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亡霊武者大将

すまん、サクッと終わらせようとしたが無理だった。


ボス武者改め亡霊武者大将さん結構お強い。


乗ってる馬が予想以上に速い(ゾンビみたいな見た目のクセに)上に、大将自体も結構強い。強いというより頑丈というべきか。攻撃を当ててはいるが中々倒れない。


そして向こうの攻撃もいくらか食らってしまっている。幸い俺は【攻鎧アルドギア】のおかげで大したダメージにはならなかった。だが他の連中が食らうと少しやばい。一撃で致命的にはならないだろうが、まともにやりあうのは厳しい。おかげで俺がタンクのような役割までこなすはめになっている。


「レイドクエストの敵っていうのは大体こんな物だよ。通常の敵は1対1想定だけどレイドの敵は1体で複数のプレイヤーを相手にする想定だから単純にステータスが高い。」


ラングの奴が魔法をぶっ放しながら答える。


「厄介だな。もう結構なダメージを与えてるはずだしそろそろ終わって欲しいが・・・」


「おいおい、そういうこと言ってると・・・」


「大変です、お二人とも!敵の増援です!!」


「・・・ね?」


「俺のせいかよ!!」


ロゼさんの声に振り返ると亡霊武者が20体ほどどこからかやってきていた。後方にいたカイザーたちが対処に回る。


「増援があるタイプだったみたいだね。ロゼ、君もバルトスたちの方へ行ってくれ。増援に備えるんだ。」


「はいっ!!」


ロゼさんと【眷属】のヒュームが前線から離れていく。


「それは良いがこっちはどうすんだよ?」


「長引けばまた増援がくるかもしれないし、できれば一気に決めたいとことだね。他の場所も気になるしね。」


・・・確かに気になる。さっきから遠くの方でドッカンバッコン轟音が聞こえてくるからな。べ、別にアテナたちが心配なわけじゃないんだからね!・・・ああ、でも地形が変わってしまわないかは心配だな。


「・・・そうだな。そろそろ決めるか。」


そう言って俺たちは亡霊武者大将に向かい合う。


「まずは動きを止めるよ。【ウッドバインド】。」


ラングが【木魔法】で動きを止める。今度は魔道書を使ったものではなく魔法を使ったものだ。


「【ウォーターバインド】【アイスバインド】【サンダーバインド】【ソイルバインド】・・・ふぅ。やっぱり魔道書を使わないと疲れるねぇ。・・・あとは任せたよ。」


ラングがMPポーションを取り出しながら一歩下がる。やはりラングでも魔法を連続で使用するのは厳しいらしい。


「分かった、アーテル、もう一回【シャイニングフェザーインパクト】だ。」


「クル!」


再び上空へ舞い戻るアーテル。大きく翼を広げ、無数の光の弾丸を亡霊武者大将に浴びせる。先ほどは避けられたが、今度は縛られているため逃げる事はできない。


「ついでに【レーザーブレス】!」


「クルル!!」


さらにダメ押しで【レーザーブレス】を照射させる。さしもの亡霊武者大将も大ダメージを受けてプスプスいっているが、まだ倒せてはいない。


「最後は俺だな。【ブレイジングセイバー】。」


天に掲げた【豪剣アディオン】の刀身に光が集まり、巨大な気力の刃が発生する。【上級剣術】のスキル、【ブレイジングセイバー】。剣に気力を集め、10メートルにもなろうかという巨大な気力の刃を作り出すスキルだ。攻撃範囲が広がるだけでなく物理攻撃力も向上する便利なスキルだ。・・・BPの消費が激しいが。


「【ミーティアルスラッシュ】!!」


同じく【上級剣術】のスキル【ミーティアルスラッシュ】。流星のようなスピードで敵を切り刻むスキルだ。スピード系の剣技の上位になる技だ。


巨大な亡霊武者大将も【ブレイジングセイバー】と【ミーティアルスラッシュ】の組み合わせでことごとくみじん切り!・・・となれば良かったんだけどな。


「・・・しぶとい野朗だ。【全天の属性(アーク・エレメント)】!」


さらに浄化属性も追加!


「【マキシマムスラッシュ】!!」


パワー系上位の剣技で亡霊武者大将を真っ二つに!・・・とはならなかった。が、乗っていた馬もろとも地面に倒れこんだ。そして・・・そのまま動かない。


「・・・」


ここで、やったか!?とか言うとフラグになるんだろうなきっと。


「・・・やったかな?」


「お前今、わざと言っただろう、ラング。」


「お約束だからね。何かあるなら早いほうが良い。・・・でもピクリともしないね。今のうちに回復していた方が良いよ?アルク。」


言われんでもわかっとるわい。アーテルも呼び、ポーションで回復する。


「・・・おかしいね。動く様子もないけど消える様子もない。普通、HPを0にしたモンスターは消えていくはずなんだけど・・・」


「まだ倒しきれていないってことか?」


「試してみようか。【ファイヤーストーム】!」


倒れこんでいる敵に容赦なく魔法をふっかけるラング。・・・ドSだな。


しかし、当の亡霊武者大将はピクリともしない。悲鳴もうめき声も上げない。そして消える様子も無い。


「反応が無いな。」


「困ったね。増援も出てこないようだし・・・」


と思案し始めたところでカイザーたちがやってきた。


「マスターアルク、マスターアテナ及ビ、マスターアルマヨリチャットヲ開クヨウ要請ガアリマシタ。」


あの二人が?・・・戦闘が終わったのか。おそらく・・・


【メニュー】を開き、チャットを接続する。


『あ、アルク?アテナだけど今大丈夫?こっちは亡霊武者大将以外全部倒したわよ。』


『アルクさん、アルマです。こちらもです。ですが亡霊武者大将は倒れたまま消える様子が無いんです。』


やはりそうか。他の場所もここと同じ状況になったらしい。通りでさっきから静かなわけだ(笑)。・・・と、それはともかくこれからどうしたものか・・・


と考えていた所に今度はアナウンスが。


『第1勝利条件をクリアしました。次のフェーズへと移ります。』


・・・次のフェーズ?


「・・・!?アルク!!」


ラングの声に顔を上げるといつの間にか亡霊武者大将が立ち上がっていた。両腕を天に掲げると・・・


「ヴオオオアアアアアアアーーーーーーー!!!」


初めて聞く亡霊武者の耳をつんざくような大音量の叫び声。思わず耳を塞ぐ俺たちに構わず、雄叫びを上げた亡霊武者大将は、黒い霧のような物に包まれ、そのまま不死山のほうへ飛んでいってしまった。


『・・・ねぇ、こっちの亡霊武者大将が突然叫んだと思ったら黒い霧みたいなのに包まれて不死山のほうへ飛んで行っちゃったんだけど?』


『・・・こっちもです。一体どうなっているのでしょう。』


それは俺もさっぱりだ。ラングも首を振っているので分からないみたいだな。


「・・・うーん、俺たちはどうすれば良いんだ?あの亡霊武者大将を追っかければいいのか?それとも一旦集合すべ・・・!?」


俺はそれ以上の言葉を喋る事ができなかった。揺れているからだ、地面が。


「違うよアルク!あれを見てくれ!!」


ラングが指差す方向、そこにあるのは不死山。その頂上から黒い煙が上がっていた。

作者のやる気とテンションを上げる為に


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