剣鎧の精霊
「と、いうわけでお前らは見学な」
アスターとアシュラに言う。ミコトちゃんとルドラくんはいわずもがな。
「・・・まあ、僕たちの時はアルクさんたちは見学してましたけど・・・本当に良いんですか?」
「そうっすよ!お手伝いするっすよ!?」
二人はそう言うが、さすがに、そういうわけにも行かない。
「・・・お前らの時は見学してたのに、自分たちの時は手伝えっていうのは筋が通らないだろ?俺たちだけで行くさ。・・・それにルドラくんを【剣鎧の精霊】と戦わせるわけにはいかないだろ」
「う?」
・・・ルドラくん、シャドーボクシングしているところ悪いんだが、君は戦わせないって話をしているんだよ?
「・・・そこまでルドラのことを・・・さすがっす!アニキ!!」
アシュラは何故か感動している・・・案外チョロいなこいつ。
「・・・わかりました。・・・レベル差を考えたら足手まといになる可能性もありますからね」
アスターは冷静だな。ルドラくんはまだLv.1だし、戦力としては厳しいだろう。
「・・・さて、行くぞ。アーテル、カイザー」
「クルッ!!」
「了解デス」
俺はクソ重てぇ扉を開け中へと入っていった。
・・・
・・・中の部屋は【拳武の精霊】がいた部屋よりもさらに広い空間だった。そしてこれまで以上にボロボロだった。これは経年劣化による物じゃないな。なんか狂暴な奴が暴れまわったような感じだ。
その狂暴な奴・・・【剣鎧の精霊】は部屋の中央で仁王立ち中だ。近づいていくと分かるが、俺と体格はほとんど同じだ。全身が黄金の鎧に包まれ、黄金の大剣を携えている。見た目を一言で言うなら黄金の騎士、といったところか。
ただし、美しく輝いていたであろう鎧も剣も、今は禍々しいオーラをは立っていて不気味に輝いている。狂暴で凶悪で禍々しい姿に変えてしまうのは【ガティアス】の特徴であり、厄介な点でもある。
アスターたちも端っこのほうに寄っていったし、さっそく行ってみようか。
アーテルとカイザーを引き連れ、中央の【剣鎧の精霊】に近寄っていく。・・・と。
「!?」
【剣鎧の精霊】は大剣を構えながらいきなり突進してきた。こちらには気が付いていたとは思うが、いきなりすぎる。やはり、あの【剣鎧の精霊】は正気ではないのか・・・そして、その【剣鎧の精霊】の標的は・・・俺。
「マスター!!」
迎え撃とうとする俺の前にカイザーが割り込む。
「【グランディスバンカー】!アクティブ・・・クラッシュ!!」
【剣鎧の精霊】が振り下ろした大剣とカイザーの腕に装着されたパイルバンカーがぶつかり合う。その結果は・・・
「・・・ッ!!!」
カイザーが吹き飛ばされた。完全に力負けしている。バンカーごとカイザーの右腕が切り落とされた。
「クルー!!!」
続いてアーテルの【レーザーブレス】がさく裂する。大剣を振り下ろした所をうまく狙い、【剣鎧の精霊】は身動きもできず直撃を受ける。・・・だが・・・
「クルッ!?」
まるで意に介さず、傷一つないまま【剣鎧の精霊】は大剣を俺に向かって振り下ろす。その大剣を【豪剣アディオン】で受け止める。
「・・・!」
「グググ・・・!!」
・・・完全に力負けしてやがる。真正面からぶつかり合うのは厳しいな。なら・・・
「【俊天の疾走】!!」
大剣を捌きつつ、高速で移動して【剣鎧の精霊】の背後に立つ。
「【バスタースラ・・・なに!?」
消えただと!?・・・いや違う!
「クルー!!」
俺の背後から迫ってきていた大剣を間一髪でアーテルが助けてくれた。そのままアーテルの背中に乗り、空中へ逃れる。
「すまん、アーテル。助かった」
「クルー・・・」
まさかこの俺が背後を取られるとは・・・しかもあの動き・・・【俊天の疾走】を発動中の俺が見失ったってことは、アイツは【俊天の疾走】以上のスピードを出せるっていうのか?
・・・パワーでもスピードでも負けてるっていうのか、クソッ!!
「クルー!!」
アーテルの叫びで我に返ると目の前には【剣鎧の精霊】が!?
ガキィィィン!!
と【豪剣アディオン】で大剣を受け止めたが、止めきれず俺とアーテルは地面に叩きつけられた。
「クルッ!!」
「うぐっ!!・・・くそっ!【空歩】か!!」
【空歩】というのは空中に足場を作るスキルだ。あいにく【剣鎧の精霊】が喋らないので、合っているかどうかは分からないが・・・空中まで追いかけてくるとは・・・
そして【剣鎧の精霊】は容赦なく俺たちを追撃してくる・・・
「【グランディスガトリングガン】斉射!!」
初っ端からやられていたカイザーだったが、右腕を修復してガトリングを連射して【剣鎧の精霊】を足止めする。当の【剣鎧の精霊】は大剣を盾にして防御している。
「【グランディスマグナム】バスターモード!・・・シュート!!」
俺も【グランディスマグナム】をバスターモードにして攻撃を仕掛ける。
閃光が【剣鎧の精霊】を包み込み爆発する。
「・・・」
ここでやったか!?とか言うとフラグが立ちそうだな。
「クルー・・・」
「マスター・・・」
「二人とも大丈夫か?」
今のうちにアーテルとカイザーに合流する。正直、二人がいなかったらやばかった。
「クルッ!」
「修復率80%・・・問題ありません」
二人とも大丈夫のようだ。と思いつつもアーテルに【回復魔法】をかけておく。先は長そうだしね。
カイザーはナノマシンによる自己修復機能があるので問題ない。・・・便利だな。だが、俺も欲しいとか言ってしまうと俺が改造人間になってしまうので言わないでおく。
「・・・ねぇアシュラ。今の戦い・・・僕、目で追いかけきれなかったんだけど・・・」
「黙ってるっすよアスター!今、集中して見てるんすから!!」
「・・・ああ、アシュラもそんな感じなんだね?」
「あい!」
「うー!」
「うん、君たちには聞いてないからね」
・・・なにやら外野がごちゃごちゃ言っているが気にかけている余裕はない。
そろそろ爆煙が晴れることだからな。
煙の中から姿を表した【剣鎧の精霊】はと言うと・・・
「・・・せめて焦げ跡くらい付いていて欲しかったな」
姿を表した【剣鎧の精霊】は、見た目まったくの無傷だった。まったくダメージが無いという事は無いと思うが・・・無いと思いたい。
「・・・目標ノ装備ハマスターノ【豪剣アディオン】ヤ【攻鎧アルドギア】ト同等以上ノ性能ト思ワレマス」
・・・うん、俺もそうじゃ無いかとは思っていたが・・・できれば聞きたくなかった・・・
まったく強力な装備で力押ししてくるとはなんてずっこいんだ!!(特大のブーメラン)
【剣鎧の精霊】は相変わらず凶悪そうなオーラを放ちながらこちらを睨んできている。・・・兜で顔隠してるから目なんて見えないんだけどね。
「とにかく真正面から戦うのがきついならなんとか弱点を探すしか無いな。二人とも援護よろしく」
「クルー!」
「了解デス」
さて俺も早速試してみようか。こんなこともあろうかと新しく取得しておいたスキルをな。




