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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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斎藤さんの一番の友達の西宮さん

 お雑煮が出来上がり、光さんは僕達のために伊達巻きも用意してくれた。


「お餅いっぱいあるから、たくさん食べてね」


 光さんと桃子が作ってくれたお雑煮を食べて、凄く出汁が効いていて凄くおいしかった。 光さんかあ、もし奈々子さんが現なければ僕は光さんを好きになっていたんだよな。

 光さんはいわば図書館の女神様、僕をいじめから解放してくれた女性、今でも僕はその気持ちは変わったりしないが、僕は光さんの事を憧れの目で見ていた。

 こんな事を奈々子さんに知られたら、きっと大目玉だろう。

 でも僕には奈々子さんと言う素敵な女性がいる。

 いつもツンツンしていて、怒りっぽくて、でも笑うと凄く僕の心を幸せにしてくれる。


 お雑煮をみんなで食べ終えて、僕達は幸せな気持ちになった。

 もう満腹でちょっと動けないかもしれない。

 勉強はお腹が落ち着いたら始めようと思う。


 そんな時だった、光さんが「みんな羽根つきしない?」

 光さんが鞄から取り出したのは羽子板と羽根つきの玉だった。

 面白そうなので食後の運動がてらする事になった。


 光さんは「もし負けたら水性ペンで顔を落書きさせて貰うけれどね」


「そんなルールがあるんですか?」


 僕が言う。


「面白そうじゃない。負けたらペンで相手の顔面をかけるなんて」


 にやりと笑う西宮さん。


 そして羽子板は全部で四つあるので、僕と奈々子さんのペアを組んで、もう一方は西宮さんと斎藤さんのペアに別れた。


 何だか凄く負けなくない気持ちなんだけれども。


 奈々子さんが「アツジ、あたしの足を引っ張らないようにしなさいよ」


 僕が最初で「そーれ」と言って羽子板で羽根つきの玉を打つ。


 すると西宮さんはいきなりスマッシュを仕掛けてきた。

 さすがにそれは返せずに地面へと落下して僕達が最初負けてしまった。


「やったー」


 と西宮さんはペンを取り、僕の顔と西宮さんの顔に落書きされた。

 凄い屈辱的だ。まさか西宮さんが羽根つきが上手だなんて。


 今度は西宮さんが打つ方で、僕は奈々子さんに言われた。


「アツジ、あたしの足を引っ張らないでって言ったでしょ」


 奈々子さんの落書きされた顔を見ていると、僕は笑ってしまった。


「何笑っているのよ」


 そう言って、羽子板で軽く頭を小突かれた。


「痛いよ奈々子さん」


「とにかくあたしの足を引っ張らないでよね」


 そこで西宮さんは「行くよ二人共」


「西宮さんは羽子板で羽根つきの玉を打った」


 ゆっくりとこちら側に落ちてきて、僕はこれなら西宮さんにスマッシュを打てると思って、羽根つきの玉を打とうとしたが、奈々子さんも同じ事を考えていたのか、羽根つきの玉が落下した直後に打とうとしたが、奈々子さんとぶつかってしまい、転んで、羽根つきの玉は地面に落下してしまいまた僕達は負けてしまった。


