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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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体調不良の奈々子

 朝起きると午前三時で今日はおまけに外は土砂降りの雨が降っている。これは新聞配達の支障が出てしまうと僕は思った。そして僕に続くように西宮さんと斎藤さんと奈々子さんも起き始めた。


「何よこの土砂降りの雨は?」


「どうやら今日は新聞配達の仕事がハードな事になりそうだよ」


 僕達も雨が降っているからと言って、負けるわけにはいかない。今日も僕は四人分の朝食を作って、土砂降りの雨の中、傘をさして新聞配達の仕事に出かけていった。冬の雨は身に堪える。この土砂降りの雨はしばらく止むことはないように思える。


 なぜか雨だと僕はなぜか憂鬱な気分になってしまう。それは三人も同じかもしれない。この土砂降りの中傘をさしても濡れてしまう。新聞配達所にカッパを借りることが出来る。とにかく新聞配達の仕事は雨でも続行しなければならない。


 新聞配達所に到着して僕達は雨合羽を着用した。そしていつものように新聞に一部ずつチラシを入れる作業に移った。


 今日は僕と奈々子さんがペアを組み、西宮さんと斎藤さんがペアについた。


 奈々子さんの様子を見てみると何か調子が悪そうだった。奈々子さんは大丈夫だと言っていたが、彼女は無理をする性格なので僕が彼氏としてしっかりとサポートをしなければならない。外は雨、容赦なく降り続ける。


 そして新聞配達の仕事に出かけていった。この雨の中勝負所じゃないかもしれない。奈々子さんの顔が真っ赤だ。それに容赦なく降り続ける冬の雨。奈々子さんは大丈夫なのか心配だった。


 都営住宅の団地に到着して僕と奈々子さんは二手に分かれて新聞配達の作業に移った。奈々子さんの体調を見てみると、本当に体調が芳しくなさそうだ。そんな事を心配しながら奈々子さん大丈夫かなと思いながら、都営住宅の中に入り、新聞を決められた場所に入れていく。


 新聞を入れ終わる頃には、奈々子さん遅いなと思いながら、団地の前に自転車を置いてあるところで待っていた。そして奈々子さんは戻ってきた。それに凄く辛そうにしている。奈々子さんに大丈夫と言ったが、大丈夫に決まっているじゃないと怒られてしまった。


 そして新聞配達の仕事は終わって、僕達は帰る途中に、奈々子さんは自転車ごと倒れてしまった。


「奈々子さん大丈夫?」


 奈々子さんは息を荒くしてとても辛そうにしている。


「大丈夫」


 奈々子さんのおでこを触って見ると凄い熱があると分かった。


「奈々子さん全然大丈夫じゃない」


 僕がスマホを取り出して救急車を呼ぼうとすると奈々子さんは怒りだし、そんなに大げさな事じゃないわよと怒られてしまった。奈々子さんは立ち上がり、倒れた自転車を起こして自転車にまたがり、フラフラな状態で配達所に戻っていった。僕はその後ろ姿を見ながら、奈々子さんを心配しながら、新聞配達所に戻っていった。


