奈々子と西宮のケンカ
とりあえず今日は西宮さんと奈々子さんの事で頭がいっぱいだったが、何とか新聞配達はそつなくこなせられた。
新聞配達の仕事が終わり、配達所に戻ると、西宮さんと斎藤さんはもうすでに戻っていた。
「アツジ君に奈々子、今日は私達の勝ちだね」
横目で奈々子さんを見てみると凄く悔しそうにしていた。
僕達は新聞配達の仕事に負けてしまったのだから、毎回恒例の負けたらジュースを僕は斎藤さんに、奈々子さんは西宮さんにジュースをおごった。
「あー久しぶりに勝ててすっきりした。もしかしてアツジ君、私の告白に動揺している?」
すると奈々子さんは鋭い目つきで僕のことを見てきた。
僕は何て言ったら良いのか分からなかった。ここでシカトしたら、西宮さんは傷ついてしまう。でも今の僕には何て言ったら良いのか分からなかった。
黙っている僕を見て奈々子さんは僕の腕を思い切りつねてきた。それははっきりしなさいよと言うような感じで僕の事を見ていた。
「アツジ君と奈々子、これから勉強アンド小説をやるのでしょ。後あっ君は絵の勉強もしなければいけないんだよね」
西宮さんは僕のニックネームを言う。
次第に西宮さんは僕と距離を縮めようとしている。
西宮さんの方を見ると、小さな体だが凄くおっぱいは大きく、華奢なスタイルをしている。 本当に僕が油断したら僕は西宮さんの方に行ってしまうかもしれない。
早速、僕達は僕の家に戻り、勉強アンド小説を書くことになった。それに僕は美術学校に行くので絵の勉強も欠かせない。
僕の家に行く途中、西宮さんはルンルンって感じで、奈々子さんから怒りのオーラが感じ取れた。
このまま家に帰り、勉強を始めようとしても身が入らないような気がしてきた。
でも違った、西宮さんのオーラと奈々子さんの怒りのオーラがぶつかり合い、僕達はそのオーラにあやかり僕は勉強にも小説にも絵にも拍車がかかった。
凄い二人のバトルオーラと言うべきか?二人は拮抗し合うように勉強をしている。
西宮さんと奈々子さんの心の声が聞こえる。互いに『こいつには負けていられない』と言うようなすさまじいオーラだ。
僕も斎藤さんも二人に続いて勉強を始める。
凄いあっいう間にお昼を過ぎてしまった。
「西宮さんに奈々子さんに斎藤さん。そろそろお昼にしようか?」
「それもそうだね」
と奈々子さんはいったん勉強を中断したのだが、西宮さんのバトルオーラはまだ顕在していて、勉強を続けている。
「涼子、そろそろお昼にするよ」
「いや私は奈々子なんかに負けていられないんだから」
お昼になっても西宮さんは勉強を続ける。
すると奈々子さんもそれに続く。それに斎藤さんも。
「三人とも、お昼を食べないと、その後の新聞配達に支障が出てしまうよ」
それを聞いた三人は僕の言うとおりにしてくれて、お昼を食べることになった。
お昼ご飯は僕特性のペペロンチーノでも作ってあげようと思う。
三人はお昼を作っている間、ニュースを見ていた。
台所からもニュースの内容は聞こえてくるが、電車内で痴漢があったという報道がされていた。たかだか痴漢でニュース沙汰になるなんてこの国は平和なのかもしれない。
ペペロンチーノはパスタを湯がいて、オリーブオイルでパスタを炒めて、ベーコンにニンニク鷹の爪を入れて出来上がり、早速僕達はお昼ご飯を食べることになった。
「アツジ、腕を上げたね、こんなおいしいものを作れるなんて」
「さすがはあっ君ね、私の未来の旦那に相応しいわ」
未来の旦那って、西宮さんはもう僕のことを彼氏だと思っているのか、それを聞いた奈々子さんは黙っていなかった。
「何を言っているのよ、この泥棒猫!」
「泥棒猫とは人聞きが悪いわね。私は純粋にあっ君の事が大好きなだけよ」
そんなに大胆に告白されたのは初めてのことで心臓が破裂しそうなほど高鳴っている。
