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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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一途な思い

 奈々子さんを失った今、僕は西宮さんの誘惑にとりつかれそうになったが、僕は西宮さんが繋ぐ手を振りほどいて、奈々子さんを追った。

 この様子だと、奈々子さんは図書館の方へと向かっていった。

 奈々子さんは光さんに会いに行くつもりだろうか?僕は奈々子さんに気づかれないように、駆け足で奈々子さんの後を追った。


 やっぱり奈々子さんは図書館に行っていたみたいだ。

 僕は気づかれないように、光さんが奈々子さんを抱きしめている姿が目撃出来た。

 もしかして僕を失って、絶望に苛まれているのかもしれない。


 図書館の中に入って、「奈々子さん!」と呼ぶと「何よ」と号泣しながら言った。


 光さんが「奈々子ちゃん。素直になりなよ。本当はあっ君の事が好きなんだって」


「光さん、それ本当ですか?」


「そうだよ。アツジを見ると素直になれないって私に泣きついてきたんだから」


「奈々子さん。もう一度やり直そうよ、僕は西宮さんに疚しいことをしていないから、だから奈々子さん。僕の前から行かないでおくれよ」


 すると奈々子さんは涙を拭いて、「どうしようかな!?」嫌みったらしく言う。


 どうやら奈々子さんは僕のこういう所を見たいが為に降ったそぶりをしていたのか?いやでも奈々子さんは光さんの前で泣いていたことに、そんなはずはないと思えた。

 奈々子さんも西宮さんにたぶらかされて、ショックを受けたんだろうな。

 でも考えてみれば、奈々子さんの中では僕がそんな事をする人間ではないと思ったみたいだ。

 そうだ。相手は奈々子さんだ。素直じゃないけれど、その奥には凄く優しさに満ちている奈々子さんがいる。奈々子さんが素直じゃないのは僕の前だけだ。


「奈々子さん」


 と言って僕は奈々子さんを抱きしめた。


 そこで光さんが「二人とも、ここは神聖なる図書館だよ」


 奈々子さんの事でいっぱいで忘れていたが、周りを見ると、子供から大人、それにお年寄りまで僕達の事を不審な目で見ていた。

 それにおまけに妹の桃子まで見ていた。


 僕は咳払いをして、「とにかく奈々子さん、場所を変えようか?」


「うん」


 図書館の外に出ると、西宮さんと斎藤さんがいた。


「どうやら奈々子、あっ君と和解したみたいだね」


「あんたはどこまでもえげつない女ね。一生嫁のもらい手がなくなるよ」


「あんたに言われたくないよ。素直じゃなくガサツで頭の中ネガティブな事ばかり考えているあなたに」


「とにかくもう喧嘩は止めてよ。それに西宮さんひどいよ。西宮さんがそんな性格だったなんて思いもしなかったし、正直失望したよ」


「惚れた男を奪うなら、私はどんな手を使ってでも物にするのが私の流儀よ」


 奈々子さんの言うとおり、西宮さんは本当にえげつない。


「じゃあ、これからの勉強は別々にやろう」


 と奈々子さんが言い出した。


「そう来たんだね。でも新聞配達の時に会えるから」


 どうあっても西宮さんは奈々子さんから僕を奪おうと画策するだろ。


 そこで僕は「良いよ西宮さん。今まで通り、新聞配達の仕事もするし、一緒に勉強しよう」


「ちょっとアツジ、何てことを言うのよ。あなたはあの女に狙われているのよ」


「僕と奈々子さんの信頼は誰よりも深いから大丈夫だよ」


「・・・アツジ」


「だから西宮さんも斎藤さん、これからもお互いにライバル同士よろしくお願いします」


 と僕は頭を下げた。


 すると西宮さんはにんまりと笑って、「あっ君素敵、ますます好きになっちゃったよ」


「西宮さん、その気持ちはありがたいけれど、僕は奈々子さんしか見ていないから」


「私もあっ君の事しか見ていないから」


 まずかったかな?二人を今まで通り、勉強や小説などに参加させて、また奈々子さん西宮さんにたぶらかされて、奈々子さんを泣かしてしまうかもしれない。

