今夜星を見に行こう
次の日、奈々子さんの体温を測ると、36,9度まで下がっていた。奈々子さんはこれなら学校に行けると言っていたが、僕はまだ病み上がりだから念のためもう一日休むことを言ったが、奈々子さんは大丈夫と言って僕の言っている事を聞いてはくれなかった。でも新聞配達の仕事は休んで貰った。
僕は学ランに着替えて三人はセーラー服を着て、学校へと出かけていった。
僕は奈々子さんの事が心配だった。病み上がりなのに無理をする奈々子さんが。
学校に行くにはいつも自転車を使って登校している。
今日も一日が始まろうとしている。奈々子さんの病み上がりが心配だったが今日も一日頑張れる予感がしていた。授業はみんな、やる気のない生徒ばかりであった。まともに授業を受けている者は僕や西宮さんに何人かの生徒達だった。
でも勉強をしっかりと聞いている人が何人かいることを知ると、僕達はやる気になれる。よし、今日も一日しっかりと勉強するぞ。でも僕が行く高校は通信制で学校の授業は必要ないからと思うとやる気を無くしてくるが、以前光さんが言っていたように勉強はちゃんとやりましょうと言う言葉が脳裏に焼き付き、そう思うと勉強に拍車がかかる。
そうだよ通信制の学校に行くなら学問は必要ないと言っていたが、そうは言っていられない。学問もしっかり学んで良い大人になりたい。そして小説家兼絵師の夢を絶対に叶えてやると心に決めているのだ。
一時間目の授業は体育だった。この寒い中の体育は風邪をひいてしまうんじゃないかと思うほど寒い。僕は体育が一番苦手な教科だった。でもテストでは一番を取っているため、勉強は誰よりも負けない自信はあるが、この体育の教科は短パンと半袖で寒い中外に出て走るで一番苦手だった。新聞配達の仕事で運動は慣れていると思われがちだが、新聞配達の仕事ではちゃんと暖かい格好をしてやるのだから、無理はない。
今日の体育の課題はマラソンだった。教師はいい加減で、とにかく校庭を十周走った者から好きな事をしていいという。とにかく僕はマラソンが終わったら、休んでいようと思っている。
マラソンを走り終えると、女子はバスケをしている。その中で西宮さんは小さいながらも凄い活躍をしている。僕も負けていられないと思って、男子はドッチボールをしている。僕も入れて貰い、参加することにした。西宮さんがあんなに活躍しているのに僕だけ何もしないなんて、それは何か負けていられないような感じがした。
ちなみに安井は見学をしている。あいつはもういじめはなくなった物の誰も相手をする人間はいなくなってしまった。ざまあみろと言いたいところだがなぜか不憫に思えてきた。でもあいつは僕に散々嫌がらせをしてきたからな。それは当然だと思う。
それよりも僕は西宮さんが頑張っているのに、僕も負けていられないと思った。ドッチボールで、僕はボールを投げつけられて、顔面に当たってしまって、鼻血を出してしまった。投げた側からはわざとではなく、投げた人にひどく謝られ、僕は許した。そして僕は情けないながらも保健室に行って、鼻血が止まった頃にはもう体育の時間は終わっていた。
僕は鼻にテッシュを詰め込みながら次の授業を受けた。僕の姿を西宮さんに見られて笑われながら、大丈夫なんて言っていたが、僕はムッときて大丈夫だよと素っ気なく言った。
そうだ。忘れていた。奈々子さんは大丈夫か?奈々子さんの所に行って風邪は大丈夫か様子を見に行くと、僕の鼻にテッシュが詰め込まれている姿を見て奈々子さんはひどく笑っていた。ムカついたが、どうやら奈々子さんは風邪の心配はないみたいだ。それはそうと、今日からまた新聞配達の仕事もやれそうだな。もう奈々子さんは大丈夫だ。
