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一緒に行く?

絵本を見終わったらしいアスターがやってきた。アーテルとミコトちゃんをこちらで引き取り、代わりに俺たちが読んでいた本を代わりに渡す。


「あい!」


・・・ミコトちゃんが手に持っていた本を差し出す。さっきまで読んでいた絵本と違うな。ないなに・・・『猿の精霊と蟹の精霊の合戦』?・・・はて?どっかで聞いたようなタイトルだな(笑)


これを読めってことか。アーテルも読みたいみたいだし別にいいけど・・・内容は・・・推して知るべし。


俺たちが絵本を読み終えたころ、アスターも読み終わったようで、これからのことを話し合う。


「冒険者エルクスの本に書いてあったことの裏付けが取れましたね」


少なくとも冒険者エルクスの本に書いてあった伝説とやらは本当らしいし、信憑性は高くなっただろう。ただ・・・


「気になることがあるんだよなぁ・・・」


「気になることっすか?」


「エルクスの本にあった拳武王の遺跡ってやつだ。伝説によれば剣鎧王の墓と同じ場所に拳武王の墓があるはずだろ?なのにエルクスの本に書いてあったのは拳武王の遺跡だけ、だっただろ?」


「そういえばそうでしたね」


もしかしたら冒険者エルクスの見つけた遺跡っていうのは二人の王の墓ではなく別の遺跡なのかもしれないな。そうなると遺跡っていうのは複数ある可能性があるな。


「・・・むー、気になることはあるっすが、行って確かめてみれば良いんじゃないっすか?」


・・・ごもっともで。


「行くのは良いんだが、その前に確認しなきゃならんことがある」


「確認っすか?」


「・・・」


「あーうー?」


アシュラは分かっていないみたいだがアスターは分かってるみたいだ。ミコトちゃんは・・・そもそも話聞いてないな。


「俺もアーテルも、もちろん行ってみるつもりだが・・・一緒に行くつもりか?」


「え!?一緒に行かないんすか!?」


びっくり仰天といった感じのアシュラ。


「・・・当然だろ?アシュラ。アルクさんと僕たちは同じクランでもパーティでもないんだよ?」


アスターは分かっていたな。確かに俺たちが一緒に行動する理由はない。昨日知り合ったばかりだし、むしろ何で?と言われるだろうな。


「えー!?でも同じ窯の飯を食った仲っすよ!?」


・・・言いたいことはわかるが、アシュラはもっと人を疑うこと知ったほうが良いんじゃないかな。あと、その窯の飯を持ってきたのは俺だ。そういうセリフは自分で窯の飯を用意してから言いなさい。


「はぁ、まったく・・・でも一緒に行ってほしいと思ってるのは僕も同じです。アルクさん、もし良かったら僕たちも連れて行ってもらえませんか?」


おや?意外だな。アスターくんは人の迷惑を第一に考えてしまうタイプだと思ったが。・・・そこまで信用、いや信頼されたのかね?しかし、一緒に行こう、ではなく連れて行ってくれ、か。


「そうだな・・・とりあえず、二人の・・・いや、三人のレベルを教えてくれないか?俺は・・・Lv.55だな」


「Lv.55ー!?」


「・・・予想以上に上ですね」


なんか驚いているが、三人のレベルを教えて貰ったところアシュラはLv.37、アスターはLv.33、ミコトちゃんはLv.30ということだった。


「ふむ、エリア3のレベルは満たしてるな。足手纏いになることはないだろうし・・・良いぞ」


「やったっすー!!」


「ありがとうございます!!」


「あう!!」


「クルー!!」


・・・いや、喜び過ぎじゃない?ミコトちゃん、ちゃんとわかって喜んでる?アーテル、なぜお前も一緒になって喜んでいる?


