切り札は使うべき時に
「クルー!!」
まずはアーテルが【レーザーダイブ】で突進して行く。対する【剣鎧の精霊】も迎え撃つべく大剣を構える。が、当然、その大剣でアーテルを斬らせるわけには行かない。
「【俊天の疾走】!!」
突進していったアーテルを追い抜いて、【剣鎧の精霊】に【豪剣アディオン】を振り下ろす。虚を突いた攻撃のつもりだったが、【剣鎧の精霊】には受け止められてしまった。しかし、これで大剣は封じた。
ドンッ!!
と、突進してきたアーテルの【レーザーダイブ】の直撃を受け、吹っ飛ぶ【剣鎧の精霊】。その吹っ飛ばされた先にいたのは・・・
「【グランディスバンカー】!アクティブ」
左腕に装着したもう一つのバンカーを装着したカイザーが既に待ち構えていた。既に攻撃態勢を整えていたカイザーに対し、【剣鎧の精霊】は空中で体勢を立て直し、大剣をカイザーに向ける。このままでは最初の時のように腕ごと切り落とされてしまう。が・・・
「【結晶の刺突】!!」
【剣鎧の精霊】の真下の地面から、結晶できた巨大なトゲが盛り上がり、【剣鎧の精霊】に突き刺さる。腹の辺りに突き刺さったようだが、あの硬い鎧の前ではやはり効果が無かった様でトゲの先っぽが砕けてしまった。・・・だが、【剣鎧の精霊】の体勢を崩すには十分だ。
「クラッシュ!!」
その隙を逃さず、【剣鎧の精霊】にバンカーを打ち込むカイザー。しかし、【剣鎧の精霊】は咄嗟に大剣を盾にしてそれを受け止めてしまった。不安定な体勢でもカイザーの一撃を耐えるとはさすがだ。しかし、そこに・・・
「【勇天の一撃】!!」
【俊天の疾走】で追いついた俺が、【剣鎧の精霊】の無防備なった背後に最強の一撃を加える。
ガキィィィン!!
というとんでもなく硬い物がぶつかった音と共に、【剣鎧の精霊】は再度吹っ飛ばされ、部屋の壁に叩きつけられた。
「【グランディスガトリングガン】斉射!!」
「クルー!!」
カイザーのガトリングとアーテルの【シャイニングフェザーインパクト】でさらに追撃を行い、その間にポーションで回復を図る。BPをある程度回復させた所で、今度は無数の斬撃が飛んできた。あれで倒せたとは思わなかったが、まだまだ元気なようだ。
飛んできた鋭い斬撃を俺は【俊天の疾走】で避けたが、アーテルとカイザーは被弾し、負傷してしまった。幸い、戦闘不能には陥っていないようだが・・・このままでは駄目だ。
俺は斬撃を避けながら【剣鎧の精霊】に突進して行く。
「【マキシマムスラッシュ】!!」
【豪剣アディオン】の一撃を【剣鎧の精霊】は大剣で受け止めた。ダメージは与えられなかったが、斬撃を止める事はできた。さらに・・・
「【一刀突き】!!」
【豪剣アディオン】を右手一本に持ち直し、左手で【妖刀オロチ】を抜き放ち、突く。狙うのは・・・
「・・・」
「・・・喉を突かれたら、少しは痛がれよ」
鎧の隙間であり、鎧越しであろうと受ければ痛いはずの喉元に突き刺したはずなのだが、【剣鎧の精霊】はまったく堪えていなかった。貫通効果で確実にダメージを負っているはずなのに・・・
次の動きは【剣鎧の精霊】の方が早かった。【豪剣アディオン】が奴の大剣に弾かれてしまった!剣が俺の手を離れ、少し離れた場所に突き刺さる。やはり、片手持ちではきつかったか!
しかし、拾いに行く余裕も無く【剣鎧の精霊】は俺を斬ろうと大剣を上段に構える。
「させるか!【ミーティアルスラッシュ】!!」
【霊刀ムラクモ】も抜き、両手で【上級剣術】最速の剣技で【剣鎧の精霊】に切りかかる。しかし、俺の刀はやつの鎧を突破する事はできず、大量の火花を散らせるだけだった。そして、俺の攻撃を気にする様子も無く【剣鎧の精霊】は大剣を振り下ろした!!
