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俺たちの力

音が消えた。


目に映る【剣鎧の精霊】、そしてアーテル、カイザーの動きがスロー再生しているかのようなゆっくりとした動きになる。


そんなスローな世界で、俺は()()()()()()スピードで駆けていく。


いや、いつも通りではないか。普通に走っているつもりでも、自分の感覚以上に足が動いていて、自分の予想以上の距離を進んでいる。


とんでもない速さで自分の体が動いているのがわかるのに、何故か体が重く、上手く体を動かせないと錯覚してしまう。


原因は分かっている。


体の動きに感覚が追いついていないんだ。


韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】の効果は単純だ。【俊天の疾走(アーク・アクセル)】の倍のMPを消費する代わりに、【俊天の疾走(アーク・アクセル)】の倍のスピードで動けるようになるスキルだ。


単純に倍になっただけでは大差無いと思われるかもしれない。実際、俺も最初はそう思っていた。


しかし、実際に試して見ると雲泥の差があった。


スローモーションな世界でいつも通りに動かしているつもりでも、実際には自分の感覚より先に体が勝手に動いてしまう。一歩踏み出そうと足を上げたと思ったときには既に足を踏み出し終えてしまっている。腕を上方向に上げようと思ったときには既に腕が上がっている。


頭の中で、この動作をしよう、と思った次の瞬間には既にその動作をやり終えていて次の動作待ちの状態になる。最初にこのスキルを試した時には、体の動作と感覚のずれにより歩くことすらままならなかった。


何度か練習するうちの大分慣れてきたのだが、まだ完全ではない。いまだにスキルに振り回され気味だ。


韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】を開戦時から使わなかった理由はそこにある。無論、MPの消費が倍になったという事は、スキルの発動時間は【俊天の疾走(アーク・アクセル)】の半分しかないのも理由の一つではあるのだが、使いこなせないスキルを使っても自爆する可能性が高い、という理由が大きい。


しかし、今はそんな悠長な事は言っていられない。一か八かになるが、今はこのスキルに賭けるしかない。・・・分の悪い賭けは嫌いじゃないってな。


スローモーションな世界を一気に駆け抜け、あっと言う間に【剣鎧の精霊】に近づいて行く。丁度、アーテルとカイザーが距離を取ったところで間に割って入り、【豪剣アディオン】を振り下ろす。


このまま【剣鎧の精霊】は反応すら出来ず、俺の一撃を受ける・・・はずだった。


ガキィィィン!!


俺の【豪剣アディオン】を自身の大剣で受け止める【剣鎧の精霊】。


スローな動きをしていたはずの【剣鎧の精霊】は突如として、()()()()()()()()()()()()。周囲は相変らずスローモーションの世界にも関わらず、だ。


やはりな。


それが俺の感想だ。


最初、俺の【俊天の疾走(アーク・アクセル)】でも見切れないスピードで俺の背後にまわった【剣鎧の精霊】だったが、その超スピードを見せたのはあの時だけだった。常時あのスピードで動かれていたら俺たちはあっという間に全滅していただろう。


にも関わらず今の今まで、そこそこ早い程度のスピードしか出していなかった。そして今、()()スピードが上がり、超加速中の俺に追いついてきた。


つまり、だ。


【剣鎧の精霊】も俺の【俊天の疾走(アーク・アクセル)】、いや【韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】と同等の加速スキルを使ったってことだ。


「【ミーティアルスラッシュ】!!」


剣と剣がぶつかり合う。超加速した世界の中で、さらに高速剣技を使っても【剣鎧の精霊】は食いついてくる。ぶつかり合った時に生じた火花すら遅く感じるこの世界で俺と【剣鎧の精霊】はひたすらに剣をぶつけ合う。


俺の感覚では数分は打ち合っていたように思えるのだが、外野から見たらわずか数秒の出来事なんだろう。その間に何十回、剣を打ち合ったのか・・・


【剣鎧の精霊】は間違いなく俺より強い。パワーもスピードも【剣術】スキルも剣も鎧も俺より上だ。


だからこそ、()()()()()()()


【剣鎧の精霊】は今、【ガティアス】に取り憑かれ、本能のままに暴れているに過ぎない。理性的な判断ができず、効果的なタイミングでのスキル使用も無く、戦いの駆け引きも行えていない。先日、アシュラにも似たようなことを言ったが、それではただ、力を振り回しているだけだ。


・・・まあ、それでも俺たちは追い込まれているわけだが。


本能に任せて力を振るうのも戦い方の一つではあると思う。しかし、それが全てではないはずだ。だからこそ、人間には【剣術】という()()があるのだと思う。


技術というのは本能で扱うものではない。理性によって扱われ鍛錬によって培われるものだ。


この【剣鎧の精霊】は確かに強い。しかし、今の状態が【剣鎧の精霊】の力の全てではないと思う。


はっきり言って【ガティアス】が邪魔なのだ。


だから・・・


「今は倒させてもらう!()()()()()()!!【バックステップ】!!」


俺は超速で後方に下がり、【剣鎧の精霊】から距離を取る。そんな俺を【剣鎧の精霊】はスキルも使わず追いかけてくる。


「【シンクロ】スキル発動!【シャイニングレーザーダイブ】!!!」


【シンクロ】スキルは【眷属】の持つスキルを一時的に使えるようなスキルだ。そして俺が使ったのはアーテルが今の今まで使わずに隠し続けてきたとっておきのスキル!


光を纏い、【レーザーダイブ】よりも速く、強力な突進を行うスキルだ!


加速した世界の中で、さらにスピードを付けて突進して行く俺。真っ直ぐ直進するだけならスキルに不慣れな俺でも問題ない!


対する【剣鎧の精霊】は足を止め、剣を構える。


・・・迎え撃つ気か・・・ならば真っ向勝負!!


「【勇天の一撃(アーク・ストラッシュ)】!!!」


【剣鎧の精霊】が構えた大剣に向かって渾身の一撃を放つ。


ビシビシビシッ!!


・・・【豪剣アディオン】にヒビが入る。だが・・・


「うらああああああ!!!!」


それでも【豪剣アディオン】にさらに力を込める。そして・・・


バキィィィン!!!


・・・砕いた・・・【剣鎧の精霊】の大剣を。


そのままの勢いで、【剣鎧の精霊】の鎧にも打ち込む。


【豪剣アディオン】は【剣鎧の精霊】の肩部分にめり込んだ。が、倒すまでには到っていない!!


「まだだ!!【グランディスバンカー】セット!!」


アヴァンが()()()()()()に作成した【グランディスバンカー】を右腕に装着。


「おりゃあああ!!」


そのまま、【剣鎧の精霊】の顔面に打ち込む。


バキィィィンッ!


と、【剣鎧の精霊】の顔を覆っていた兜が砕け散った。

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