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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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涼子の想い

 西宮涼子さんを思う斎藤翔子さん。

 そんな斎藤さんと話がしたくて、興味本位で聞いてみた。


「斎藤さんは西宮さんと親友同士なんだね」


「はい、わたしは涼子ちゃんがいないと何も出来ないから。わたしはいつも涼子ちゃんの後について行っているだけ」


「そうなんだ」


「今のところはね、でもこのままじゃあ行けないと言うことは分かっているんだけどね。いつかわたし達は違う道に向かうときが来る。今は涼子ちゃんと一緒にいて楽しいし、アツジ君と奈々子さんと一緒にいても楽しいけれど、いつまでもこんな状態が続けば良いと思っているんだけどね」


「なるほど、僕も同じ事を考えていたよ。いつまでも四人で勉強したり、新聞配達の仕事を一緒にしたり、とにかく今は、僕も斎藤さんと同じ気持ちだよ」


「でもわたし達はいつか終わりと言う物がやってくると思うんだ。それぞれの人生の交差点に差し掛かり、わたし達はいつかお別れを言う日がやってくることに。そうしたらわたしはどうすれば良いのかと思うと不安で」


「そんなに焦らなくても良いんじゃないかな?確かに僕達はいずれ人生の交差点に差し掛かるときが来るけれど、とにかくその事は遠い先のことだから今を全力で楽しもうよ」


「そうね、アツジ君って大人なんだね」


「僕は大人じゃないよ。まだまだ未熟者の子供だよ。だって、まだ、僕達は中学二年生なんだから」


「アツジ君と奈々子さんはいつか結婚するの?」


 いきなりの斎藤さんの爆弾発言に僕は驚き「そ、そ、それは分からないよ。このまま順調に中を取り留められたらの話だけれどもね」


「あーあーアツジ君と奈々子さんが羨ましいよ。私か涼子ちゃんがどちらかが男の子だったら、わたしと涼子ちゃんいつもでも一緒にいられるのにな」


「斎藤さん、そんなに西宮さんの事が気に入っているんだね。でも一緒にいる事は今後も出来るんじゃないかな?」


「えっ!?どうして、わたしと涼子ちゃんが結婚して、どこからか男性の精子を貰って子供を授かって涼子ちゃんと家族になったりするの?」


 僕は斎藤さんが考えていることについて行けそうにもなさそうだ。まさか本当にそんな事をするのだろうか。いつも大人しい、斎藤さんがそんな大胆な事を考えているなんて。


「あはは、何を本気にしているの?冗談よ。そんな事出来るはずがないでしょ」


「ちょっと斎藤さん、変な事を言わないでよ。僕本当にびっくりしちゃったよ」


「でも半分本気だったりして」


「ええっ!」


「あはは、冗談って言っているのに、どうしたのよ」


「どうしたもこうしたもないよ。とにかくそういう冗談は止めてよ」


「それと言い忘れていたけれど、涼子ちゃん、アツジ君の事を凄く気に入っているよ」


 僕は驚いて飲んでいた甘酒をブーッと吐き出して驚いてしまった。


「もう、斎藤さん、そういった冗談は止めてよ」


「これは冗談じゃないよ。涼子ちゃん、アツジ君にいつかアプローチするって涼子ちゃん言っていたもん」


「冗談でしょ」


「これは冗談じゃないわね。アツジ君が学校に来だして、安井君にいじめられていた時、その時果敢に挑んだのが頭から離れないって言っていたわよ」


「そう言えばそんな事があったね。でも安井は涼子さんに守られていたじゃないですか。だから西宮さんには安井君がいると思うんだけど」


「涼子ちゃんはいじめとかそう言うの、許せないタイプだから、安井君のいじめられているのを黙って見過ごす人じゃないよ」


 そう言えば、斎藤さんは僕と話している内に敬語がなくなっている。これは斎藤さんと仲がより一層良くなったと考えるべきなのかもしれない。


 斎藤さんは「何をボーッとしているの?」


