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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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半分はやましさかも知れないけれど、

 朝午前三時に目が覚め、僕はいつもの卵かけご飯を食してシャワーを浴びて新聞配達所に自転車で向かう。

 配達所に到着して、菜々子さんの姿はもうそこにあった。


「あら、おはようアツジ」


「うん。おはよう」


「今日は負けないからね」


「こっちこそ負けないよ」


 早速新聞配達をする新聞に一部ずつチラシを入れていく作業に取りかかった。

 昨日は色々な事があった。

 光さんの下着姿を目撃してしまったり、光さんの涙も見てしまった。

 そんな事を考えていると作業に支障が出てしまう為、僕は考えないように新聞に一部ずつチラシを入れる作業に取りかかった。

 また余計な事を考えると仕事にも支障が出るし、菜々子さんにも心配をかけてしまう。

 とにかく今日も菜々子さんに負けないように仕事を早く終わらせなきゃ。


 チラシの作業も終わり、自転車で新聞配達に向かった。

 とにかく菜々子さんだけには負けたくない。

 ジュースをかけるよりも、菜々子さんに負けたくないと言うのが僕の本当の気持ちだった。


 そして配達が終わって帰った頃、菜々子さんはすでにいた。


 菜々子さんはにっこり笑って、「今日は私の勝ちだね」


 マジで悔しい。こうして菜々子さんに負けるのは僕にとって屈辱的な感じだ。


 そんな時である。社長が「菜々子、お前配達場所間違えただろ」


「えっ!?」


「今、六丁目の民家の並びで、杉浦さんのお宅のお隣さんが届けてくれたそうだ」


「ごめんなさい。今から杉浦さん地に言って謝ってきます」


「それはもう良い、杉浦さんからは俺が謝っておいたから」


「ごめんなさい」


「まったく、勝負も良いけれど、あまり焦っているとミスをおかしがちだからな!今度は気をつけろよ」


「はい」


 社長と菜々子さんの話を聞いて形成は逆転した。

 でも菜々子さんがミスをするなんて初めての事だった。

 形成が逆転して勝ったよりも、菜々子さんがそんなミスをするなんて考えられない事なので、何か合ったのかと僕は心配した。


 でも菜々子さんに『何か合ったの』とか心配すると怒るからな。だからここは何も言わずにした。


「菜々子さん、ミスは誰だってあるよ。だからあまり気にしないでドンマイだよ」


「今日もアツジに負けてしまったよ。私にミスさえ無ければ私の勝ちだったのに」


 悔しそうにしていた。

 その姿を見てホッとした。何だ、ただのミスだったのか。

 その後の菜々子さんはとても不機嫌であった。


「くっ何であたしが勝てるはずだった勝負だったのにあんなミスを犯してしまったのかしら」


「菜々子さん。惜しかったね、もう少しで僕に勝てていたのに」


 菜々子さんは自販機の前でお金を入れて「さあ、今日はあたしが負けたから、ジュース一本取りなさい」


「やりぃ」


 そういって僕は自販機の前まで言って暖かい蜂蜜レモンをおそうとしたが、菜々子さんのいたずらで、冷たいブラックコーヒーのボタンを押した。


「ごめーん、手がすべちゃった」


「菜々子さんわざとでしょ」


「手がすべっちゃったのよ!ほら」


 冷たいブラック缶コーヒーを僕に手渡し、そんな菜々子さんを見てホッとした。


「何、にやにやしているのよ」


「いや、いつもの菜々子さんだなって」


「いつものあたしだからって何なのよ!?」


「いや、今日も平和だなあって」


 すると僕から菜々子さんに受け取った冷たい缶コーヒーを奪って、また自販機にお金を入れて、僕の好きな暖かい飲み物である蜂蜜レモンを押して、僕に手渡してくれた。


「どういう風の吹き回しだい、菜々子さん」


「別に良いでしょ、とにかく今日はあたしが負けたのだからアツジの好きな飲み物をプレゼントしようと思って」


「じゃあ、手がすべったなんて嘘だった何だね」


 すると菜々子さんから軽く蹴りを食らってしまった。

