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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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アツジをめぐって対立する西宮と奈々子

 本当にいったいどうなっているんだ?西宮さんは僕のことが好きだなんて、はっきりと言っていた。

 僕はそれで決めたのだ。西宮さんとは距離を取ろうと。


 そうだ。こうゆう時こそ、光さんに相談するべきだ。


 西宮さんと斎藤さんと奈々子さんと桃子の隙を狙って僕は「光さん」と手招きをした。


 西宮さんと奈々子さんはもめている、それを斎藤さんと桃子が「まあまあ」となだめていたのだった。


 光さんを誰もいない台所に連れて行き、「光さん、僕はどうすれば良いんですか?僕には奈々子さんという素敵な女性がいるのに、西宮さんが僕にアプローチしてくるなんて」


「別に良いんじゃない。あなた達本当に青春を楽しんでいる証拠よ」


「何を悠長な事を言っているんですか?仮に僕が西宮さんに変な気を起こしてしまったら、奈々子さんに殺されてしまいますよ」


「殺されることはないと思うけれど、それはあっ君次第だね」


「僕次第って?」


「私もあっ君の事が好きだよ」


 まさかの爆弾発言、本当に僕はその場で爆発しそうだった。


「ひっ光さんが僕の事を?冗談でしょ」


「好きって言うか、そういう意味の好きじゃないよ」


 光さんの発言にホッとしたような、何かがっかりしたような気持ちになる。


「あっ君は勇敢で今時珍しい、綺麗な心の持ち主だからね。あっ君には人を引きつける才能があると私は思うんだけどな」


 そう言われてしまうと僕は照れてしまう。


「でもその才能で西宮さんにもアプローチされてしまったよ。僕には奈々子さんと言う素敵な女性がいるのに、それに奈々子さんを一人にしたら、奈々子さんはお母さんの事を思い出して深い真っ暗な闇に引きずり込まれてしまうんじゃないかと思うと、僕は気が気でなくなる」


