てるぞ。拭きなさい。
「コイツはやばいぜ~。なんせ一口食えば昇天しちまうっていうとんでもない代物だ!」
ごくり、と誰かの喉が鳴った。いや、誰か、ではなくこの場の全員かもしれない。
「ククク・・・欲しいか?」
「欲しいっす!」
「是非!」
「あい!」
「うー!」
「だう!」
ククク・・・みんなコイツに夢中だな。仕方ない、それだけのブツだからな。
「勿論、くれてやるのも吝かではない。だが、それにはこちらの条件を飲んでもらおう」
「条件?」
「なんなんすか?それは!じらさないで欲しいっすアニキ!!」
「ククク・・・なーに、難しい事じゃない。コイツが欲しければ・・・我が軍門に下れい!!」
「「ハハー!!」」
こうして俺たちは我が軍門に下った配下たちと共に【ヤマタノオロチ】のから揚げを貪る様に食らうのであった。
「・・・クルー?」
「邪魔シテハイケマセン。時ニハコウイッタ茶番モ必要ダト、マスターアテナガ言ッテイマシタ」
・・・アテナの野郎、後でとっちめてやる。
・・・
「で、結局のところ、アルクさんのクランに入れってことですよね?」
たらふくから揚げを食って(ついでに昇天しかけて)ようやく落ち着いた所で冷静に話をする事にした。
「ボクは異存は無いっすよ!アニキのいるクランならきっと凄い所っす!!」
凄い?かどうかはわからんな。どちらにせよから揚げ食いまくったお前達に拒否権は無いがな。ククク・・・すまん、冗談だ。だからアシュラ、お前はもっとよく考えようよ。
「僕もですが・・・その前にいくつか質問しても良いですか?」
「うむ、良かろう」
偉そうに答える俺。・・・ちょっと恥ずかしくなってきたのは内緒である。
「まずアルクさんのクランは何を目的としたクランなんですか?」
おっと直球な質問だな。当たり前の質問でもあるが・・・これまであんまり質問された事が無いな?なんでだろう?
「俺たちのクラン・・・【アークガルド】の目的は・・・特に無い。強いて言えば、各自でご自由にって感じだな。協力が必要なら声をかけるが無理強いはしない、個人のやりたい事が優先だな」
・・・自分で言っててなんだが適当なクランだな。
「各自で自由って事は僕たちもこれまで通り農業を続けられるってことですね?それは一安心です。ノルマみたいな物は?」
「ねぇよ、そんなモン。協力って言ったろ?強制はしねぇよ。メンバーの誰かがアスターの畑の野菜が欲しいって言ったら、あげようが断ろうが対価を求めようがアスターの自由だ」
「・・・それはリーダーのアルクさんに対しても、ですか?」
「勿論だ。ただし、協力っていうのはアスターからするのも含まれてるからな?例えばメンバーを畑を耕すのに借り出したくせに作った野菜は渡さない、なんてのは駄目だぞ?」
手伝わせるだけ手伝わせて、要らなくなったらポイッなんてことは許されない。世の中ギブアンドテイク、持ちつ持たれつ、情けは人の為ならず、労働の対価は正当な報酬で、が決まりです。
「さすがにそんな横着な事はしませんよ。ですが大体分かりました。・・・ちなみにメンバーは何人くらいいますか?」
「俺を含めてプレイヤーは5人だな。【眷属】はもっといるけどな。ちなみにクランのメンバーが【アークガルド】に入っている理由のひとつは、他のクランからの勧誘がうざいからっていうのもある」
アスターたちも勧誘されたことがあるらしいし、その辺りのめんどくささは分かるだろう。そして、そういった面倒な思いをしたプレイヤーが入れるくらい気楽なクランって言う事もわかってくれたと思う。
「なるほど。僕たちにとっては好条件ですね・・・では最後に・・・本当に僕たちが必要なんですか?」
・・・最後にシリアスな質問が来たな。これはさすがに真面目に答えないといけないな。
「・・・俺たちにとっては必要かどうかが問題なんじゃない。一緒にゲームを楽しめるかどうかが問題だ。ゲームを楽しめると思ったからこそお前らを誘ってるし、お前らが楽しくないと思ったのならクランを抜けてもらっても構わないぞ?」
ここはゲームの世界だ。
なにより自分が楽しめる事が第一のはずだ。まあ、他のプレイヤーに迷惑をかけない範囲で、だが。
仕事や義務や責任感で一緒に居る必要はない世界なんだ。
「・・・随分、ゆるい感じなんですね?」
「うちのクランのモットーは適当な自由、だからな!!」
今考えたモットーだけど。
「・・・わかりました。そういうことなら喜んで」
「宜しくお願いするっす!アニキ!!」
・・・フー、どうやら上手くまとまったようだ。
これで【精霊界】の極上の野菜たちを・・・ククククク。
「よし、そうと決まれば早速【アークガルド】のクランホームに案内・・・あいつらどこ行った?」
いつの間にか、ミコトちゃん、ルドラくん、アウル、そしてアーテルまで居なくなっていた。カイザーはここに居るが・・・
「オニゴッコダソウデス」
「・・・」
「・・・」
「楽しそうっすねー」
・・・なんて落ち着きの無いヤツラなんだ。子供だから仕方が無いのか?
この後、俺たちは10分ほど時間をかけて家屋内の様々な場所に隠れていたアウルたちを確保してクランホームへと向かった。・・・見つかったんなら逃げずにおとなしく捕まって欲しかったぜ。
===移動===>【アークガルド】クランホーム
「・・・」
「・・・」
「・・・」
カンカン。
「皆さん静粛に」
・・・なぜか高い場所に座って机を木槌のような物でカンカン叩くラング。誰も喋ってねぇよ。
「ではこれより審問会を開始します」
・・・何言ってんだ?こいつ?
「おい、放せよ。アテナ、アルマ」
「駄目よ」
「逃がしません」
・・・逃げる間もなく捕まった俺がいる。
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