何だろう、僕西宮さんにそんな事を言われたら、西宮さんの方に想いが傾いてしまうかもしれない。
奈々子さんは僕の目を威圧的に見つめてきた。
僕の気持ちは恐怖と恋のときめきであたふたとして頭が混乱しそうだった。
「と、とにかく奈々子さんに西宮さん落ち着いてよ」
「落ち着いていられないわよ。アツジはこの巨乳しか魅力のない涼子に恋をしているんじゃないでしょうね」
「巨乳しか魅力がないなんてどういう事よ!」
西宮さんは奈々子さんに言われた事に黙ってはいなかった。
「やるの?このデカ乳女!」
「何がデカ乳女よ、もしかして自分に魅力がないから、そんな風に私の事をデカ乳女なんて言っているんじゃないでしょうね!」
「そんな事あるものか!せいぜいあなたは乳にしか魅力を感じられない小さな女よ」
「何よこの!」
「やるならやるよ」
そう言って二人は立ち上がり取っ組み合いの喧嘩になってしまった。
僕は奈々子さんを羽交い締めにして、斎藤さんが西宮さんを羽交い締めにして止めた。
「ちょっとアツジ離しなさいよ。このデカ乳女に目にものを見せてあげるんだから」
「何がデカ乳女よ、あなたには胸も何もないじゃない」
「それでもあなたよりは背は大きいわよ!このチビ」
「言ったわね、翔子離しなさいよ、この女、ぶち殺してやるんだから」
「とにかく喧嘩は良くないよ。二人とも落ち着いて!」
奈々子さんを羽交い締めにしながら言っているが、少しでも油断したら、僕の羽交い締めを解いて、西宮さんを殺す勢いを感じる。
本当にこれが女性である奈々子さんの力なのか?疑ってしまうほどの力を感じる。
「離せアツジ」
「離せ翔子」
「もう涼子ちゃんも奈々子ちゃんも落ち着いてよ」
斎藤さんも必死に止めようとしている。
数分後、とりあえず二人は落ち着いてくれた。
互いに飛びかかろうとしていた西宮さんと奈々子さん、それを全力で阻止した僕と斎藤さんは息を切らしていた。
そこで僕は「西宮さん・・・とにかく僕には・・・奈々子さんって言う・・・素敵な女性がいるんだよ・・・だから西宮さんの・・・答えには答えられないよ」と息を切らしながら僕は切実な事を言った。
「それが・・・何よ・・・私は諦めないんだから・・・あっ君の事は私は・・・諦められない・・・だってこんな気持ち初めて何だもん」
「それは嬉しいけれど、・・・辛いし、・・・僕には奈々子さんがいる。どんな勝負を仕掛けても、・・・僕は西宮さんの思いには答えられない」
「それが何だって言うのよ私は・・・あっ君の事が好き。いつか・・・奈々子からあっ君を奪い返してあげるんだから」
「とにかくみんな落ち着いて深呼吸をしようよ」
僕は三人に言いかけ、僕達は深呼吸をした。
すると胸が少しだけすっきりした。それに三人も先ほどよりも落ち着いてくれたようだ。
だから僕はここではっきりと言うことにした。
「僕は奈々子さんを一人にするわけにはいかないんだ。奈々子さんを一人にしてしまったら、奈々子さんは独りぼっちになってしまう。そんなの僕が耐えられないんだよ」
「何よそれ!」
と奈々子さんは急に目の色を真っ赤に変えて僕の胸元を掴みながら言う。
「じゃあ、アツジ、あなたはあたしの事をそういう気持ちで付き合っていたの!?」
と僕はどうやら奈々子さんの逆鱗に触れてしまったみたいだ。
「・・・」
何も言えなくなる僕。
「アツジ答えなさいよ、今までアツジはあたしの事をかわいそうだから、付き合っていたの?」
「それだけじゃないよ。僕は奈々子さんの優しさや色々な事を知っているよ」
「アツジにあたしの事が何が分かるのよ」
僕は思い切り奈々子さんに叩かれてしまって、奈々子さんは僕と奈々子さんが暮らすアパートから出て行ってしまった。
どうやら僕は奈々子さんに対して取り返しのつかない事をしてしまったのかもしれない。




