生まれ変わった姿
「かわいいっすー!!」
「まーうー♪」
アシュラが可愛らしい男の子を抱き上げてクルクル回っている。・・・いやいや。
「ホワイ?」
なんで幼児化したんだ?てっきりあの激強なあの姿のまま【眷属】になるのかと思ったのに・・・
「【精霊】と【契約】を結んだ時の姿はどうも、そのままの姿の場合と姿が変わる場合があるようなんですよ。前者は通常の【精霊】、後者は特殊なタイプ・・・【ユニーク精霊】だとそうなるみたいですね。ちなみにミコトも【ユニーク精霊】です」
「あい?」
・・・ふむ、そういえばアーテルたちも【眷属】化する前の元のモンスターとは姿が違ったな。【成体化】すればかなり近い姿になるんだが・・・ということはあのちっこい男の子や、可愛らしく首を傾げているミコトちゃんも【成体化】のようなスキルをこれから覚えるのかもしれんな。
実際、当の男の子は先ほどまで暴れに暴れまわっていた【拳武の精霊】の面影がある。短髪の黒髪に黒目(この子の目元はちゃんと確認できた)、着ている服も【拳武の精霊】の着ていた武道服を子供サイズにまで小さくしたような感じだ。ミコトちゃんと同じく幼稚園児並みの幼さでアシュラの腕の中でよく笑っている。
・・・唯一、男の子の雰囲気と先ほどまでの【拳武の精霊】の雰囲気が一致しないな。今の男の子は本当に楽しそうに笑っていて、先ほどまでの、どことなく哀愁すら漂ってきそうな漢の雰囲気が感じられない。・・・いや、あの幼さで哀愁なんて出されたらそれはそれで困るけどな。
とにかく、顔立ちこそ似ているが、中身は別人のようだ。・・・本当に生まれ変わったって事なのかもしれん。【看破】で見た限り、この子も【拳武の精霊】である事は間違いないのだが。
そうそう、【拳武の精霊】の着けていた仮面だが、割れた状態で地面に落ちたままだ。生まれ変わった男の子も持っている様子はない。つまり、あの仮面だけ【拳武の精霊】の一部でもなんでもなく別枠の物、ということになるんだが・・・出所は不明だ。
「なるほどな・・・おい、アシュラ。はしゃぐのも良いが名前をつけてやれよ」
【眷属】に名前を付けるまでが【眷属】化だろうに。
「ハッ!そうだったっす!!・・・でも名前はもう考えてあるっす!!」
「まう?」
自信満々に言い放つアシュラと、それに反応する男の子。見詰め合う二人・・・なんか和む。
「君の名前はルドラっす!・・・どうっすか?」
「・・・うー!!」
・・・両手を上げて喜んでいる。どうやら気に入ったらしい。・・・にしてもアシュラにルドラ、ね。アシュラの奴、狙って名づけているのだろうか?それとも天然?・・・天然っぽいな。
・・・なんか暴れん坊になりそうな予感がするな。・・・アスターには頑張ってほしい(丸投げ)。
どういうことかって?気になる人は名前を元に調べてみよう!!
・・・お、そのルドラくんにミコトちゃんがふわふわ近づいて行くぞ?
「あい!!」
「うー?」
「あい!あーうー!!」
「まうー!!」
・・・何話してんのか全然分からん。というか、あれで会話になっているのか?・・・ルドラくんはミコトちゃんに手を引かれてアシュラの腕の中を抜け出し、二人手を繋いでぷかぷか浮かんでいる。・・・なんか微笑ましい。
どうやら【精霊】の【眷属】同士でケンカするような事はないようだ。今後はどうなるかは分からんがケンカせず仲良くやっていって欲しい。
当の二人はというと・・・手を繋いだまま・・・アーテルの背中に?
