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いよいよ本番

「よっ!ほっ!」


アシュラが【斧の中級邪霊】の斧を綺麗に避けている。・・・よくよく考えると素手の女の子に斧で襲い掛かる図ってとってもやばい構図だよな。アシュラは余裕そうだけど。


「【魔闘技:拳火】!行くっすよー!!」


そう言って【邪霊】に突進して行くアシュラ。【邪霊】の方は横なぎに斧を振り回す。・・・今のは【トマホークスマッシュ】というスキルだな。当たれば大ダメージだが・・・


「おりゃーっす!!」


アシュラは途中でジャンプ。斧を避けつつ、【邪霊】の頭上をも飛び越え、宙返りで向きを方向転換しながら【邪霊】の背後に降り立つ。そして・・・


「【竜爪撃】!!」


背後のからの攻撃で【邪霊】を倒した。今のは・・・いわゆる「ひっかく」攻撃みたいだったが、【邪霊】の体がスパンと切れている。まるで鋭い刃物で切り裂いたかのようだ。俺の知らないスキルだ。どうやらアシュラにはまだ引き出しがあったようだ。


なんにせよ、アシュラは終わりだな。アスターの方は・・・


「クッ!!」


【槍の中級邪霊】に苦戦しているな。あれは【スピードチャージ】か。スピード重視の連続突き。一撃一撃のダメージは少ないが、避けるのが難しく、どんどんダメージが蓄積していく。だが・・・


「あーうー!!」


すかさずミコトちゃんが回復することでダメージは0になる。どれだけダメージを与えても直ぐに回復・・・ある意味ゾンビみたいな奴だな。


「すまない、ミコト!・・・こっちも本気で行くぜ!【サイコクラッチ】!!」


アスターが【邪霊】に掌を向け、何かを握る動作をした途端、【邪霊】の動きが止まった。いや、より正確に言えば、見えない巨大な手で握り止められたような感じだ。【邪霊】がバタバタ動いているが解放される様子は無い。


そんな【邪霊】相手に【暗黒の大鎌(ダークデスサイズ)】を手にしたアスターが・・・


「ウラアアア!!!」


容赦なく斬りつけ、【邪霊】は倒された。・・・敵を動けなくした所で切りかかるとは、ますます死神っぽいな、と思ったのは内緒だ。


「お疲れさん、二人とも」


戦闘が終わった二人に声をかける。1対1なら、まだ余裕はありそうだ。多人数相手が苦手なのは・・・今後の課題だな。


「アシュラ、良いスキル持ってるじゃないか。なんで俺と戦った時に使わなかった?」


「・・・使う前に倒されちゃったっす」


・・・そいつは失敬。逆に言えば、もったいぶらずに最初から使っていれば、もっと良い勝負になったかも知れなかったのに・・・。相手の実力を察するって大切だな。


「・・・アスターも一緒になって戦っていれば、もっと結果が違ったんじゃないか?」


さっきの敵を動けなくするスキルは厄介だ。実際に食らってみなければ分からないが、もし食らったら何もできず倒されていたかもしれん。


「・・・いえ、今の【念動力】のスキルはステータスのSTR参照のスキルなんです。つまり、腕力に物を言わせた物理攻撃なんですよ。おそらくですが、ボクのSTRはアルクさんのSTRより遥か下だと思うので通用しなかったと思いますよ?」


・・・ふむ、つまり本当に見えない手を押さえつけられているような感じか。で、STRで勝っていればはね除ける事が出来る、と。


しかし、【念動力】か・・・ようはサイコキネシスみたいな超能力のことだろう?そんなスキルもあるのか・・・世界は広いな。あ、ゲームの、だよ?


「あう!」


まあ、なんと言っても、一番役に立っているのは回復役のミコトちゃんだよな。今も二人を回復させているし・・・回復役は偉大だ。


俺はミコトちゃんとお守りをしていたアーテルにお菓子のドーナツ(アーニャ作)をあげつつ、周囲を見渡す。そこで目に入るのはこの広い部屋の壁にデカデカと描かれている壁画である。


そこに描かれているのは偉そうに王冠とマントを付けた男と、その人にかしづく二人の青年の姿だった。


「・・・様子から察するに王から褒美を受け取っている場面、貴族になって領地を頂戴している場面といった所か」


「二人の頑張りが認められた場面ということですか。それなら巨大な壁画にして残そうとしているのも頷けますね。・・・実際には裏に悪意があったようですが」


伝説では大臣他からの裏工作があったようだからな。で、受け取った領地が未開のジャングル・・・だが、あとの展開を見る限り、むしろこれで良かった、と言う感じになっている。二人の兄弟はそこまで見越していたのかは定かではないが・・・もしも全て二人の想定通りだったのなら、腕に覚えがあるだけではなく、とんだ食わせ物だな。


