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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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思いのまま叫んでみろよ!

 早速ラーメン屋に並んで、僕達の番になり、僕達はそれぞれ食券を買って、四人分空いている席に座って食券をガタイの良い丸坊主の亭主に渡して、ニンニクは入れるのかと聞かれて僕達四人は入れると言った。


 奈々子さんの顔を見るとなぜかちょっと切なそうな顔をしていた。

 もしかしたらここのラーメン屋でお母さんの思い出があるのかと思った。


「久しぶりだね、奈々ちゃん。お母さん元気?今日はお友達と来たの?」


 どうやらラーメン屋の亭主と奈々子さんは仲が良いみたいだ。それにとんでもない事を言い出す。


「母は亡くなりました」


「えっ!そうなんだ。悪いことを聞いちゃったね」


「いえ、あたしは何とも思っていませんから」


 奈々子さんはそうは言った物の、横目で奈々子さんの方を見ると、ケロリと、何とも思っていないように見えた。

 またお母さんの事を思い出して、悲しくなったりしないだろうか。

 だったらこんな店来なければ良いのに。

 

 そんな事を思っているとラーメンは出来上がり、本当に間近で見ると凄い大盛りだ。

 これはもう普通盛りサイズじゃない。

 麺の上に大量の野菜が乗せられて、その下にラーメンがある。


「奈々子、勝負よ。どちらが先にこの大盛りラーメンを食べられるか?」


「別に良いわよ」


 早速二人は急いで食べ出した。


 僕と斎藤さんはゆっくりとラーメンを食べた。


 本当においしいラーメンだ。野菜もシャキシャキしていて良い味で。しかもラーメンもちょっとこってりしていたが、おいしい。


 僕達がゆっくりと食べていると、二人はずるずると急いで食べている。

 本当にこの二人は仲が良いのか悪いのか分からない。

 でも名目上ライバル同士なんだもんな。

 西宮さんは僕の事を狙っているみたいだし。

 でも僕は西宮さんの誘惑に負けるわけにはいかない。


 途中、奈々子さんは普通に早く食べているようだが、体の小さい西宮さんはペースが落ちた。

 この勝負奈々子さんの勝ちだな。

 ラーメン屋を出たとき、ラーメンの早食いは奈々子さんが勝った。

 それよりも、本当においしいラーメンだったが、凄い分量で、僕達はもう動けない感じだったが、奈々子さんはここのラーメンを食べ慣れているので、余裕の表情だった。


「何よ、あのラーメン、確かにおいしいけれど、分量が多すぎるよ」


「涼子、とりあえずあたしの勝ちだよね、何をして貰おうかしら」


「それよりも奈々子さんは大丈夫そうだけど、僕達三人はしばらく動けないから、どこか公園で休もうよ」


「それもそうね」


 そういう事で僕達は近くの公園のベンチに倒れ込み、しばらく動けない状態だった。


「みんなだらしないわね、あれぐらいの分量で音を上げるなんて」


「あんなたくさんのラーメンなんてお腹がいっぱいになるに決まっているじゃん」


「奈々子の胃袋はまさに宇宙よ!」


「んな大げさな」


「とにかく斎藤さん、今度はどこに行く?」


「今度は涼子ちゃんが遊びたいところに行こうよ」


「私の遊びたいところ?」


 僕達は少し休憩をして、西宮さんの遊びたいところに行った。

 そこは自転車で三十分くらいのとある美術館だった。


 今美術館では、ルネッサンスを模写した絵が飾られている。


 ルネッサンスはモナリザが有名だが、僕が見ても、何も感じなかった。

 他にもミケランジェロやラファエロの作品があったが、西宮さんには申し訳ないが、ここには僕が求める絵は無かった。


「どう、あっ君、あっ君の事を思って現代美術館に来たんだよ」


「うん、ルネッサンスって何かインパクトがある絵だね」


 と僕は嘘をついた。嘘をつかなければ、西宮さんが落ち込むことになるから、僕はそう嘘を言っておく。

