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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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熱くなる心

 西宮さんに僕がひどく落ち込んでいるところを看破され、僕は事情を言うまいか言うか迷ってしまった。西宮さんが心配しているのに、ここで喋らなかったら、西宮さんは気を悪くしてしまうかもしれない。だから僕は西宮さんに事情を話した。


「なるほど、あっ君のアクセス回数が減って、しかもネット小説の中には五千回のアクセス回数を占めるものまでいるのね」


「うん。その五千回数の小説を読んでみるとインパクトがあって本当に面白いと思えたんだよ。それに僕が書いている小説はただ書いているだけの三文小説だと言うことに気がついてしまって・・・」


「ふーん、でもそれに気がついたんだから大きな進歩だとあたしは思うんだけれどもね」


 大きな進歩か、なるほど、西宮さんに相談して良かったと思えた。それに僕達は小説を投稿してまだ間もない。だからこれからは本当に面白い小説を書いて書きまくるしかない。でも僕は面白い小説を書こうと意識すると書けなくなってしまうんだよな。


 そんな事を悩みながら、僕と西宮さんは二手に分かれて、新聞配達の仕事をした。本当に面白い小説を書くにはどうしたら良いのか僕は迷ってしまう。僕には才能がないのか?本当に親父の言う通り、世の中そんなに甘くはないと痛感させられる。


 新聞配達の仕事が終わって、今日は僕と西宮さんは負けてしまった。敗因は僕の悩みだろう。それで新聞を配るのに小説のことで一喜一憂して悩んで勝負に負けてしまったのだ。でも僕は負けて、今日は悔しさよりも、どうしたらアクセス回数を増やせるインパクトのある小説が描けるのか悩んでしまい苦しんだ方が大きかった。


 僕の夢は小説家兼絵師だ。でも世の中はそんな大きな夢を叶えられるほど甘くはないと痛感させられたのだ。でもまだ始まったばかりだ。それに僕は若い。あのアンパンマンの作者のヤナセも69歳になって花が開いたのだから。そう思うとまだ僕にはたっぷりと人生の時間はある。


 早速帰って、どのような小説が受けるのか僕は必死に考えた。三人は勉強に専念しているが僕はどうすればこの五千アクセスを超えるような超大作が描けるのか考えた。でもいざ面白い物を描こうとしても、小説は進まなかった。


「どうしたのよ。アツジ、今日は勉強は?」


 そうだ。勉強もしなくてはいけないんだった。でも今は勉強よりも僕の夢である小説家兼絵師の方が大事で、僕は小説を書く事に専念した。どういう感じで小説を描けば五千アクセスを超えるような大作が生まれるのか僕はそれだけの事を考えていた。


「アツジ、勉強は、それに小説だって全然進んでいないじゃない」


「うるさいな。分かっているよ!」


 と僕は奈々子さんに感情的になってしまった。

 僕は奈々子さんに怒られるか、奈々子さんを悲しませたか、ちょっと言い過ぎたと反省してしまう。


「あっ君は五千回数を超えるような超大作を描こうと必死なのよ。だからそっとしておきなよ」


「アツジ、五千回数が何だか知らないけれど、ちょっとは頭を冷やしたら?そんな五千回数を超えようとする小説にこだわりすぎだよ!」


 そうだ。奈々子さんの言うとおりだ。僕は少し頭を冷やした方が良いのかもしれない。だから僕は三人を残して散歩に一人で出かけた。冬の散歩はやっぱり冷えるな。でも奈々子さんの言うとおり、頭を冷やすのはちょうど良いかもしれない。


 僕の夢は小説家兼絵師だ。でもそれも始まったばかり、僕はぼんやりと遠くを見つめていた。でもそれも始まったばかりじゃないか、どうしたら面白い小説を描けるようになるのか僕は必死で考えた。でもいくら考えても答えは見つからない。僕は思いきってネットにアップされている小説の書き方を見てみた。


