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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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行き詰まるアツジ

 明日も新聞配達と学校だ。学校は明日から本格的に始まるだろう。明日も西宮さんや斎藤さんと新聞配達で会うことが出来るだろう。そう思うと心の底からわくわくとしてきた。今が本当に楽しい時だ。でもいつまでこうしていられるのだろうか。僕達は後一年でそれぞれの道を歩まなければならなくなる日がやってくる。


「お兄ちゃんに奈々子さん、シチュー出来上がったよ」


 桃子がそう言って、桃子と光さんは食卓にメインのシチューと丸いコッペパンにサラダを持ちにやってきた。


「いつもすみません、光さん」


「良いのよ、私は頑張る人の応援をしたいだけだから」


「何よお兄ちゃん。うちの事に対してはお礼はないの?」


「分かっているよ、桃子。桃子もいつもありがとう」


 すると桃子はにやけだして、喜んでいる様子だった。この後も光さんが桃子の勉強を見てあげるのだろう。光さんは大丈夫なのか?いつも僕達にご飯を作ってくれてそれに桃子の勉強を見ている。それに図書館の司書のバイトをしている。そんな光さんが僕は心配だった。


 でも話によると、桃子がやる気になっていると、光さんもやる気になりレポートをこなしていると言った。桃子も光さんも互いにライバル同士だったなんて思いもよらなかった。だから僕達が光さんの心配をする必要などいらないのかもしれない。


 そして食事が終わり、桃子と光さんはこれから図書館に行って勉強をするつもりだ。僕達も負けてはいられないと思って、僕と奈々子さんは互いに闘志を燃やし合い、互いに勉強をした。


 でも僕は通信制の美術学校に行くのだから、そんな勉強必要ないんじゃないかと思ったが、そんな事も言っていられないだろう。僕は僕で勉強も小説も絵も出来るだけの事はやる。奈々子さんは僕と同じ道に行くと言っていたがあまりそれはよろしくないんじゃないかと思って、その事で奈々子さんに言おうとしたがうまくタイミングが合わない。


 奈々子さんの勉強の実力なら、どこか値段の安い都立の高校に進学できるかもしれない。だからそんなに勉強が出来るなら、どこか値段の安い進学校に行けば良いのかもしれない。だから僕は思いきって奈々子さんに言うことにした。


「奈々子さん。奈々子さんのレベルならどこか授業料の安い進学校に進めると思うんだけれども、そういう所には興味ないの?」


「アツジ、あなたそういう所に進学するつもりだったの?」


「いや、僕は通信制の美術学校に行くつもりだから」


「じゃあ、あたしもそうするよ」


「でも奈々子さんは、絵に何て興味ないでしょ」


「興味ある。あたしはアツジと同じ道を行く!」


 奈々子さんはきっぱりと宣言してしまった。

 だから僕はムキになってしまい。


「本当にそんなんで良いの?奈々子さんは言っちゃ悪いが、僕のように絵はうまくないじゃない」


「何よアツジ、あたしはアツジと同じ道に行っちゃいけないの?」


「いけないとは言っていないけれど、本当にそれで良いのかって話だよ」


「アツジクドいよ。あたしはアツジと同じ道を行く」


 奈々子さんは今にも爆発しそうなほどいきり立っている。


「本当にそれで良いの?」


 僕は冷静に奈々子さんに言う。


「うん。あたしはアツジと同じ道を行く」


 奈々子さんは本気だ。本気で僕と同じ道を行くと目がそう言っている。本当にそれで良いのかと奈々子さんに言いたいところだが、本人がそう言うなら仕方がない、恋人の奈々子さんと同じ道を行くのも良いのかもしれない。


 奈々子さんは本当に僕のことが好きなんだなあと思った。だって僕と同じ道に行くと言っているのだから。本当にそれで良いのかと言ったら、それで良いと言ったんだ。だったらもう僕に止める権利もなくなる。それに奈々子さんが一緒ならまた闘志を燃やし合い、いつでもライバル関係を築きあげることが出来る。