「こらこら、図書館では静かにしろ」


まったく、なんで俺がこんなお兄さんキャラをやらなきゃならんのだ。・・・嫌いじゃないけど。


と、いうわけでこのメンバーで引き続き行動することになった。改めてパーティを組み、エリア3を目指す。


===移動===>【精霊図書館】外部


「にしてもすごいっすねー、【剣鎧王】っていうのも【拳武王】っていうのも」


アシュラはいまだに興奮している。そんなに気に入ったのか、あの伝説。・・・気持ちは分からんでもないが。


「・・・まあ、凄い人たちだったっていうのはわかったね。どこの国の話なのかは分からないけど今でも英雄扱いなんだろうね。・・・滅んだ国からしたら悪夢以外の何物でもないだろうけどね」


あ、それは俺も思った(笑)


英雄譚っていうのは視点を入れ替えれば・・・ってやつだ。あの本には、そもそも戦争してた理由が書いてなかったし、伝説だけを見れば隣国が悪者になっているが実際には分からんな。味方のはずの国の大臣たちも悪者だったし。


・・・はて?伝説にある国ってどこの話なんだ?少なくとも俺が【武術界】で行ったことのある場所じゃないみたいだが・・・じゃあなんであの本が読めたんだ?行ったことのない場所の話の本は読めないはずじゃあ・・・


・・・ああ、そういえば冒険者エルクスの本には【武術界】では誰でも知ってるって書いてあったな。よくよく考えれば具体的な地名や人名が出てこなかったし。ということは『剣鎧王と拳武王』に書いてあった内容は終始、誰でも知っている伝説の話だったんだろう。おそらく、俺が今行ける範囲の【武術界】のNPCの誰かに聞けば似たような話が聞けたんだろう。


・・・そのうち、【武術界】のどこかにある現地に行ってるのも良いかもな。聖地って呼ばれてるみたいだし。文字通り聖地巡礼ってか。


「にしてもアニキって随分、高レベルだったんすね?そりゃ勝てないわけっすねー」


うんうん、その通りだよアシュラちゃん。だからこそもっと相手を良く見てケンカ吹っ掛けようね。


「・・・確かにアルクさんのレベルは予想以上に高かったけど、予想は出来ただろ?僕たちとは違うオーダーメイドの衣装に、強力な【眷属】を従えて、強そうな刀を持ってたんだから」


アスターくんは逆によく相手を見てるな。アシュラが俺に勝てないと思っていたみたいだし・・・まあ、それなら加勢すればよかったのにと思わなくもないが。アスターはアシュラとは逆に消極的な気質なのかもしれない。


案外この二人、セットで行動していてバランスが取れているのかもしれないな。問題なのは二人が別行動を取ったときに大丈夫かという点と、あと俺という異物が入っても大丈夫かどうかという点だ。・・・まあ、気にしすぎても仕方ないな。高レベル帯ならともかくLv.30台の場所なら大丈夫だろう・・・やべっ、フラグ立てちまったか?


なんやかんや話している内に【転移装置(ポータル)】までたどり着いた。ここから一気にエリア3のジャングル手前まで行けるはずだ。


「じゃあ、行く前に戦闘準備だ」


前回は油断しまくって雷落とされるという無様を晒したが、今回はマジで行く。


【攻鎧アルドギア】を装着、さらに背中に【豪剣アディオン】をホルスターに入れて装着。左右の腰部分に【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】、そして【グランディスマグナム】を2丁、ホルスターに入れて装着する。なお、武器装着用のホルスターはアヴァンが作ってくれた。


以上、現時点の最強装備である。なお、武器は他にもあるが、今装備している武器に比べるとランクが落ちるので最強装備、には入れていない。・・・そもそもこれ以上持ちきれんし。


「・・・ボクたちと次元が違いすぎるっす・・・」


「とんでもない過剰戦力じゃないですか?」


「あーいー!!」


そうかな?・・・そうかもな。


まあ、そんなにげんなりするなよ二人とも。


ほら、ミコトちゃんは喜んでいるじゃないか。何に喜んでいるのかは知らんが。


作者のやる気とテンションを上げる為に


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