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【WEB版】最強の底辺魔術士 ~工作スキルでリスタート~  作者: 萩鵜アキ
二部一章 それぞれの思い

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便衣兵とセイセイ

 犬歯をむき出しにした兵士が、腹に手を入れる。

 その行動が実を結ぶ直前。


「死ねテミ――すぅぅぅぅ!?」


 素っ頓狂な声を発しながら、兵士はアルトが生み出した【グレイブ】の中に落ちていった。


 やや間があり、

 ――ズゥゥゥゥン!!

 腹を揺らす鈍い音と共に地面が軽く揺れた。


「さて――」

「さてじゃねぇよ! お、おいおいなんだいまの!?」


 アルトが気を緩めると、なにも判らない皇帝があたふたした。


「あれは斬首作戦を行った実行部隊の1人ですね」

「ってこたぁ、俺、いま殺されるところだったのか?」

「ええ、セーフでした」

「……あっぶねぇ!!」


 アルトの言葉で、テミスが額に汗を浮かべ、胸に手を当てて猫背になった。


「陛下! いま物々しい音が――!!」


 天幕の外からフランが駆け込んできた。

 どうやら彼女も気付いたらしい。

 この場所で、なにが起ろうとしていたかが。


「おい、まず説明しろ。これは一体どういうことだ?」


 フランがいるとテミスは皇帝然とするらしい。

 アルトの前との違いに、若干笑いそうになる。

 そこを目ざとく見つけたテミスが、キッとアルトを睨み付けた。


「は。実はシュルト侵攻の状況が、現在も続いているようなのです」

「シュルトの侵攻ってぇと……あれか。国境を越えた兵士がシュルトの中で暴れ回ったっつぅ」

「はい」


 その件は、ここへ来てからそれとなくアルトも調べたため知っている。

 どうもアドリアニ兵はアヌトリアを攻めるに辺り、世界的に認められているフォルセルス教の巡礼を利用したらしい。


 巡礼であれば、国境を越えることも通常の入国より遙かに楽に行うことができる。

 そしてなにより、フォルセルス教が国宗であるアドリアニから大量に流れ込んでも、不審ではない。


 真っ向勝負では決してアドリアニに勝機はない。

 故にアドリアニは巡礼者を装って兵士を大量にシュルトへと送り込んだ。

 所謂便衣兵という奴である。


「最低だな……」


 便衣兵を用いてシュルトを内部から食い破った兵士達は、難民に紛れ込んで牙を研いでいた。

 そして皇帝が訪れた今日。その命を奪うべく、斬首作戦を実行した。


「そうだ、さっきの言葉だが――」


 テミスがリオンを見て苦笑した。


「一般兵が国王を殺せねぇわけじゃねぇ。抜け道はあるんだぜ?」

「えっ?」

「基本、神に選ばれたなんて言ってるが、災害には勝てねぇな。火事に遭ったら普通に焼け死ぬ。それと同じ理屈で、目の前で爆弾が爆発したら爆風に巻き込まれて死ぬ」

「はぁ? 爆風で殺すなんて卑怯だろ……」

「クックック。まあそう言うなよ。国家転覆を企むような奴等だぜ? 相手に真っ当な戦い方は望めねぇだろ」

「そうだけど」


 納得出来ないのだろう。リオンは唇を尖らせる。


「と、いまの出来事でなんとなくこの宿営地の状況が判った。フラン、現在の被害はどの程度だ?」

「日に3度は強姦、強盗、殺人が起ります」

「うちの軍か?」

「いえ、それが……」

「なるほど便衣兵か」


 テミスは顔をしかめた。


 木を隠すには森。


 民間人の格好をしている暗殺者が、民間人に紛れて【気配遮断】を行えば、いくら兵士とはいえ見失ってしまう。

 兵士の【気配察知】能力が問題なのではなく、便衣兵の存在が問題なのだ。


「王は死んだが、兵は未だに動き続ける。実に厄介な置き土産を残しやがったなボティウスめ……」

「申し訳ありません陛下」

「いや、お前が悪いわけじゃない。下を向いてちゃ救えるもんも救えねぇ。とりあえず顔を上げろ。前を向け。すぐに対策を取るぞ」

「は…………はっ!」


 皇帝の言葉に、フランの割れた眼鏡の奥で光が滲んだ。


「まずは宿営地全員のブレスレット調査をするか。そこから犯人を絞り出し『セーイ』」


 せ、せい!?


『セイセイセーイ!!』

「ふは……」


 脳内にはっきり思念が伝わった途端に、息と共にアルトの体から力が抜けた。


 そういえばケツァムのイノハで、オリアスの思念が一度アルトに伝わっていた。

 ただあのときは一方通行だったが、どうもそこで宝具がつながりを持ってしまったようだ。


『フンハッ! セーイ。セイッ!』


 だめだ。この「せいせい」を聞くと、脳内が勝手に奴の筋肉ポージングが補完されてしまう!

 モストマスキュラーで迫り来るオリアスの映像を必死に打ち消し、アルトはしぶしぶ思念を返す。


『お久しぶりですオリアスさん』

『セーイ。久しぶりだな変態アルト!』

『……ちょっと、何故ボクを変態と?』

『聞いてないのか? セーイ。教皇庁指定危険因子No7の癖に、お前には二つ名が付与されたんだぜ?』

『はいっ!?』

『アルト、マジなところ、やばいぜ』


 一転して真剣な声色になったオリアスの思念を聞いて、アルトは唾を飲み込んだ。

 どうも思念は言葉だけではなく、若干の感情も伝えるらしい。

 彼の緊張感が僅かに伝わる感覚がある。


『……ヤバイ?』

『セイ。ユステルの軍艦が、イノハに入港した。奴等、アヌトリアに侵攻するぞ!』


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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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