 九時を回り、僕達は寝る時間になってしまった。奈々子さんと闘志をぶつけ合いながらの勉強は本当にあっという間に時間という物は過ぎ去ってしまう。今日は西宮さんと斎藤さんはいないので違う布団の中で眠ることになった。


 本当に勉強も小説も絵も苦にならなくなっている。以前いじめられていた時は、安井達に試験の時、零点を取らされていたことを思い出すと腹が煮えかえるほどの怒りに震え上がりそうだが、でも今は違う。こうして去年の期末では僕は一番になった。正直勉強はあまり面白くないがこうして奈々子さんや斎藤さんに西宮さんと闘志を燃やしながら勉強していると勉強にも小説にも絵にも拍車がかかってくる。





 朝起きると、時計は午前一時を示していた。今日は早く起きすぎたのかもしれない。もう一度眠ろうとしたが、もう一度寝てしまうと二度寝になってしまい、新聞配達の時間に起きる三時に起きられなくなってしまうと思うので、僕は外に出て星を見上げた。


 それと僕が投稿した小説のアクセス回数を見てみると、42アクセスになっている。僕はひどく落ち込んだ。以前は64だったのに今日はそれよりも下がっている。いったいどういう事になっているのだろう。他のアクセス回数をツイッターで調べてみると、一日に五千回数をしめている者もいる。どうしたらそんなにアクセス回数を会得出来るのか、きっと実力があるのだろう。試しに僕は星空の下で、その五千回数を超える大作の小説を見ることにした。


 その超大作を見てみると、僕には面白いとは思えなかった。どうしてこんなに面白くない小説が五千回数を取っているのか疑問に思った。きっとファンに面白いと思われる要素があるのかもしれないと思って見てみると僕の小説の方が大言壮語だが面白いと思ってしまう。


 本当にどうなっているのだろう?試しに僕が書いた小説を見てみると、面白いと思う。でもこの五千回数を超える超大作になぜ勝てないのだろうか。すでに圧倒的な数を取られてしまっている。その謎を解くために僕はその五千回数を超える小説を読み続けようとした。そうしたら、回数を重ねるごとに本当に面白い小説だと言うことが分かった。この一話分の投稿に五千回のアクセス回数の小説はインパクトがある。


 僕の小説にはインパクトがない。ただ書いているだけで、内容の面白さを感じられない。僕はひどく落ち込んでしまった。そんな事をしているともう三時を示していて、僕はとりあえず家に帰る。すると、寝ぼけまなこの奈々子さんがぼちぼちと起きていた。


「おはよう奈々子さん」


「おはようアツジ」


 僕は奈々子さんと僕の朝ご飯を作って、それを二人で食べて新聞配達の仕事に向かったのであった。


「アツジ、何かあったの?何かいつもと違う感じだけれども」


「いいや、何もないよ」


 もうすでに僕が落ち込んでいることを看破する。でも隠しているとまた心配されるので僕は新聞配達の仕事が始まったら、奈々子さんに話すつもりだ。


 配達所に到着するとすでに斎藤さんと西宮さんはもうそこにいた。


「おはよう。あっ君に奈々子」


 西宮さんが元気良さそうに何も悩み事も感じられない笑顔で僕達に挨拶をしてきた。それに斎藤さんもいつも西宮さんとは違いおとなしめだが、この人にも悩み事を感じられない笑顔で挨拶をしてきた。


「二人とも相変わらずに元気が良いね」


「当たり前でしょ。今日は私達は誰と組むのかしら?」


 今日は誰と組むのか社長に聞いてみると僕と西宮さんペアと斎藤さんと奈々子さんのペアを組んで仕事が始まる。新聞を一部ずつチラシを入れて、早速僕と西宮さんのペアと斎藤さんと奈々子さんのペアで仕事をする事になった。


「あっ君、今日はあまり元気がないみたいだけど何かあったの?」


 と西宮さんにも僕の気持ちを看破されてしまった。


「どうしてそう見えるの?」


「だってあっ君すぐに顔に出てくるんだもん」

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