二時間目の授業が終わり、三時間目四時間目と終わり、給食も食べて、終わり、五時間目も終わった。
授業が終わって帰ったときには、午後三時を示していた。今日は僕達は西宮さんも斎藤さんもいることだし、新聞配達の仕事である五時まで小説と勉強の復習に励んだ。授業はまともに取っていて、ちゃんと受けているから頭の中には入っている。本当に西宮さんと斎藤さんと奈々子さんのやる気オーラを感じながら僕は勉強に励んだ。
奈々子さんの風邪は体温計で調べてみたが、36,5度を示していた。もう大丈夫だと思って新聞配達の仕事をしっかりとこなしてくれるだろうと思った。勉強をする時間はアッという間に過ぎてしまい、僕達は新聞配達の仕事に出かけていった。
新聞配達は今日は僕がわがままを言って社長に奈々子さんと組ませてくださいと言って、僕と奈々子さんが組み、西宮さんと斎藤さんが組むことになった。今日の賭けはなしにしようと僕は西宮さんと斎藤さんに言って置いた。
「ちょっとアツジ、どうしてあたしにそんなにまで気を使うの?」
「それは奈々子さんが病み上がりだからだよ」
とはっきり言ってやった。
「あたしはもう大丈夫だよ」
「大丈夫じゃない。ここでまた奈々子さんに無理されたら、また僕達の手を煩わせることになるでしょ」
「・・・」
奈々子さんは悔しながらも僕の言うとおりだと思って、黙って納得してくれたみたいだ。
そして新聞配達は始まった、正直言うと今日は勝負事がないので、それに四人そろっているしあまり気合いの入った新聞配達は出来なかった。
新聞配達の仕事が終わったとき、配達所に戻ると、僕達は社長に遅いと怒られてしまった。僕達は素直に謝った。やっぱり勝負事が無いと僕達は本来の力を発揮することは出来ないみたいだ。
今日も西宮さんと斎藤さんは僕と奈々子さんの家にいて共に勉強をする事になった。今日は星のテーマだった。理科の先生に冬のダイヤモンドを教わり、今度それが試験に出ると言っているのだ。西宮さんと斎藤さんは星に興味が無いのか、冬のダイヤモンドを今日知ったらしい。
「西宮さんに斎藤さん。星を見に行かない。今日習った所の冬のダイヤモンドが見れるよ」
「へーそれは面白そうね」
と言って星座早見盤を取り出して今日の日付と時間を合わせた。
「でも西宮さんに斎藤さん。都会の夜は一等星しか見えないし、それも星座早見盤が無くても簡単に見れるよ」
「そうなの?」
時計を見ると午後七時を回っている。今すぐに見に行こうと言ったら、丁度その時に桃子と光さんが僕達に料理を作りにやってきた。
「ヤッホーお兄ちゃん。昨日は奈々子さんが風邪をひいてしまったみたいだけれども、大丈夫?」
「あたしは大丈夫よ」
と奈々子さんは言った。
「これから出かけるつもりだったの?」
光さんが言う。
「はい。星を見に行こうと思って」
「だったら、見ていらっしゃい。帰ってくる頃にはご飯の支度は整っていると思うからさ」
「じゃあ、西宮さんに斎藤さん、それと奈々子さんも星を見に行こう」
「星って何だかロマンティックだよね」
西宮さんがわくわくしている。
僕達は星が見える真っ暗闇の土手まで向かっていった。そこから見える星は冬のダイヤモンドである一等星しか見えない。
「あらー、一等星しか見えないね。でもオリオン座はしっかりと全体が見えるよね」
都会の星は一等星しか見えない。何か星座早見盤では双子座の形や子犬座の形や大犬座の形を見れるように描かれているが、寒い夜空でそれらの一等星しか見ることは出来ない。いったい何なのだろう。今度みんなで星が見える夜空に向かって登山に行くのはどうか聞いてみると、みんなはそれは面白そうだと言っていた。




