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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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気分転換に星空を

 大盛りラーメンを食べ終えて、胃がだんだん落ち着いてきた頃、僕達は僕の家で勉強アンド小説を書くことになった。


 西宮さん達と闘志を燃やし合い、とにかく西宮さんよりも面白い小説を書けば良いのだと思って僕は小説を描いている。


 何だろう?面白く書こうとすると何だかいつもの調子で書けなくなっていた。


 何だこれ?面白く書こうとするとなぜか書けない。


 このままじゃあ西宮さん達に負けてしまう。


 西宮さんも斎藤さんもパチパチと次から次へとアイディアが浮かぶようにキーボードを打っている。


 奈々子さんの方を見てみると奈々子さんも僕と同じ気持ちなのか?手が止まっている。


 これはいつもの僕と奈々子さんじゃない。


 僕は気分転換するために、外の空気を吸おうと席を外した。


「どうしたのアツジ君」


 と西宮さんは心配そうに僕の方を見てくる。


「いや、ちょっとアイディアに詰まって小説が書けなくなちゃって」


「そう。外は寒いから気をつけてね」


 そう言われながら僕は外の空気に当たり、気分転換をした。


 そこで漏れたのが、ため息だった。何で面白い小説を描こうと躍起になると書けなくなるのか?分からなかった。もしかすると今まで僕が描いた小説は面白くないのだろうか?

 そう思うと再び白いと息と共にため息が漏れた。

 何をやっているんだ僕は?


 その時であった「ため息を漏らしていると幸せが逃げてしまうよ」と背後から奈々子さんが現れて、そう忠告された。


「奈々子さん!」


「何、ため息なんてついちゃって」


「いや、何か面白い物を描こうとすると、行き詰まっちゃって」


「アツジもか、実を言うとあたしもそうなんだよね」


「今日も、星が輝いているね」


「あの青白く輝いているのがシリウスでしょ。それにプロキオン、ベテルギウス。これらの三つが冬の大三角なんだよね」


「冬の星座は一等星が多いからね」


「あのシリウスって星が最も天体の中で輝く星なのよね」


「よく知っているね。その通りだよ」


 奈々子さんが僕の大好きな星に興味を持ってくれて嬉しかった。


 そんな時であるライバルの西宮さんと斎藤さんが現れた。


「何二人でこそこそとやっているのよ」


「どうして西宮さんと斎藤さんが?」


 僕が言うと西宮さんは「何か二人でまた私達を仲間はずれにして楽しんでいたんじゃないかって思っていたんだよ」


「別に仲間外れなんてしていないよ。僕達は小説に行き詰まっちゃって、星を見上げているところだよ」


「ふーん、星ねえ、なかなか面白い物を見ているのね?」


 そこで奈々子さんが「あの青白く光星がなんなのか分かる?」


「分からないわよ。でも綺麗で大きくて綺麗な星ね」


「あれは大犬座のシリウスって言う星なんだよ」


「へーあなた達って星に詳しいんだ」


「そうよ。悪い?」


「どうしてそんなひねくれた言い方しか出来ないかな奈々子は、星が好きだなんてロマンテックじゃない。私はあの三つ並んだ星の名前は知っているけれども、確かオリオン座だっけ」