 でも僕は西宮さんは嫌いじゃない。もし奈々子さんという素敵な女性に会わなければ、僕は西宮さんを好きになっていたかもしれない。

 僕の心は奈々子さん一筋だ。

 西宮さんのアプローチをシカトするしかない。


「どうしたの?みんなそろって」


 光さんがやってきて僕達の所に来た。


「光さんは聞いているかもしれないけれど、奈々子さんは西宮さんにたぶらかされて・・・」


 それ以上言ったら、光さんは西宮さんに激怒するかもしれないと思って言えなかった。だが、


「聞いているよ。奈々子ちゃんに西宮さんとやったなんて言って奈々子ちゃんをたぶらかしたことにも」


 やばい西宮さんは光さんに大目玉を食らってしまうことを僕は恐れた。でも光さんは、


「でも西宮さんはそれほどまであっ君の事が好きだって事だよね。私は西宮さんの事をとがめたりはしないよ、人の恋路を邪魔する物は馬に蹴られて死んでしまうからね」


 光さんはどちらの味方でもないらしい。


「そうよ私はあっ君の事が好きなのよ。その気持ちを邪魔する物は私は許さないんだから」


「あたしも負けないよ。涼子、あたしの彼氏を取ってみなさいよ。あたしは負けないんだから」


 西宮さんも奈々子さんも凄くいきり立っている。

 二人とも凄い闘志を燃やし合いその場でそのお互いの闘志がぶつかり合い拮抗している。

 

 僕は奈々子さんしか見ないと言っていたが、これは油断していると僕の心は西宮さんに染まってしまうことを僕はそれをひどく恐れた。

 今気がついたことだが、僕は強い女性に強くひかれる事に気がついた。

 奈々子さんも西宮さんも気丈な女性だ。

 奈々子さんは母親が亡くなったことに対して僕に一度は涙を見せたが、すぐにその涙は乾いて、いつも通りの奈々子さんに戻っていった。

 西宮さんは公衆便所で産み落とされたと言っていたが、そんな事は気にもせず、明るく振る舞って、将来のために勉学や小説に打ち込んでいる。

 でも僕は奈々子さんの事が好きだ。

 僕は奈々子さんオンリーだ。


 そこで光さんが、「今日もあっ君の内に行って、夕飯作りに行こうか」


「良いんですか?」


「うん。だからみんな帰って勉強でもしながら待っていなさい」


「奈々子、私はあんたに負けないんだからね。いつかあっ君を私の物にするつもりだから」


「そうはさせないよ。アツジはあたしの彼氏だからね、あんたみたいな泥棒猫なんかに負けないんだから」


 二人の瞳の奥には炎がともっているのを感じる。


 そうだ。その気迫が僕と斎藤さんを燃え上がらせられる。


 早速図書館を後にして、僕達は僕の内のアパートまで行った。


 本当に凄いオーラだ二人とも、僕達の勉強と小説が捗る。


 集中している時間ってすぐに過ぎてしまうような感覚にとらわれる。


 早速桃子と光さんは僕達にご飯を作りにやってきた。


「みんな勉強頑張っている?」


「「「「はい」」」」


 と僕達は同時に返事をした。


「うん。良い返事だ、そんなみんなには桃子ちゃんと私の手作り餃子を作ってあげよう」


 桃子が「今日は餃子パーティーよ」


「楽しみだね奈々子さん」


「そうだね」


 いつもの素っ気ない返事をしてくる奈々子さん。


 どうやらさっきの一件で涙は乾いたようだ。いつもの奈々子さんに戻ってくれて僕は嬉しかった。

 僕はそんな強い奈々子さんが大好きなんだ。確かに母親を亡くして、同情の気持ちもあったりしたが、今はそうじゃない。どんなことがあっても乗り越えられる奈々子さんがここにいる。


 そして僕達が勉強している間にアッという間に餃子は出来上がった。


 すると西宮さんが僕の隣にやってきて、「あっ君食べさせてあげるね」と言って、「はいあっ君アーン」と言って餃子を箸でつまんで、僕の口元まで運んできた。

 僕はこの状況をどのように逃れれば良いんだ。

 ここで僕が拒否すると西宮さんは傷ついてしまうだろう。


 本当にどうすれば良いんだ?

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