 配達所に戻ると、西宮さんと斎藤さんはもうすでに戻っていた。


「今日は私達の勝ちね」


「それどころじゃないよ。奈々子さん凄い熱があるんだよ」


 西宮さんが奈々子さんのおでこに触ると凄い熱だと驚いていた。


「今日はジュースは良いから、早くあなた達の家に戻ろうよ」


「救急車を呼んだ方が良いんじゃない?」


「それは大げさよ、とにかく奈々子にはちょっと無理させてしまうけれど、自力で自転車であなた達の家に戻った方が良いわ」


 奈々子さん。もう少し頑張ってくれ、そうすればすぐに楽にしてあげるから。


 そして僕と奈々子さんの家に到着して、奈々子さんは息を荒くしながら覚束ない足取りで僕と奈々子さんの家の中に入った。家の中に奈々子さんが入るとすぐに倒れてしまった。


 この冷たい土砂降りの雨の中、奈々子さんも僕達三人も服はびしょびしょだった。僕が着替えをさせるわけにはいかないから、西宮さんと斎藤さんに着替えをさせて貰った。


「みんな大げさよ」


 何て奈々子さんは言っていたが、今は一大事だ。


「奈々子さん、今日は学校休もう」


「だからあたしは大丈夫だって」


「大丈夫じゃないって奈々子さん凄い熱だよ!」


 奈々子さんに体温計を計ってみる。すると39,5度の熱があった。これは本当にやばい。

「学校に行く支度をしなければね」


「奈々子さん学校どころじゃないよ。とにかく奈々子さんは横になっていて」


「だから大丈夫だって言っているじゃない」


「大丈夫じゃないよ!奈々子さん僕達に心配をかけるのだけは止めてよ。そうやって無理して体を壊したらどうなると思っているの!?」


 僕は奈々子さんに説教をした。


 ちょっと言い過ぎたかもしれない。奈々子さんは泣きそうな顔をしていた。でも奈々子さんは大人しく僕達の言うことを聞いてくれた。


「今日は僕も学校を休んであげるから、ちゃんと療養して」


「何でアツジまで学校を休まなければならないのよ」


 だって奈々子さんには僕しかいないから、と言ったら奈々子さんは怒るから言わなかった。とにかく今日は安静にして僕がついていてあげるしかない。

 早速奈々子さんには布団に入って貰った。


「アツジ、学校を休んでまで、あたしの看病をしなくても良いよ」


「良いから良いから、僕のことは気にしないで」


 すると西宮さんと斎藤さんは何か出来ることはないかと聞かれたが、二人は学校に行って、と言って置いた。でも西宮さんも斎藤さんも学校を休むと言っている。気持ちは嬉しいがそこまでしなくたって僕が見ているからと言って二人にはいつも通り学校に行ってもらうことにした。


 西宮さんも斎藤さんもさすがは友達だ。本当にこういう時に限って僕は嬉しくなってしまう。そして学校に行く時間になり西宮さんは何かあったらすぐにスマホにかけてと言って西宮さんと斎藤さんは学校に行ったのだった。それに西宮さんは僕と奈々子さんは共に風邪になっている事にしてくれて僕は助かった。これで気兼ねなく休むことが出来る。


 僕はずる休みではないんだ。僕は奈々子さんの看病をしなくてはいけない。それと奈々子さんには病院に行ってもらうことにした。でも今は八時だ。病院は九時に開くから、僕が子供の頃良く行っていた良い病院がある。でも奈々子さんは身寄りがなく保険はきかないから十割負担になるだろう。


 でもそんなことは言っていられない、奈々子さんには病院に行ってもらうつもりだ。僕は病院が開くまで僕と奈々子さんの家で待機することにした。奈々子さんには栄養を取って貰うために、卵粥を作ってあげることにした。良く僕が子供の頃に母親が作ってくれた物だ。


 卵粥が出来上がり、僕は奈々子さんが眠っている場所まで行って、奈々子さんに卵粥を食べてもらうことにした。


「奈々子さん。起き上がれる?」


「起きられるわよ!」


 ちょっと切れ気味の奈々子さん。


 僕はお椀に盛った卵粥をレンゲですくって、奈々子さんの口元に運ぼうとしたら、奈々子さんは怒り出して「自分で食べられるわよ」と言って卵粥を盛ったお椀とレンゲを渡した。どうやら少し元気が出てきたのかもしれない。


「それ食べ終わったら、病院に行くよ」


「あたし、保険書何て盛っていないよ。もしあたしが病院に行ったら、十割負担になっちゃうじゃない」


「背に腹は代えられないよ。良いよ十割負担でも」


「何を言っているのよ。そんなことをしたらあたし達大損じゃない。あたしは絶対に医者なんて行かないからね」


「ダメだよ!医者に行かなきゃ!」


「医者なんて必要ないわよ。風邪だったら寝ていればすぐに治るわよ」


「ダメだって医者に行かなければ」


「あたしだったら・・・」


 咳き込む奈々子さん。これはかなりの重症だ。必ず僕は奈々子さんを医者に連れて行く。



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