 本当にこの平和な日々が僕達の前にずっと訪れますようにと心の奥底から思った。


「菜々子さん、今日は僕の家で朝ご飯を食べない」


「うーん、どうしようかな」


「来なよ菜々子さん。菜々子さんに僕特性のチャーハンを作ってあげるよ」


「アツジのチャーハンおいしいからな。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」


 早速菜々子さんは自宅に連絡を入れて、僕のうちでご飯を食べることを伝えた。

 そして僕達は僕が一人暮らしをしているアパートまで二人でそれぞれ自転車をこいで行った。

 僕の家に到着して僕は菜々子さんを居間で待っているように伝えて僕は台所に立ち、炊飯器から二人分のご飯をしゃもじですくって、お皿に盛って、ごま油を鉄板にひかせて、ガス線を付けて火であぶった。


「すぐに出来るから、菜々子さんテレビでもつけて時間をつぶしていなよ」


 そう居間に聞こえるように言ったのだが、返事が無かった。どうしたんだろう。まあ良いか、とにかく僕特性のパラパラチャーハンを作ることにしよう。


 チャーハンを作っている最中に菜々子さんはニコニコしながら、僕が台所に立っているところまでやってきた。


「どうしたの菜々子さん、そんなニコニコしちゃって」


 すると菜々子さんはどういう訳か、火を止めた。


「菜々子さん?」


 そして菜々子さんはにっこりと笑顔のまま僕に向き直り、僕が昨日光さんの下着姿をスケッチしたスケッチブックを僕に見せつけてきた。


「菜々子さんそれは!」


 僕が昨日描いた光さんの下着姿のスケッチブックを取り返そうとすると、菜々子さんは僕の顔面を叩いた。


 菜々子さんはにっこりとした笑顔で「これはどういう事なのかなアツジ君?」


 僕は叩かれた上に菜々子さんに見られてはいけない物を見られてしまい。僕はどんな弁解の余地も無く「ごめんなさい。ごめんなさい・・・」と連呼して土下座した。


「アツジ君あたしと言う彼女がいながら、昨日見た光さんの下着姿に欲情した上でこんな物を描いた。違うかなアツジ君」


「確かに欲情はしたけれど、別にやましい気持ちで書いた・・・訳ではありません」


「アツジって絵がうまいんだね。昨日見た豊川先生物の絵より上手にかけているじゃない」


 菜々子さんは顔は笑っているが目が悪魔のようにおどろおどろしくなっている。


「僕も豊川先生のように三ツ星レストランで飾られているような絵が書きたいと思って」


「でも、アツジは光さんの下着姿をそのスケベな視線でそしてそのスケベな頭に焼き付けて描いたんでしょ。スゴくやましい気持ちで」


「いや、やましさはないです」


 すると光さんから怒りのビンタが僕の顔面に炸裂した。

 そして僕が昨日夢中で描いた光さんの下着姿の絵をパラパラと見つめて「これには光さんの下着姿しか描かれていないわよ。やましさなんてないなんて嘘をついたら為にならないよ」


「はい。私は半分やましさはありました。その自分で描いた絵で欲情もしました」


「そう。正直でよろしい。さて、あたしが光さんに変わってアツジ君をお仕置きしなきゃあたしの気持ちが晴れないわ」


「待ってよ菜々子さん。光さんはそんな事では怒らないよ」


「確かに光さんはそんな事じゃ怒らないけれど、あたしは今猛烈に怒っているの。うふっ」


 すると菜々子さんは僕が光さんの下着姿を描いた紙をペラペラと数えて「全部で二十一枚ありました。だからあなたには二十一回殴らなきゃ、光さんは許してもあたしが許せないから、覚悟してアツジ君」


「一回」と言って僕の頬を思い切り叩いてそれはもう尋常じゃない痛さだった。「二回、三回、四回・・・」と数を数えながら、僕の頬を思い切りはたき散らした。


「十九回、二十回、二十一回」と叩かれて僕は意識がもうろうとしながら、鏡で自分の顔を見ると、顔全体が腫れている。


 半分は確かにやましさかも知れないけれど、いややましさか・・・でも僕は絵を描くことが好きな方だ。やましさが半分だったら残りの半分は豊川先生がキャンバスに描いた絵のような物を作りたいと言う気持ちだった。


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