 問題は奈々子さんだ。僕の嘘を看破して西宮さんに僕がつまらないと思っているよ何て言ってまた喧嘩になってしまう事を僕は恐れた。


 奈々子さんは僕の気持ちを知ったかどうかは分からないが、美術館を後にした。

 ルネッサンスの絵は綺麗だが僕が求める絵とは大分違っていた。

 なぜ民衆はルネッサンスに話題を呼んだのか僕には分からなかった。


「今度は翔子の行きたいところだけれども、どこか行きたいところはあるの?」


 西宮さんは言う。


「わたしは海に行きたい!」


「海ってここから遠いんじゃない?」


 僕が言う。


 海はこの大通りをまっすぐに行ったところにあるらしい。


 僕達は西宮さんと斎藤さんの後に続き、斎藤さんが言った海へと向かった。


 自転車で二時間、海に到着した。


 海は海岸線で、そこから雄大な海を見渡すことが出来て、僕達は楽しかった。


 すると西宮さんは声にならない声で叫びだした。


「何をやっているのよ涼子、みっともないじゃない」


「みんなも叫んで見なよ、ここは私と翔子のとっておきの場所なんだ」


 僕も奈々子さんも声にならない声で叫んだ。

 周りには人はあまりいないだから僕と奈々子さんは遠慮せずに叫ぶことが出来るのだ。


 何だろう、海を眺めていると、僕の中のもやもやした気持ちが払拭されていく気分になる。 さらにこの雄大な海を眺めていると、心がパンクしてしまうほどのスケールの大きさだ。


「西宮さんに斎藤さん、こんな海に連れて行ってありがとう」


 とお礼を言った。


「そんな、お礼を言うことの程じゃないわよ。わたしはただみんなとこうして海を眺めていたいだけ」


 何かこの雄大な海を眺めていると、何か夢に向かう気力が沸々と浮かび上がってきた。


 しばらく四人で海を眺めた。


 カモメ達が海の上を飛んで鳴いている。


 そして今は冬だ、何か寒くなって、僕達は引き返すことになった。


 もう空は夕暮れで時計は五時を示していた。


 僕は帰り際に、「また来るからな!!」と叫んだ。


 本当に気持ちの良い。僕は改めて西宮さんと斎藤さんにお礼を言った。


 こんな素敵な場所、また奈々子さんと二人きりで行きたいと思った。


 僕達が帰った頃にはもう桃子と光さんが僕の家で料理を作ってくれっていた。


 メニューはすき焼きだった。


 二人にこんな豪華な物を用意して貰うなんて、申し訳なく思ってしまうが、今日は牛肉が安かったことから、用意して貰ったのだ。


 今日は僕達は遊び尽くした。明日から学校だし、新聞配達だってある。


 僕達は行くのだ、誰も知らない明日へと。


 西宮さんと斎藤さんは今日も僕の家で泊まることとなった。

 

 今日は本当に楽しい一日だった。


 斎藤さんにお礼を言って置いた。


 でももし斎藤さんが小説のアクセスランキングで僕達の中で一位を取ったのはちょっと悔しかった。斎藤さんに負けていられない。


 早く明日にならないだろうか、明日になったら、また四人で新聞配達の勝負に出かけて、学校に行き、また僕達は闘志を燃やし合い、勉強をするのだろう。


 僕達はいつまでこうしていられるのだろう。

 西宮さんの誘惑にはまいるが、僕達四人、時が経てばバラバラになってしまうんじゃないかと恐れた。 

 その時になったら奈々子さんは僕の側にいるのだろうか心配になってしまう。




 そして朝三時になり僕達はいっせいに起き出した。

 新聞配達の時間になったからだ。

 僕は僕も含めて四人に朝ご飯を作って、食べて新聞配達所まで向かった。

 今日も新しい何かが始まりそうだった。

 さあ、新しい朝の始まりだ。気合いを入れて頑張るぞ。


 今日も僕と西宮さんが組んで、斎藤さんと奈々子さんが組むことになった。

 奈々子さんは僕と一緒に出来ないことを不服に思っているみたいだが、上からの命令だ逆らうことは出来ない。


 とにかく今日も一日頑張るぞ。

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