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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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父親の思い

 新聞配達も終わり、僕達は帰って、勉強をした。

 新聞配達の仕事は僕と西宮さんの勝ちであった。

 いつものように僕と西宮さんは斎藤さんと奈々子さんにジュースをおごって貰った。


 時計は午前七時を示していた。

 そろそろ勉強も切り上げて、学校に行かなくてはいけない。

 今日は始業式だから、すぐに学校は終わるだろう。


 早速僕達はシャワーをそれぞれ浴びて、制服に着替えて、自転車で学校に向かった。

 学校に到着すると、僕達が一番乗りであった。

 僕と西宮さんは同じクラスだから、何か二人きりになると緊張してしまう。


 また何か誘惑的な事をしてくるんじゃないかと心構えをしていた。


「クラスには二人きりだね、あっ君」


「そ、そうだね」


「何をそんなに緊張しているの、私は何もしたりはしないよ」


「そう」


 それを聞いて安心したが、緊張していることを見破られることに僕はその事にしゃくに障られた感じがした。


 西宮さんは自分の席に座って、読書をしている。

 僕も負けていられないと思って読書をしようとしたが、あいにく自分の読みたい本を持っていなかったので、国語の教科書を読むことにした。


「あっ君って本当に負けず嫌いなんだね」


 僕が本を読むことに西宮さんに感化されて読んだことがばれてしまった。


「・・・」


 僕は何も言い返せずに、黙って国語の教科書を読んでいた。

 読んでいたのだが、西宮さんに茶々を入れられて、全く頭に入ってこなかった。

 僕がイライラしていると、生徒達は登校してきた。


 僕をいじめていた安井も登校してきて、西宮さんは安井に「おはよう」と挨拶をしたのだが、挨拶は返ってこなくて少し西宮さんはしょんぼりとしていた。


 あんな奴に構うことないのになぜ西宮さんは構うのだろう?