「いや、でも僕が安井にいじめられていた時、西宮さんは助けてくれなかったじゃないですか?」


「あの時、涼子ちゃんは安井君の事を怖がっていたからね、いや怖がっていたのはクラスのみんなだからね」


 それでみんな見て見ぬふりをして、僕の事をかわいそうだなんて思っていたのだろうか?そう思うと何か腹が立って来る。


「どうしたの?優れない顔して?」


「いや別に」


 僕はその後、斎藤さんとはあまり喋れなくなって、外で羽根つきをして遊んでいる西宮さんと奈々子さんと光さんと桃子の事を見ていた。


 みんな楽しそうに羽根つきで遊んでいる。

 そうだよな。いつかこんな時間も終わってそれぞれの道を行く日が来るんだ。

 悠長な事を考えている暇などないのかもしれない。

 斎藤さんは大人だな、もうそれぞれの人生の交差点に差し掛かる事まで考えているだなんて。

 それに西宮さんが僕の事を気に入っているって言っていたけれど、僕には奈々子さんという素敵な女性がいるんだ。

 もし僕が西宮さんと付き合い始めてしまったら奈々子さんはお母さんの事に苛み、苦しむのかもしれない。

 奈々子さんも同情されるのが嫌いなタイプだ。

 それに奈々子さんは気難しい性格をしている。

 でも僕は奈々子さんの真の優しさを知っている。

 だから僕は西宮さんに思いを寄せたりはしない。

 でも西宮さんも魅力的な女性だと思う。

 気を抜いたら西宮さんの方に気が行ってしまうかもしれない。

 そんなことにはならないように僕はしっかりと奈々子さんの方をお互いにもっと知り合い、愛に辿り着きたい。


 四人は僕のアパートの戻ってきて、顔中水性ペンだらけで、僕は思わず笑ってしまった。


 奈々子さんが「何笑っているのよ」


「だって四人とも顔中に落書きだらけなんだもん」


 すると奈々子さんは僕に思い切りゲンコツをお見舞いされた。


 そこで西宮さんが「ちょっと奈々子、アツジ君に当たることないでしょ」


「何であたしとアツジの間にあなたが入ってくるのよ」


「奈々子、言って置くけれど、アツジ君の事を好きなのはあなただけじゃないんだからね」


「それってどういう事」


「私もアツジ君の事が好きだから」


 まさかの爆弾発言、本当に斎藤さんの言うとおり、西宮さんは僕のことを慕っていると言うのは本当だ。

 すると奈々子さんのピンタが僕の顔に炸裂した。


「アツジ、これはどういう事よ」


「どういう事も何もないよ。僕だって今言われて気づいた事だから」


 そこで光さんが「まあまあ二人とも落ち着いて」と言って二人の仲裁に入った。


 みんな西宮さんの発言に驚いている。


 とりあえず、光さんの仲裁で二人は落ち着いてくれた。

 本当に光さんには僕も含めて頭が上がらない。

 光さんの過去のことは知らないが、光さんはあらゆる修羅場を乗り切ってきた人なんだと思った。安井の時も僕に巻き込まれて気にしている様子もなさそうだし、むしろ僕達の事を最優先に考えてくれている。

 僕は本当は光さんが大好きなんだなあーと思った。

 でも僕には何度も言うとおり、奈々子さんの事が好きなんだ。


 僕達は羽根つきの罰ゲームで顔に描かれた落書きを濡れたタオルで拭いて、とりあえず、西宮さんの爆弾発言についてはその事は置いておくことにした。


 でも奈々子さんは黙っていなかった。


「涼子、あなたいったい何のつもりよ!?人の彼氏に手を出すなんて」


「何を言っているの奈々子、人を好きになることは自由じゃない」


 そう言って二人はあーだこーだもめている。


 これは光さんでも止められないな。

 だから僕は「西宮さん」


「何、アツジ」


 そこで奈々子さんが「何アツジの事を呼び捨てにしているのよ」


 そしてまたあーだこーだともめ事を起こしている二人。


 その時、僕は決めたんだ。西宮さんとは距離を取ろうと。


 僕は奈々子さんの事が大好きなんだ。だから僕は西宮さんのことを好きになれない。

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