「痛たた」


 奈々子さんは言って、僕は奈々子さんの心配をして「大丈夫奈々子さん」と言うとまた奈々子さんに羽子板でさっきよりも強く頭を小突かれた。


「何をやっているのよ、アツジ、これでまた西宮達に、顔面を落書きされてしまうじゃない」


「だからって羽子板でたたくことはないでしょ」


 そういう事で僕と奈々子さんは顔面に水性ペンで落書きをされてしまった。


「アツジ、今度あたしの足を引っ張ったら承知しないからね」


 今度は奈々子さんが羽根つきの玉を打つ方に回った。


「えいっ!」


 と言って奈々子さんは羽根つきの玉を打った。


 するとまたもや西宮さんのスマッシュ、二度も同じ手を食う僕らじゃないと思って、それを返した。


「やるじゃない、アツジ」


 そう言っている間に、またもや西宮さんのスマッシュがやってくる。


 これも返した。


 さらにもう一度、西宮さんはスマッシュを打ってきた。


 これもまた僕は返した。


 そしてさらに西宮さんはスマッシュを打ってきて、そこで僕はチャンスだと思って、スマッシュをスマッシュで返すと、今度は西宮さん達が負けた。


「やったー」


 と奈々子さんは大喜び。


 奈々子さんは早速、水性ペンで西宮さんの顔にバカと書いて、僕は斎藤さんに×の文字を描いた。


「奈々子、覚えてなさいよ。今度私が勝った暁にはひどいことを書いてあげるから」


「上等上等、あたしはあんたに何て負けないんだから」


 僕は燃えるような闘志を感じて、斎藤さんは西宮さんの闘志を燃やしている。

 僕も斎藤さんもそれぞれの闘志に感化され動き出す。


 最初は西宮さんが打つ方だ。


「行くよ。それ!」


 いきなり、羽子板を思い切り降って、玉は凄いスピードで奈々子さんに向かって来る。

 それを奈々子さんは僕はこんな玉返せないと思ったら奈々子さんは凄いスピードで返した。

「負けないよ涼子」


 もはや羽根つきは西宮さんと奈々子さんの試合になり、僕と斎藤さんは呆然とその様子を見ていた。

「えい!」「やー!」「とう!」「はい!」


 もはや互いに精神が肉体を凌駕している。


「それ!」


 と奈々子さんは渾身の一発を西宮さんに打ち、西宮さんは返す事が出来なかった。


「やったー!」


 奈々子さんは大喜びで、叫んで、早速ペンを取り、今度は西宮さんのおでこにアホと書いて僕は斎藤さんに○の文字を額に入れた。

 とにかく西宮さんと奈々子さんは因縁のライバル同士である。


「奈々子、今度は負けないからね!」


「望むところよ」


 西宮さんと奈々子さんの間にそれぞれ僕と斎藤さんは眼中にない感じだったから、これからは二人で、羽根つきをやらせておくべきだと僕と斎藤さんは思って、二人で勝負させた。

 

 激しい二人の攻防戦、僕と斎藤さんと光さんと桃子は二人でやらせて置いて、僕達が羽根つきで遊んでいる間、光さんと桃子は甘酒を造ってくれていた。

 僕と斎藤さんは甘酒を飲みながら、窓の外から、二人が羽根つきで打ち合っている姿を見ていた。

 そして光さんも桃子も面白そうだと思ったのか!?光さんは西宮さんについて、桃子は奈々子さんに入り試合続行だ。

 桃子も光さんも羽根つきが上手で互いにサポートをしている。

 僕と斎藤さんはもう見ていられないと思って、光さんと桃子が作ってくれた甘酒を飲みながらボーッとしていたいところだが、今は斎藤さんと二人きりだ。

 そう言えば僕と斎藤さんはあまり喋ったことがない。

 何か僕は斎藤さんといると何か緊張してしてしまった。

 斎藤さんの方を見てみると、その短い髪をかき上げて、甘酒をすすっている。

 実を言うと斎藤さんも僕と二人きりになり、緊張しているような感じがした。でももしかしたら気のせいかもしれない。


 でも良い機会だから斎藤さんの事をよく知ろうと思って、喋ってみる。


「斎藤さん!」


 と僕が呼ぶと「は、はい」と返事で分かったが、どうやら僕の思ったとおり、かなり緊張している様子だ。

 この斎藤さん、西宮さんとは正反対で、言動が大人しい。いつも西宮さんと一緒にいる。


「斎藤さんは進路とか決まった?」


「ま、まだ決めてないです」


「来年は受験だから、お互いに気を引き締めて頑張ろうよ」


「そうですね。気を引き締めないといけないですね」


「斎藤さん別に敬語を使わなくても良いよ」


「あっ、敬語は気にしないでください。わたし敬語じゃないと喋れなくて・・・」


 敬語じゃなくては喋れないってどういう事だろう?


 まあ、それはそれで構わないのだが、「斎藤さんっていつも西宮さんと一緒にいるよね」


「はい。施設に入ったとき、初めて出来た友達で、もうわたしは親友だとも思っています。涼子ちゃんはわたしの一番の友達です」


 なるほど。

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