インフォバルトス vs ヤマタノオロチ
「うう、ひどい目にあったのです・・・」
「大丈夫か、アーニャ。」
「ハイなのです。でもブランちゃんが・・・」
戻ってきたアーニャたちだが、アーニャは今ノワールの背に乗っている。ブランも一緒についてきてはいるが・・・ダメージは大きそうだ。アーニャはガットの作った防具、【桃鎧ドラグピンク】のおかげでダメージは少なかったようだが、モンスターの【眷属】は素の状態だからな。逆に考えればガットの作った防具がなければ俺たちだって・・・ゾッとするな。
「アーニャとノワールはまずブランの回復を。残りはラングたち・・・インフォバルトスの援護だな。」
先ほどからインフォバルトスとヤマタノオロチの戦いが派手に始まっていた。インフォバルトス・・・つまりラングは初級から中級の魔法を駆使し、魔法を連発しながら戦っている。
「【ウォーターバインド】【サンダーボルト】。」
魔法で縛り、動きを止めて魔法で攻撃。お手本のような戦い方をしている。しかもインフォバルトスに乗って魔法を使っているから威力が桁違いだ。生身で使ってたときはもっと小規模な魔法だったんだけどね。
しかも、魔法の属性を次々と変えて使っている。多分、弱点属性を探そうとしているんだろう。
ただし、ヤマタノオロチの方も容赦なく攻撃はしてくる。生身の時の小ささと違って、インフォバルトスの巨体は良い的だ。避け切れていない。だからこそ、ターゲットを取らすために俺たちも援護しているわけだが・・・今のままではそう遠くないうちにインフォバルトスの方が力尽きる。
「くそっ!弱点とかないのかよ、べヒーモスの時みたいに。」
べヒーモスの時は背中に魔石のような弱点箇所があったが・・・ヤマタノオロチにはそれらしい箇所は見受けられない。
となると後は生物的な弱点という事で目や鼻や口なんかも狙ってみたが・・・あまり芳しくない。そもそもちょろちょろと動き回るオロチの顔に当てるのが難しい。たまに当たった時は苦しそうにしているが、効果的なダメージを与えているようには見えない。
となると残るは・・・
「【ブレイジングセイバー】!【マキシマムスラッシュ】!!」
気力の大刃で尻尾を切り落そうと振り下ろす。・・・が。
「・・・かてぇな。」
3分の1ほど切り裂いたところで刃が止まってしまった。
「グギャアアアアア!!」
お、ヤマタノオロチが苦しがっている。少しは効いたか?
と思ったがヤマタノオロチはめちゃくちゃに尻尾を振り回し、強引に刃を引き抜くとそのまま尻尾で攻撃してきた。アーテルが必死になって避けてくれているが・・・避けきれない!
「グッ!!」「クルー!!」
尻尾の内の一本に弾き飛ばされる俺とアーテル。
「アルク!」「アルクさん!!」
「やらせないよ。【アイスバインド】【サンダーバインド】【ソイルバインド】」
追撃を阻止するようにインフォバルトスが魔法で縛り上げる。
「・・・イッテーな。」
「大丈夫なのだ?アルク。」
アヴァンがポーションを渡してくれる。アーテルは・・・ラグマリアとカイザーが見てくれているようだ。
アテナたちはインフォバルトスと共に魔法で足止めしてくれている。
「ああ、まだやれる。・・・だが・・・このままじゃジリ貧だな。」
「うむ、弱点らしい弱点も見つからないのだ・・・いっそカイザーで勝負をしかけるのだ?」
確かにそろそろかもしれない。今はまだ、お互いにフォローし合えているが、どこかでとちれば誰かが死に戻ることになる。そうなれば一気に押されかねない。
そうなる前に一か八か、一気に勝負をしかけるのが妥当か・・・しかし・・・
「クルルー・・・」
「おお、アーテル。大丈夫か?」
「クルッ!!」
良かった。まだ目は死んでない。まだまだやれる!って顔をしている。頼もしい。
「マスター、回復完了シマシタ。シカシ、ポーションノ在庫ニ懸念ガアリマス。」
ラグマリアの報告に渋い顔を返すアヴァン。回復アイテムも無限じゃない。やはりアイテムが底を突く前に勝負をかけるべきか。
「うにゃー!強敵なのです!面倒なのです!!アヴァン君!殺蛇スプレーとかないのです!?」
殺蛇スプレー?殺虫スプレーの蛇版?
「・・・そんな物ないのだ。ひどい無茶振りなのだ。・・・第一、神々が封印した魔物にそんな物が効くのだ?」
効いたら効いたで凄い事だけどな。神々の力を文明の利器が超えたとか、はははは・・・笑えねぇ。
・・・いや、待てよ。神、か。
「・・・どうしたのだ?アルク。」
「・・・いや、今思い出したんだが、日本神話ではスサノオノミコトがヤマタノオロチを倒すために八つの頭にそれぞれ酒を飲ませて酔いつぶれたところを退治した、っていう話だったなって。」
「・・・酒なんて持っていないのだ。」
「アーニャもです!!」
俺だって持ってねぇよ。というかアヴァン、アーニャ。君らの外見で酒持ってたらアウトだ。
「酒じゃなくても状態異常なら可能性があるかもしれない。試してみる価値はあるだろう・・・アルマ!」
俺の声にアルマが一旦下がってくる、代わりにアヴァンやアーニャたちが前に出る。
「・・・【呪魔法】で状態異常を、ですか。酔いつぶれるような状態異常は聞いたことがありませんが・・・わかりました!!」
先ほどの話と俺の考えを話し、早速アルマに実践してもらう。
「【スタンショック】!」
気絶させる魔法だが・・・どうだ?
「ギャオオオオ!!」
「・・・駄目みたいですね。」
「・・・ああ、他のやつも試してみてくれ。」
その後、【パラライズ】【ブラインド】【サウンドネス】【サイレンス】などなど、次々と確かめてみるがどれも効果が無かった。しかし最後に。
「【スリープ】!!」
それをアルマが唱えた瞬間、ヤマタノオロチの動きが止まった。いや、正確には八つの頭のうち、三つの頭の動きが止まり、そのまま地面へと落ちた。・・・どうやら眠りに落ちたようだ。
「ラング!!」
「チャンスみたいだねぇ。渦巻く風よ、轟く嵐よ、敵を微塵に切り刻め【風刃の嵐】!!」
全てを切り裂く巨大な嵐がヤマタノオロチを包み込む。
「ギィィィアアアア!!!!」
悲鳴を上げるヤマタノオロチ、特に眠りについていた三つの頭には大ダメージのようだ。
「・・・まさか【スリープ】が効くとは、酔いつぶれる代わりってことでしょうか?」
「かもしれないな。ただ、眠ったのが頭三つだけだったのは・・・」
「単純に魔法攻撃力が足りなかったのでしょう。」
「・・・てことは・・・」
俺とアルマはカイザーを見る。
「はい、クランメカロイドならおそらく・・・」
「・・・なら決まりだな。おい、ラング!!」
「聞こえているよ。ここは一気に押し切るべきだろうね。」
ラングも賛成らしい。決まりだ。
「よし、カイザー!【メカロイド】形態だ!!」
「了解デス。」
その言葉と共に、カイザーがナノマシンを放出し始める。バルトスのときがそうだったように、ナノマシンがカイザーの周囲に集まり、巨大な体を形成し始める。クランメカロイドとしての真の姿、アークカイザーだ。
さあ、いよいよ決戦と行こうか。
次回!アークカイザー vs ヤマタノオロチ!!
乞うご期待!!
・・・やべぇ、テンションおかしいな、俺。
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