「そうかな?私は奈々子ちゃんがそんなに弱い女の子じゃないと私は思うんだけどね。それに奈々子ちゃんはあっ君がいなくても、一人で新天地に向かうと思うわ」


「でも僕は西宮さんにアプローチされても、僕は奈々子さんの事だけを見ています」


「それはどうかな?」


「光さんも僕のことを疑うんですか?」


「疑うとかそう言うんじゃないけれど、そううまく行くかしら?」


「どういう事ですか?」


「あの西宮涼子ちゃんって言う子かなり本気で大胆よ。あっ君の優しさにつけ込んで何をするか分からないよ」


「光さんはどっちの味方なのですか?」


「どちらの味方でもないよ。私はあっ君達の事を遠くで見ているだけの存在なのだから」


 光さんはどちらの味方ではないと言うのなら、僕次第って事?それに僕は優しい人間じゃない、だからそんなのにつけ込まれるほどの者じゃない。


 台所からも聞こえる。西宮さんと奈々子さんが言い合いをしている声が。


 奈々子さんが「何、人の彼氏に手を出しているのよ」と本気で怒っている。


「あら、人を好きになる事がそんなにいけないことなのかしら?」


 奈々子さんを茶化すように言う西宮さん。


 僕はもう見ていられなくなって「ちょっと二人とも止めてよ」と止めに入った。


「アツジ」「アツジ君」


 奈々子さんと西宮さんは僕が来てとりあえず落ち着いてくれた。


 そこで西宮さんは「そうだ奈々子、この際だからアツジ君に、聞いてみようよ」


「聞くって何を」


「人を好きになるのはいけないことなのか?」


 そこで僕は「いけないことじゃないけれど、僕には奈々子さんと言う素敵な女性がいるんだから、西宮さんの想いには答えられないよ」


 奈々子さんは勝ち誇ったかのように「ほら見なさい、アツジはあたしの恋人なんだから」


 何も言えなくなる西宮さん。


 何だろう、この二人を見ていると、まるで子供の喧嘩のように見える。

 何かこんな事を言いたくないのだが、あまりにも見苦しい。


 すると西宮さんは「それじゃあ、奈々子、勝負よ」


「勝負って何の勝負をするの?」


「どちらがアツジ君のハートを奪うかよ」


 何て西宮さんの大胆な発言。


「な、何でそんな勝負受けなくちゃいけないのよ」


「あら奈々子怖じ気づいた?」


「怖じ気づいて何てないわよ。良いわよその勝負受けて立とうじゃない」


 そこで僕が西宮さんに。


「西宮さん。僕は奈々子さんの事を本気で好きなんだよ。だから西宮さんの想いには答えられないよ」


「答えさせて見せるわよ。私はアツジ君の事が好き」


 そう言われて西宮さんの方を見ると、胸の奥から得体の知れない鼓動が鳴り響いた。

 本当に油断していたら僕は西宮さんに恋をしてしまうかもしれない。でも僕には奈々子さんと言う素敵な女性がいるのだ。

 だから西宮さんの想いに答えるわけにはいかない。


 僕が西宮さんの方をジッと見ていると、奈々子さんのピンタが炸裂した。


「何デレデレ西宮の方を見ているのよ」


「別にデレデレなんてしていないよ」


「しているじゃない。自分の顔をよく見てみなさいよ。顔中真っ赤になっているよ」


「本当に?」


 そう言って台所にある鏡を見てみると、本当に顔が真っ赤に染まっていた。

 それに西宮さんの告白を受けて僕は胸から沸き起こる全身が熱かった。

 光さんの言うとおりだ。僕が油断していたら、僕の心は西宮さんの方に向いてしまうと。 

 台所に西宮さんと奈々子さんが入ってきて奈々子さんは「どう自分の気持ちがよく分かったんじゃないの?この女ったらしが」


「僕は女ったらしじゃないよ。それに僕は西宮さんに驚いただけだから」


 そこで西宮さんは「ふーん驚いた。じゃあ、今は奈々子の恋人だけど、私にもアツジ君を奪う可能性はあるみたいね」


 奈々子さんは「くっ!」と吐き捨てる。


 その時僕は奈々子さんに抱きついて、言った。


「西宮さん。僕の気持ちは変わらないよ。僕には奈々子さんという素敵な女性がいるのだから」


 すると僕に抱きつかれた奈々子さんは「何気安く抱きついているのよ。この女ったらしが」と言って僕は叩かれてしまった。


「アツジ君、目を覚ましなよ。これのどこが素敵な女性なの!?」


「奈々子さんは素敵な女性だよ。いつもはツンツンしているけれど、笑うととても輝かしい笑顔なんだから」


 奈々子さんは「あたしはあなたが思っているほどの女じゃないよ」


「いいや、奈々子さんは素敵な女性だよ。奈々子さんがいくら否定しても僕は本気でそう思っているから」


「・・・アツジ」


 西宮さんが「今のままじゃあ勝負はつかないみたいね」


 そこで斎藤さんが「そろそろ、新聞配達の時間よ」


 そうだ。忘れていた。僕達には新聞配達という大事な仕事があったことを。

 奈々子さんと西宮さんの気持ちを知って僕は忘れていた。


 新聞配達所に行くと僕達四人の空気は最悪って感じで何かぎこちなかった。


 配達所に到着して、僕は今日はあまり乗り気じゃなかったが、新聞配達の仕事をおろそかにしていたら、生活が出来ないので僕はやらなければならない。

 僕の頭の中身は奈々子さんや西宮さんの事でいっぱいだった。

 こんな調子じゃ、まともに新聞配達なんて出来ないよ。

 でも甘ったれた事を言っている場合じゃない。とにかく今日もそつなく新聞配達をしよう。

 今日も新聞を一部ずつチラシを入れる作業から入って、そしてそれが終わると、僕と奈々子さんのペアを組んで、西宮さんと斎藤さんのペアを組んで、新聞配達に向かった。


「ねえ、アツジ、ちょっと深呼吸しなさいよ」


 どうやら奈々子さんは僕が西宮さんの気持ちを知ってちょっとパニック状態だった事がばれてしまっている。

 僕は奈々子さんに言われたとおり深呼吸をした、

 すると少し気持ちが落ち着いた。


「じゃあ、行くわよ!あんな巨乳バカに何て負けはしないんだから」


 と奈々子さんは西宮さんにライバル意識全快だった。

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