生命の精霊
満足げにおなかをさすっているミコトちゃん。
こんな感じ⇒( ̄∀ ̄)
そんな彼女の頭を撫でながら話を続ける。なお、アシュラは物欲しそうな顔をしていたので、2杯目を出してやった。・・・ら、ミコトちゃんも物欲しそうな顔をしたので以下省略。
「【生命の精霊】は文字通り生命を司る【精霊】です。戦闘においてはHP回復や状態異常回復、生産では種や苗木の創造、そして作物の成長促進などができるんです」
回復系はともかく、生産に関しては・・・
「・・・それってかなりレアなスキルだよな?」
「そうですね。少なくともミコト以外の【生命の精霊】を見たことがないですし、そんな情報もありませんでした。実は一時期、この子が目的と思われるプレイヤーに追いかけられたこともあるんです」
その言葉に渋い顔をする俺。当たり前だが他人の【眷属】を奪う事なんて出来ないから、そのアホは自分たちのクランに無理矢理所属させようとしたか、もしくは【生命の精霊】の入手法を聞き出そうとしたんだろうな。
「・・・それってまさか、【ハーヴェスト】とか言うクランのプレイヤーか?」
「名前まで分かりませんが・・・知っているんですか?」
似たような被害を受けたプレイヤーを2名知っています。
「強引な勧誘をしていたらしいっていうのは聞いてる。通報されて今はもう無いとも聞いた」
「そうですか、それは一安心ですね」
笑顔を見せるアスター。そしてなるほどな。昨日のアスターたちと出会ったときのアシュラの態度の理由が分かった。過去にそういった被害があったのなら、警戒も頷ける。・・・それでもアシュラは人の話を聞かなすぎだと思うけどな。・・・今も話そっちのけでカレー食ってるし。
「僕が話せる情報はそれぐらいですね。・・・ああ、それと僕は【ファームエルフ】という種族で、農業系に強い種族になります。ここの畑で取れる作物の品質が高いのは、それも理由の一つですね」
・・・【ファームエルフ】なんて種族があるのか。農業に強い種族ね。【生命の精霊】と最高の組み合わせじゃないか。・・・組み合わせといえば・・・
「アシュラは?まだ【精霊】の【眷属】はいないのか?それとも【眷属】は作らないつもりか?」
「ほえ?」
・・・あー、分かった分かった。食い終わってからで良いから。そんな急いで食わんでも誰も取らないから、味わって食え。
「んぐんぐ・・・ぷっはー!おいしかったっす!!・・・ボクが狙ってるのは武術系の【精霊】っす」
・・・ほう?
「【竜人】って種族はステータスが高い代わりに【眷属】との相性が悪いっす。でも武術系の【精霊】なら、ボクのサポートをしてもらえるはずっす」
ふむ、戦闘のサポートが欲しいのか。しかし・・・
「それなら【精霊】に拘る必要はないんじゃないのか?アーテルのようにモンスター系の【眷属】でも良いんじゃないか?」
「クル?」
自分の名前が呼ばれたことに反応するアーテル。・・・こっちは綺麗に食べてるな、カレー。偉いぞ。
「フッフッフー。確かにそれもありなんっすけど、【精霊】には【精霊】にしか出来ないサポートがあるんっすよ」
【精霊】にしか出来ないサポート?・・・気になるな。
「アスター!今こそアレをアニキに見せるときっす!!」
ビシッとアスターを指差すアシュラ。
「それより先に肥料を撒いて耕さないと・・・元々僕らは肥料を買いに出ていただろう?」
指差したまま固まるアシュラ。ああ、なんでホームがあるのに外で待ち合わせしてたのかと思ったら、買い出しに出てたのか。
「というわけでアルクさん、少しお待ち頂けますか?すぐに終わらせますんで」
「おう、ゆっくり見学させてもらうわ」
手伝おうかとも思ったが、素人が入っても邪魔だろうし、人様の畑に入るのは気後れするからな。
その後、アスターとアシュラは二人で肥料を撒く。といってもそれほど広くはないので直ぐに終わったが。ちなみにミコトちゃんは「あーいー!」と叫ぶだけだった。・・・応援してるのだろうか?