「あれは有名だから誰でも知っている星だからね。オリオン座の一等星って知っている?」


「いや知らないね」


「あの左上の端にあるのがベテルギウス、もうすく超新星爆発を起こすと言われている星よ。それに右下の一等星のリゲル」


「あなた達星の事は何でも知っているのね」


「何でもじゃないわよ、知っていることだけしか知らないわよ」


「でも星を見ていると、何か心地の良い気分になれるわね」


「でしょ」


「この満点のお星様のしたで二人で嫌らしいことをしているんじゃないでしょうね!?」


 やばい、奈々子さんを怒らせてしまう。

 案の定奈々子さんは西宮さんに飛びかかろうとしたところ、僕は羽交い締めにして止めた。

「ちょっと奈々子さん、落ち着いて」


「離してよアツジ、こいつには制裁が必要だと思うから」


「制裁なんて必要ないよ。そんな事を言われたぐらいで何を目くじら立てて怒らないの」


 僕の説得によって奈々子さんは西宮さんに制裁を加えることを止めた。

 本当に奈々子さんは短気なんだからな。

 でもそんな奈々子さんを僕は本気で愛してしまったんだな。


「二人とも私達にも星のことを教えてよ」


 西宮さんは何事もなかったかのように振る舞っている、それはそれで何か問題がありそうな気がする。


 奈々子さんが気を改めて「じゃあ、二人共冬のダイヤモンドは知っている?」


「冬のダイヤモンド?」


「あのオリオン座を含めて六角形に並ぶ星の事よ。あの六角形に並んでいる星はみんな一等星、あれが牡牛座のアルデバラン、にその下にあるのがオリオン座のリゲル、・・・」


 そう言って奈々子さんは西宮さんに星のことを伝えている。


「へー星ってそうやって見るとなかなか面白い物だね」


 と西宮さんは感心している。

 西宮さんはスマホを取り出して、何か調べている。


「本当だ。奈々子の言うとおり、冬のダイヤモンドの一等星は全部合っているよ」


 何だろう。せっかく奈々子さんが一つずつ丁寧に教えてあげたのに、僕も嫌味を感じた。

 すると奈々子さんは西宮さんの頭にゲンコツを与えた。


「ちょっと何をするのよ奈々子」


「スマホで調べるならあたしが教えるまでもないじゃない」


「別にスマホで調べたって良いじゃない。こうやって見ると、星の事がもっと知ることが出来て」


 西宮さんも星のことについて興味を持ってくれた事に僕は嬉しかった。

 しばらく四人で星を眺めていた。

 

 そんな時、僕の中で一つの不安が生じた。

 面白い小説を書こうとして、僕は行き詰まってしまった。

 そんな事では僕の夢である小説家兼絵師の夢を叶えることは出来なくなってしまうことに。本当に僕はどうしてしまったのだろう。

 この事を奈々子さんや西宮さんに相談しようとしたが、その時聡さんの言葉が僕の頭の中によぎった。そういう事はあまり人に相談しない方が良いと。


 僕はどうすれば良いのか、正直泣きそうになってしまった。


 そうだ。こういう時は、絵でも描いて、いようと思って、スマホのアプリでダウンロードした絵を描く機能を使って描こうとしたが何か行き詰まって書けなくなってしまった。

 僕はどうしてしまったのだろう?これが世に言うスランプと言う奴か?

 そんな時である奈々子さんはけやき坂48のサイレントマジョリティーを流していた。


「アツジ、小説も絵もうまくいかないでしょ。こういうときは音楽を聴いて心を落ち着かせようよ」


 奈々子さんは僕がスランプに陥っていたことに気がついていたんだ。

 奈々子さんは僕のことをしっかりと見ていてくれていたんだ。

 その奈々子さんが進めてくれたサイレントマジョリティーを聞いているとまさに今の僕にぴったりの曲だと思った。

 夢を見ることは誰でも孤独になるって。

 それに誰も知らない道を進むんだって。


 まさに僕はけやき坂48のサイレントマジョリティーだ。

 時には夢の途中で道に迷い、明日を見失う事だってあるんだ。

 そんなことも知らずに僕は一人で抱え込んでしまっていた。

 そうだ。僕は一人じゃないんだ。

 相談は出来ないけれど、こうして僕をいつも陰ながら応援してくれる人がいるんだ。

 そう思うと涙がこぼれ落ちそうになっていた。

 涙なんて誰にも見せられないので、僕は三人に「ちょっと走ってくるよ」と言って走りに行く。

 すると奈々子さんも西宮さんも斎藤さんも付いてきて、奈々子さんが「あたし達も走るよ」


「何で走りに来るんだよ」


 と文句を言うと奈々子さんは意地悪な顔をして「アツジの涙を見てみたいから、こんな機会滅多とないからね」


「もう奈々子さんは」


 奈々子さんは舌を出してごまかす。

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