「チイィッ!!」
刀の破壊を防ぐ為、両手に持った刀を離し、両腕を頭上で交差させる。さらに・・・
「【結晶の盾】!!」
頭上に結晶の盾を出現させる。だが・・・
ガキィィィン!!
という硬い物がぶつかる音が再度響き渡る。ただし、今度は【剣鎧の精霊】の大剣が俺の【攻鎧アルドギア】にぶつかる音だ。
「・・・!!!」
【結晶の盾】はあっけなく破壊され、俺の両腕にすさまじい衝撃が降りかかる。
思わず片膝をついてしまう。
まずい・・・このまま真っ二つにされてしまいそうだ・・・だが!!
「クラッシュ!!」
修復を終えたカイザーが【剣鎧の精霊】の真横からバンカーを食らわせた。【剣鎧の精霊】を弾き飛ばし、そこに・・・
「クルー!!」
回復したアーテルが【レーザーダイブ】で追撃していく。カイザーもそれに続く。
・・・正直、助かった・・・だが・・・
ピシピシピシッ!!
・・・【攻鎧アルドギア】にヒビが入った。損傷度が一定量を超えた証拠だ。完全破壊まではまだ余裕はあるが、あの大剣の一撃をあと数発、まともに食らったらやばい。
俺はすぐさま、剣と刀二本を拾いなおすとすぐさま、ポーションで回復を図る。・・・これまでで一番ポーションの消耗が早いな。オマケに回復の時間を稼ぐのにも命懸けの綱渡りときた。体を張って時間を稼ぐのにも限界がある。俺は勿論だが、アーテルとカイザー、どちらか一方でも戦闘不能になったら・・・詰む。
俺たちが先に音を上げるか、先に奴を倒せるかの勝負だな。
・・・やれやれだ。
「【俊天の疾走】!!」
俺は再度、【剣鎧の精霊】に向かって突撃していった。
・・・
「・・・もう目で追うどころか、何がどうなってるのかまるで分からないんだけど・・・」
「あいー!!」
「うー!!」
「・・・興奮してる所悪いんだけど、見えてるの?君達・・・あ、もしかして応援?」
「あいッ!!」
「まうッ!!」
「・・・そうだね。見えないって不貞腐れてるくらいなら応援していた方が百倍マシだよね」
「・・・すごいっす。ボクの時と全然違うっす」
「・・・仕方無いっていうのは嫌だけど仕方が無いんじゃないかな。文字通りレベルが違うよ。アルクさんだけじゃなく、その【眷属】たちも、ね」
「・・・絶対、追いついて見せるっす!」
「・・・そうだね」
・・・
これでもかと言うくらい攻撃を続けた結果、徐々にだが【剣鎧の精霊】もダメージを表に出し始めていた。黄金の剣と鎧には既に無数の傷が刻まれており、【剣鎧の精霊】を覆っていた禍々しいオーラも弱まって、疲弊していることは確実だ。・・・それでも両の足で堂々と立っているのは剣士としての矜持なのか、もしくは意地か、プライドか。
しかし、疲弊しているのはこちらも同じだ。
【剣鎧の精霊】はそう簡単に回復の暇を与えてはくれない。回復する素振りを見せれば、直ぐに斬りかかって来る。常に誰かが【剣鎧の精霊】を足止めして初めて短時間だけ時間を稼ぐ事が出来るのだ。
それでも回復が追いつかず、こちらも徐々に消耗していっている。
・・・このペースじゃあ、こちらが先に力尽きるな。
今もアーテルとカイザーが懸命に【剣鎧の精霊】を攻撃しているが二人もそろそろ限界のはずだ。
・・・もう、余裕も余力も無い。ここは一気に勝負をかけるべきだな。
と、いうわけで俺は切り札を一つ、切ることにした。・・・正直な所、まだ慣れていないんだが、そうも言ってられない。
見せてやろう、進化した【俊天の疾走】を。
「【韋駄天の俊走】!!!」
勝負だ、【剣鎧の精霊】!
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