「・・・じゃあ、そろそろ行くか」


「ええ」


「はいっす!」


「了解デス」


「うまうま♪」


「クルー♪」


・・・ああ、まだ食ってたのね。良いよ、ゆっくりお食べ。


・・・


引き続き、階段で下へ下へと降りていく。体感的には既に地上のピラミッドを通り抜けて地下まで降りてきたものと思われる。・・・一体どこまで続いてるんだか・・・


勿論、道中にも壁画があった。二人の兄弟が部下を連れてジャングルに入る場面、ジャングルのモンスターと遭遇する場面、ジャングルの果物を採って祝杯を挙げている場面、ジャングルを切り開いて開拓している場面などなど。


こうしてみると、二人の兄弟は順調に活躍しているように見える。しかし、この後は・・・


少し切なくなっている時、ようやくそこにたどり着いた。


「・・・またえらくでっかくて豪勢な扉っすね」


俺たちの前に現れたのは、先ほどのように大きな扉。ただし、こちらは豪華な装飾が施されおり・・・


「いかにもボスの部屋って感じですね」


・・・アスターにセリフを取られたがまさにそんな感じである。


「そうだな。だが、壁画からするともう少し続きそうな気もするんだが・・・ちょっとだけ開けて覗いてみるか」


慎重派の俺(笑)はちょこっとだけ扉を開け、中を覗いてみる。・・・扉、クソ重てぇ。


・・・居たよ。


部屋のど真ん中で一人だけで腕を組んで仁王立ちしてやがる。しかし、あれは・・・


「・・・あれは人間・・・っすか?はっきり姿が見えるんすが・・・」


同じく扉の隙間から覗き込んできたアシュラの感想。やはり俺の見間違いではなかったようだ。


「まさか。こんな場所に人間がいるとは・・・まさかプレイヤー?」


同じくアスター。確かに一見するとそう見えなくも無い。確かめるためには【看破】、発動!


【拳武の精霊 Lv.39】

かつて【武術界】で名を馳せていた【拳武王】に宿っていた【精霊】


「・・・【精霊】に間違いないようだな。今までに見たことが無いタイプだが。・・・しかも【邪霊】じゃなく【精霊】だ」


つまり、アイツは狂っているわけでも理性が無いわけでもない紛れもない【精霊】ってわけだ。


そしてもう一つの問題は【拳武王】に宿っていた【精霊】、と言う部分だ。


「・・・つまり【精霊】は人間にも宿るって事ですか?」


「・・・まあ、万物に宿るって事は人間にも宿るってことなんじゃないか?」


そういえば【精霊図書館】でミコトちゃんたちが読んでいた絵本、『桃の精霊の邪霊退治』と『猿の精霊と蟹の精霊の合戦』だったか。【精霊】は果物には勿論、生物にも宿るってことか。


「しかし、ここに来て、また別のタイプの【精霊】か。見た感じ、武器を持てるように見えないな。となると物理攻撃はまったく効かない・・・!?」


「・・・どうしたっすか?アニキ?」


アシュラの声が聞こえるが返事が返せない。俺が見ているのは【拳武の精霊】・・・ではない。その()()()()()()()だ。


俺は一旦扉を閉めた。


「アルクさん?」


アスターの声にも返事をせず、考える、考える、考える。


5秒ほど考えて結論を出す。


「・・・なあ、アシュラ?お前、自分に合う【精霊】を探してたよな?」


「え?・・・あっ!!」


・・・忘れてやがったな、こいつ。どうりで【邪霊】たちを迷わず倒すわけだ。・・・まあ良い。


「・・・アシュラ、あの【拳武の精霊】なんかお前にぴったりな【精霊】だと思うんだ」


これは嘘ではない。見た感じでしかないが、アシュラと同じ戦闘スタイルのように思えるからだ。


「そ、そうっすか?確かにボクも強そうな【精霊】を狙ってたっすけど・・・」


「ならアイツなんかぴったりだろう?」


力説する俺。


そんな俺を胡散臭そうに見るアスターとアシュラ。


「急にどうしたんすか?アニキ?」


「そうですよ。ここに来て急に・・・」


うむ、誤魔化しは聞きそうに無いな。なら直球で・・・


「・・・あれはアシュラの【精霊】にふさわしい。そしてアシュラのために入手するのならお前達だけで行くのが筋だと思うんだ」



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