 その内容を見てみると、小説をたくさん読んでたくさん書く事だと書いている。


 たくさんの小説を読むことかあ、本当にそれしかないのだろう。たくさん小説を読んでたくさん本を読む、これからは小説を読む時間の方を優先的にやった方が良いと思った。


 学校に行く時間になり僕は家に戻り、四人で支度をして学校に向かった。とにかく今日は学校が終わったら、図書館に行こうと思う。


 学校では学校で授業を受けているのだが、最近勉強をおろそかにしてしまっているので、数学の小テストでは少し分からない問題があることがあった。あれだけ勉強したのに、この方程式を解けないなんて僕は情けないと思った。


 勉強もおろそかにしてはいけないだろう。それにこの小テストで西宮さんと競っていたのだった。小テストを回収され、絶対に僕は西宮さんに負けたと思った。

 そんなこんなで休み時間になった。


「あっ君、そんなに五千回数を超えるような小説を書くつもり」


「書きたいよ、僕の小説はっきり言ってあまり面白くないからさ」


「私はあっ君の小説面白いと思うんだけどな」


「西宮さん本当にそう思っている?」


 僕は疑いの目で西宮さんの目を見つめた。


「本当だよ。メモリーブラッドだっけ、相手の血を吸うとその相手の能力を奪える何て発想は凄いと思うんだけどな」


 西宮さんは僕の小説をよく読んでいる。それだけで僕は嬉しかった。


「西宮さん!」


「何!」


「西宮さんの夢って何なの?」


「学校の先生になることかな、それと先生兼小説家と言う夢も持っている」


「西宮さんは学校の先生になりたいんだ。それはともかくとして、西宮さんは悔しくないの?学校の先生にもなって小説家にもなりたいんでしょ。西宮さんのアクセス回数は七十ぐらい何でしょ」


「確かに悔しいと思うけれど私は悩むより燃えるな。世の中には私達以外に凄い人がいることを」


 なるほど、五千回数を一日にたたき出す正体不明の小説家に対して燃えるかあ、じゃあ僕もそれを目指して燃えれば良いんじゃないかと思った。でも西宮さんと僕は違う、けれども僕も西宮さんの意見を聞いて燃えてきた。もっと面白い小説を描きいつか五千回数を超えるような小説を僕は書いてみせる。


 学校が終わって、僕は自転車で図書館に向かった。図書館に行きあらゆる本を読み尽くしてやろうと僕は必死だった。


 図書館に到着して、光さんはそこにいた。


「光さん、こんにちは!」


「あら、あっ君、今日は一人なの」


「はい図書館の本を読んで、小説の腕を上げようと思って」


「へーそれは良い心がけね」


「とにかくネット小説のアクセス回数が五千を超える人の物語を読んで僕はまだまだ小説家としての素質が備わっていないことに気がついたのです」


「あっ君、私の小説のアクセス回数を見てみる?」


「光さんもネット小説に投稿していたんですが!?」


「ええ、もう一年になるけれど、良ければ読んでみる?」


 光さんのアクセス回数を見てみると、とんでもないことに一万を超えている。


「こ、これは光さんの小説が一日に一万を超えるときがあるんですか?」


「光さんはどうしてこんなにもアクセス回数が高いんですか?」


 ネットのツイッターで見た、五千を超える人がいることに僕は驚きを隠せない。


「光さんの小説、見せてくださいよ」


「良いわよ、あなた達と同じサイトだから、ペンネームで柴田盟で検索してみると出てくるわ」


 僕は言われた通り、光さんのペンネームである柴田盟を検索してみた。すると柴田盟に関する小説が掲載されていた。他にも光さんは驚いたことに挿絵などを描いている。光さんは僕が目指している、小説家兼絵師だと言うことに気づかされて僕のライバルだと感じてしまった。


 光さんがこんなにも凄い小説家だなんて知りもしなかった。

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