肥料撒きが終わると何故かアシュラだけが戻って来た。
「・・・?どうしたんだ?」
「あー・・・いや、そのー・・・ここからはアスターの独壇場なんで・・・」
・・・?どういうことだ?
当のアスターは畑の端っこでクワを取り出してるが・・・
「・・・おっしゃああ、行くぞオラあああ!!!」
そう叫んだ後、猛烈な勢いで畑を耕し始める。
アスターが。
「・・・なんだアレ?」
「タハハ・・・アスター、武器を持つとテンションが上がっちゃうのか、ああなっちゃうんすよ」
「オラオラオラオラオラァ!!」
アスターはすさまじい勢いでクワを振り下ろしている。これならあっという間に耕し終えるだろう。
・・・いや、違う。そうじゃない。
「性格変わってないか?そもそもクワは武器じゃないだろう。・・・二重人格か?」
「そういうわけじゃないみたいっす。ほら、車のハンドルを握ると人が変わったような運転する人がいるじゃないっすか?あんな感じっすよ」
・・・確かに人が変わったようにはっちゃける奴もいるみたいだが・・・あれは違うくね?
「・・・ふう、終わったー」
あっという間に畑を耕し終わったアスターがクワをしまって戻ってきた。・・・普通に戻ったな。
「あーうー!!」
お疲れ様と言わんばかりにアスターを出迎えるミコトちゃん。・・・というかアレを見ても普通なんだな。日常茶飯事なんだろうか?・・・別の意味で心配になってきたんだが。
「それじゃあ、今度は種まきっすね!」
「うん、ミコト、お願いするよ!」
「あい!!」
今後の三人の行く末について心配している俺を余所に作業を進めている三人。・・・とりあえず、アスターは面白キャラだったってことで気にしないでおこう。
「あーいー!!!」
ミコトちゃんがちっこい掌を合わせると途端に光りだす。その光がおさまると、彼女の手の平には無数の種が置かれていた。
「・・・白い種だな。何の種だ?」
俺の疑問に正気?に戻ったアスターが答えてくれる。
「これは【体力草】の種ですね。HPポーションの原料になる植物です」
・・・なんだって?
俺の驚愕を余所にアスターはミコトちゃんから種を受け取り、またミコトちゃんが種を作り、アスターに渡すという作業を繰り返す。
「この黄色い種は【気力草】、赤い種は【魔力草】、青い種は【霊力草】になります。それぞれ、BPポーション、MPポーション、LPポーションの原料になりますね」
・・・そうか。ポーションの原料ってそんな名前の植物だったのね。
「あとはミコトの好きな【精霊イチゴ】の種と【精霊キャベツ】の種・・・今回はこれぐらいですかね。ありがとう、ミコト。」
「あい!」
満面の笑みで答えるミコトちゃん。その後、ミコトちゃんから受け取った種をアスターとアシュラの二人で手分けをして植えていく。やがてそれも終わり・・・
「さあ!今度こそアレを見せるっすよ!アスター!ミコトちゃん!!」
ここでようやく見れるらしい、【精霊】にしか出来ないサポート、という奴を。
「わかったよ。じゃあ始めますねアルクさん。ミコトも準備は良いかい?」
「あい!!」
一体なにが始まるのかと思っているとアスターとミコトちゃんが一歩前に出る。
「ミコト!【精霊憑依】!!」
「あーいー!!」
二人が叫ぶとミコトちゃんの体が緑色の光を発しながら、体が薄くなり、そのまま・・・アスターの体の中に吸い込まれるように入っていった!?
今度はアスターが緑色の光を発しながら畑に向かって手を向ける。
「【生命の息吹】」
アスターが発した緑色の光が畑全体に降り注がれていく。畑全体に満遍なく光が降り注がれた所で・・・
「・・・ふう、解除っと」
「あい!!」
あ、アスターの体からミコトちゃんがポンっと出てきた。
「・・・今のは?」
俺の疑問に何故かアシュラが答える。
「【精霊憑依】っていう【精霊士】のスキルっす!要は合体っすよ!合体!!プレイヤーのステータスを上昇させる他、専用のスキルもある特別形態っす!!」
興奮気味に説明するアシュラ。
【精霊憑依】か・・・そんなスキルがあるとは。
そして、そんな重要そうなスキルを畑で見られるとは思わんかった。
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