精霊憑依
【精霊憑依】という中二心をくすぐらされるスキルを見せられて若干テンションの上がる俺であった。
「アシュラが武術系の【精霊】を狙っているのも【精霊憑依】が関係しているんだな?」
「そうっす!武術系の【精霊】と【精霊憑依】すれば少なくともステータスを上乗せすることができるはずっす!!それに【精霊憑依】中でしか使えないスキルも期待できると思うっす!!」
プレイヤーと一体になって戦力強化させることが出来る【眷族】か。確かに魅力的だな。
「今使った【生命の息吹】は畑に生命力を分け与えて種の成長を活性化させるスキルです。今のボクとミコトのレベルだと10%ほど早く成長するみたいですね。もっとレベルが上がればそれだけ成長スピードも早められるはずです」
「ふむ、生産系のほうはわかったが戦闘のほうは?」
「僕とミコトの場合、【精霊憑依】中はHP自動回復・中と状態異常無効化が付きますね。LPを消費する上、制限時間がありますので、いつでも使えるわけではありませんが」
強力なスキルである分、デメリットも存在するわけか。確かにミコトちゃん単体では戦闘力があるように見えない。回復役に徹してもらうくらいだろう。【精霊憑依】中は強力になっても時間制限がある。そう言う意味では【精霊】よりも他の【眷属】を選ぶ方が戦力という意味では大きいのかもしれん。
まあ、それでも俺は是が非でも欲しいけどな。なんかカッコいいし。
「なるほどな。・・・それで肝心の武術系の【精霊】がどこにいるか分かっているのか?」
問題となるのはそこだ。一応遺跡に居るとは聞いたが、昨日はそれらしい場所を見つけられなかった。もっと外のエリアにあるのか、それとも俺の探した場所にはたまたまいなかったのか・・・
「フッフッフー!なにを隠そう、実は!もう目星は付いてるっすよ!!」
「なに!本当か!?」
「ええ、実はアルクさんと出会ったエリア3のジャングルの奥地に遺跡があるらしいんです」
なに?昨日の場所に?・・・しかし、俺とアーテルが上空から見た限りではそれらしい場所は見つからなかったが・・・
「それはどこからの情報だ?目星、とからしい、というからには自分たちで見つけたわけではないんだろう?」
俺の疑問にアスターは丁寧に答えてくれる。
「実はエリア0には、【精霊界】の歴史なんかが記された本などが集約されている【精霊図書館】があるんですよ。僕たちが見つけたのは、そういう記述が載っている本があったからです」
図書館でヒントとはいかにもゲームの中らしいヒントだが・・・図書館なんてあったか?
「【精霊図書館】は【世界樹】の向こう側、【大転移門】の丁度反対側にあるっす。初めて【精霊界】に来た時点ではまず気が付かないっす。ボクらもしばらくして住人から聞いて初めて知ったっす」
・・・つまり、あの巨大な【世界樹】をぐるっと迂回しないといけないのか。なんというか、いやらしい配置だな。嫌がらせか?
「・・・ふむ、そういうことなら俺も一度行ってみないといけないな。疑うわけじゃないが、自分の目で確認しておきたい」
他にも有益な情報があるかもしれないからな。
「あ、それならご案内しましょうか?」
「・・・良いのか?」
「ええ、今日はもうホームでする予定だったことは終わりましたので。良いよな?二人とも?」
「もちろんっす!!」
「あい!」
というわけでお言葉に甘えて【精霊図書館】まで案内してもらうことになった。・・・のだが、聞くと巨大な【世界樹】を迂回するのは結構な時間がかかるということなので、アスターたちには【転移装置】で先に行ってもらい、俺はアーテルの背に乗って移動することにした。広大すぎる世界の欠点である。
===移動===>エリア0 【精霊図書館】
「というわけで到着だな」
「・・・早すぎですよ、アルクさん。ボクらが以前、移動した時は何時間も掛けて移動してきたのに、10分くらいで着くなんて・・・」
【転移装置】は便利だが、最初の一回は自力で到達しなきゃいけないからな。ホームとかは例外だけど。【精霊図書館】前に【転移装置】があって良かったな。
「早いのは俺じゃなくてアーテルだけどな。にしても・・・でかいな」
そう目の前にあるのは木造5階建ての巨大な建物だった。うーん、普通に学校とかよりもでかいな。
「確かにでかいんっすが、ボクらが入れるのは1階までっすよ?」
「なに?そうなのか?」
「ええ、2階以上に行くには条件があるらしくて、少なくとも僕たちはその条件を満たせていません。」
・・・逆に言えば、2階以上には何か重要な情報があるのかもしれないな。後でラング辺りにでも聞いてみるか。
今はとにかく出来ることをするってことで早速入館する。なお、入館料は一回1000Gである。
で、中の様子はと言えば・・・外で見るよりずっと広い印象を受ける。そしてその広い空間にビッシリと本棚が並べられている。当然、本棚の一つ一つに本がビッシリと並べられている。
これ、一体何冊あるんだ?ざっと見ただけで何千冊、何万冊とあるように見えるんだが?しかもまだ1階だぜ?この世界ってそんな歴史あんの?
「びっくりしますよね。僕も最初来たときは驚きました。でもこれだけの量になるのはそれなりの理由があるみたいですよ?・・・ほら、この案内板を見てください」
アスターが指差したのは、よくある案内板だ。どの位置にどんな種類の本が並んでいるか書かれている。
「・・・【人間界】のコーナー?こっちは【精霊界】だが・・・【武術界】、【魔法界】、【幻獣界】、【機甲界】のコーナー?・・・どういうことだ?何で他の世界のコーナーがあるんだ?」
「それについても、これに書いてあるっす!」
アシュラが持ってきた本、タイトルは『精霊とは』である。本を受け取って軽く斜め読みしてみる。
『精霊とは森羅万象に宿る存在であり、どんな世界、どんな場所にも存在する。
ただし、精霊の姿を見、声を聞き、その手に触れることが出来るのは同じ精霊のみである。
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一方で精霊界とは全ての精霊が生み出される場所であり、全ての精霊が還る場所である。
精霊界は精神と肉体の境界が曖昧となる半物質世界であり、半精神世界でもある。
故に精霊界では人間と精霊はお互いの存在を確認することが出来る。
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人間と契約を交わした精霊は、人間の持つ霊力によって実体化することが出来る。
実体化した精霊は、精霊界以外でも活動できるようになり、他者にもその姿を見、声を聞き、触れ合うことができるようになる。
霊力が尽きれば、その存在は契約を交わした人間以外には知覚できなくなる。
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精霊の中には記録のために存在する精霊がいる。
記録の精霊は様々な世界を渡り、その世界の事象を記録し、精霊界へと持ち帰る。
それゆえに精霊界はあらゆる世界の知識が蓄積されていると言われている。
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精霊の中には訪れた世界で進化を遂げる者もいる。
長き時を経た器に宿り、その器を司る精霊へと進化する。
その進化した精霊の還る場所もまた、精霊界なのだ』
・・・
・・・そっと本を閉じる。
「なんか、すっごい壮大な事が書いてあったような気がするんだけど」
要するに【記録の精霊】とやらが【精霊界】のみならず色んな世界の事を記録してここに集約しているって事か。
まるで世界記憶だな。
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