「クルッ!」
二人を乗せたアーテルはそのままゆっくりとした動作でパッカパッカ歩いている。・・・キャッキャキャッキャ言って喜んでいるな。
うーむ、素晴らしい癒し空間だ。
「あー、癒されるっすねー・・・うぅ・・・鼻血出そうっす」
うむ、分かるぞ、アシュラ。確かに・・・鼻血?・・・スマン、やっぱ分からんぞ、アシュラ。
「・・・なんだかすごい和やかな雰囲気の所、申し訳ないんですが・・・」
なんだよアスター。俺は今、穢れた心を浄化してもらってんだから邪魔すんな。
「この後はどうするんですか?アルクさん?・・・一応まだ遺跡の中なので油断しないほうが・・・」
ふ、なんだそんな事か。
「ああ、それなら大丈夫。それより、油断云々言うなら、早いうちに回復しとけよ。HPもそうだが、BPもMPもLPもすっからかんなんじゃないか?」
和やかな雰囲気に忘れてしまいそうになっていたが、二人・・・ミコトちゃんもだが、たった今、激戦を終えたばかりだ。もしここで敵が出てきたら、弱い奴でもイチコロだろう。
俺の言葉にハッとした二人はさっそくポーションを取り出して回復を図る。・・・クッ!ミドルポーションを惜しげもなく使えるのは素直に羨ましいな。一発で全回復か。
最後にミコトちゃんにポーションを飲ませて回復完了。何故かルドラくんも飲みたがったが君は何も消耗してないんじゃないか?・・・あー、アシュラがミドルポーションあげちゃった。あまいなぁ。嫌いじゃないけど。
「あう!!」
「まー!!」
ごくごくポーションを飲んですっかり元気になった所で、部屋の中を調べていたカイザーが丁度戻ってきた。
「マスター。センサーニ反応ナシ。敵出現予兆ハアリマセン。マタ、入口以外ノ扉、及ビ階段ハ発見デキマセンデシタ。コノ部屋デ行キ止マリト推定サレマス」
昨日痛い目にあった俺は油断なく、この部屋の調査をカイザーに命じていたのだ。アーテルといいカイザーといい、優秀で非常に助かる。・・・アスター、アシュラ、その感心したような目は非常に心地良いぞ。
「ここで行き止まりか・・・怪しい箇所は無かったんだな?」
「マスターガ気ニサレテイタ壁画以外ハ発見デキマセンデシタ」
ふむ、よろしい。やはり気になるのはあの壁画だな。と、いうわけで【拳武の精霊】の着けていた仮面を回収(戦利品としてアシュラに渡した)して、全員で部屋の奥の壁画まで移動する。
「そういえばアニキはやたらあの壁画を気にしてたっすね。なにかあるんすか?確かに今までの壁画とはちょっと雰囲気が違うっすけど・・・」
「そうだね、見た感じ、剣士が巨大モンスターに挑むような画に見えるけど・・・この人が【剣鎧王】・・・兄の方なら、弟の【拳武王】の方が居ないね。今までの壁画はどれも必ず二人セットで描かれていたのに・・・」
「まう?」
【拳武王】の言葉に反応したのか、ルドラくんが首を傾げている。そんな彼の頭をアスターは優しく撫でていた。ルドラくんも心地よさそうに受け入れている。そんな様子を優しい眼差しで見ているアシュラと自分も!と言わんばかりに頭を出してくるミコトちゃん・・・3人家族が4人家族になったようにしか見えない。
「それも気になるが、俺が気にしてるのはそっちじゃない」
「え?じゃあ巨大モンスターの方っすか?このでっかいカラスみたいなのっすか?」
確かに見た目は鳥・・・カラスみたいに見えるが・・・
「カラスではないんじゃない?だって足が三本もあるし・・・」
そう、剣士・・・【剣鎧王】が対峙しているのはでっかい三本足のカラスだった。
「モンスターじゃない。こいつは多分、導きの神と呼ばれる・・・【ヤタガラス】だ」
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