 そしてチャイムが鳴り、学校が始まった。

 僕達は始業式なので体育館に行き、校長のつまらない言葉を聞いて、教室に戻り、そして今日は帰る事になった。

 西宮さんは帰る途中に、安井に「さよなら」と挨拶をしたら、安井は小声で「おう」とだけ言った。

 それで西宮さんはパァと顔が綻びて、嬉しそうだった。

 西宮さん、安井に気があるんじゃないかと思った。

 西宮さんは僕なんかよりも安井の方を好きになった方が良いんじゃないかと思った。


 でも西宮さんはいじめやそう言うの許せないタイプだから、ただ安井に気にかけているだけなのだ。

 僕達も帰ることになって早速僕達も僕の家に帰ることになった。


 僕のアパートに戻ると、僕の親父がいた。


 僕は親父には恨みがあり「何か用?」と聞くと親父は「アツジ、俺の家に戻れ」


「俺はそんな気は無いよ。親父悪いけれど出て行ってくれないかな?僕は僕でちゃんとした生活もしているし、高校に行く学費だって稼いでいられるのだから」


「そんな事、中学生のお前が出来るわけないだろ」


「それが出来るんだよ」


 すると親父は立ち上がり僕の胸元を掴んで、「なぜ俺の言うことを聞かない、中学生のお前を野放しにして世間で俺たちがどんな目に合っているか分かっているのか?」


「てめえは俺の事より世間の事の方が大事なんだろ。俺が学校に行っているとき苦しんでいたときあんたは俺を助けてくれなかった」


 すると親父は僕の顔面を殴りつけた。


「何をするんだこの親父」


 僕は親父に初めて喧嘩を仕掛けた。


 僕は喧嘩の勝ち方を知っている。


 相手のバランスを崩したら勝ちだ。


 そして僕は親父のバランスを崩して、倒れたところを、親父にストッピングを仕掛けた。


 するとそれを見ていた三人は僕を止めた。


「ちょっと何をやっているのよあっ君、この人はあなたの父親でしょ」


「こいつは俺のことより世間の目を気にしている最低な奴だ。こんな奴に同情なんて必要ないよ。

 親父、とっとと出て行ってくれないかな」


 親父は痛めつけられたところを押さえながら、「てめえ、覚えていろよ」と言い残して僕の家から去って行った。


 そこで西宮さんが「あっ君ひどすぎるんじゃないかな?あの人はあっ君の父親なんでしょ。だからってあんな目に合わせるなんてひどいと思うよ」


「あんな奴父親じゃないよ」


「父親なんでしょ」


「違うって言っているじゃないか。確かにあいつは僕の父親だよ、でもあいつは学校で僕がいじめられていた時、助けてくれなかった。何もしてくれなかった。僕があんなに辛い目にあってもあいつは・・・」


 思い出したくないことまで思い出してしまう。だから僕は話すのをやめた。


「あっ君あの人はあっ君の親族なんでしょ。確かに助けて貰えなかったけれど、お父さんなりに心配しているんじゃないの?」


「しているわけがないじゃないか」


「あっ君には妹さんやお父さんお母さんがいるんでしょ。でも私達にはお父さんお母さんはいないのよ」


 確かにそうだ。西宮さんも斎藤さんも奈々子さんも親族という者は存在しない。


 でも僕は「あんな父親いない方が良いよ」と言うと、西宮さんにピンタを喰らってしまった。


「何をするの西宮さん!」


「あなたがそんな薄情な人間だなんて思わなかったわ。少なからずだったけれども、あなたのお父さんはあなたの事を心配していたわよ!」


「心配しているわけがないよ。あいつは世間で中学生の息子を野放しにしていると噂されてそれが嫌で戻って来いって言っているだけだよ」


「確かにそれもあるかもしれないけれど、本当はあっ君の事を心配しているのよ。あっ君のお父さんは少し不器用なのよ。だからあっ君お願いだからお父さんに一言言ってきてあげて」


「あたしもそれは賛成かな」


「わたしも涼子ちゃんの言うとおりだと思うよ」


 奈々子さんと斎藤さんも同じ事を思っていた。


 僕はそう言われて、親父の後を追いかけた。

 親父は傷つきながらも、腹部や手を押さえながら家路へと去って行く。


「親父!!」


 と僕が言うと、親父は振り返り、「何だお前は何をしに俺の後をついてきた?」


「親父、俺は大丈夫だよ。親父に心配されなくても自分一人でやっていけるからさ」


「お前はバイトもしながら、クラスで一番の成績を収めているそうじゃないか、そんなお前はいったい将来何になりたいと思っているんだ」


「小説家兼絵師になろうと思っている」


「小説家兼絵師だと?何だその職業は?」


「小説を描いてそれで自分の小説に自分の絵を描き込むことさ」


「小説家か!世の中そんなに甘くないぞ、それを覚悟してやっているのか?」


「もちろんさ。俺ならやれる」


「たいした自信だな、俺はお前の事を陰で応援してやるよ」


 そう言って親父は去って行った。

 これで良いんだろ、西宮さんに斎藤さん、それと奈々子さん。

 とりあえず僕は親父に言いたいことだけ言って、自分の家に戻っていった。


「どうだったお父さん」


 西宮さんが僕に言う。


「何とか自分の言いたいことは言ったよ、とりあえず僕のことは心配はいらないって」


「良かったじゃない」


 と西宮さんは僕の背中を思い切り叩く。


「何か、アツジ、大人になった感じがするよ」


 奈々子さんが言う。


「アツジさん、立派です」


 斎藤さんが言う。


「それよりもみんなお腹すかない?」


 西宮さんが言う。


「そうだね。今日は給食がない日だからね」


 僕が冷蔵庫を開けると、ジャガイモにニンジン、タマネギと豚こまがあった。

 これだけの材料ならカレーが妥当だと思って、みんなにカレーライスをご馳走する事にした。


「あっ君、カレーライスを作るの?」


「そのつもりだけど」


「じゃあ私に作らせてくれないかな?」


 と西宮さんが申し出る。

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