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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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おみくじ

 最高のクリスマスであった。僕と奈々子さんだけの秘密の場所で星空を見上げる僕達。

 でもじっとしていると寒くなってくるので、すぐに僕達が住むアパートに帰っていった。 

 そしてお正月、僕と奈々子さんと西宮さんと斎藤さんとで富岡八幡宮に初詣に行くことになった。

 奈々子さんに着物を着せてやりたかったが、あいにく僕の家には着物なんてない。

 でも奈々子さんは普段着のままで良いと言って、西宮さんと斎藤さんが待ち合わせている場所まで二人で出かけていった。


 僕達が到着したときには西宮さんと斎藤さんはもう待ち合わせ場所にいた。

 しかも二人は着物姿だった。

 西宮さんと斎藤さんの着物姿は可憐で何か魅力的だった。

 そんな目で見ている僕に対して奈々子さんは僕の腕を思い切りつねってきた。


「何をする!?の痛いじゃないか!」


「アツジ嫌らしい目で二人を見ている」


「別に嫌らしい目で何か見ていないよ。何か二人とも魅力的だなって思ったから」


「やっぱり嫌らしい目で見ていたんじゃない」


 僕の腕を思い切りつね始める奈々子さん。


「痛い痛い」


 西宮さんが「二人とも、新年早々にまた喧嘩をしているの?」


「開けましておめでとうございます」


 奈々子さんが「おめでとう」と素っ気ない感じで言った。


「奈々子は普段着なの!?」


「悪い?」


 着物じゃないのに気に入らないのか西宮さんにナイフのような視線を送る。


「何?怒っているの?」


「別に怒っているわけじゃないわよ」


「アツジ君、奈々子に着物ぐらいは着させてあげなさいよ、レンタルで安いところを教えてあげるから」


「それ本当に?

 奈々子さん。早速西宮さんが言う着物をレンタルしているところに行こうよ」


「あたし、そんな着物なんて堅苦しい物は嫌だよ」


「そんな事を言わずにさあ」


 早速僕達は着物がレンタルしているところに西宮さん達に連れられて行った。

 着物がレンタルされているところの店に行き、凄く美しい生地が施された着物が並んでした。


「奈々子さんどれにする?」


「別にどれでも・・・」


 奈々子さんの目が止まった、奈々子さんの視線を追っていくと、赤く施された花柄の着物に奈々子さんは酔いしれている様子であった。


「それが良いんだね、奈々子さん」


「う、うん」


 恥ずかしそうに奈々子さんは言う。


「すいませーん」


 と言って、店員さんを呼んだ。


「はーい」


 と店員さんは老人婦人で顔からすると着付けのプロといった感じだった。


「あのーこの着物をレンタルしたいんですけれど・・・」


「この子にかい?」


 そう言って奈々子さんの方を見る。


 奈々子さんは恥ずかしそうに視線をうつむかせている。


「はい。お願いします」


「あいよ」


 と言って奈々子さんは奥の部屋へと老婦人に連れて行かれた。


 そして十分後、奈々子さんは部屋から出てきて、お化粧まで施されて出てきた。


 僕はそんな奈々子さんにドキリとして、心臓が飛び跳ねそうな気分に駆られた。


「奈々子さん似合っているよ」


「そ、そう?」


 と本人は凄く恥ずかしそうな顔をしていた。


 西宮さんも「奈々子、凄く似合っているよ。翔子もそう思うでしょ」


「はい」


 この美しい女性が僕の彼女なんて凄く光栄だ。


「じゃあ、奈々子さんも着物姿になったことだし、富岡八幡宮のお祭りを堪能しようよ」


「そうね」


 と西宮さん。


 早速神社に行ってお賽銭の場所に行き僕達はお金を少々入れて、それぞれのお願いをした。 僕は小説家兼絵師になることを願った。


 願い事を心の中でそれぞれ呟いて、僕は奈々子さんに「何を願ったの?」と聞いてみる。


 すると奈々子さんは「それは秘密よ。お願い事を誰かに言ってしまったら、何か御利益がなくなると思って」


 そこで西宮さんが「まあ、奈々子なら何でも夢を叶えられる力を私は持っていると思っているんだけれどもね」


「何よそれ嫌味?」


「いやいや、何でそんなひねくれた返答が返ってくるのかな?私は本気で奈々子が夢を叶える力を持っていると思って言ったんだよ」


 そうなんだ。奈々子さん。実を言うとちょっとひねくれた所があるんだ。褒められた言葉をそのまま受け取れば良いのに、そうやって違う言葉で返してしまう時があるんだ。

 でも僕はそんな奈々子さんが大好きだ。

 何か分からないけれど、奈々子さんの良いところも悪いところもすべてひっくるめて僕は好きなんだよな。

 いつもつんつんしていて、あまり僕の前でも笑わない、でもたまに笑うと本当に幸せな感じにしてくれるんだよな。


 何て考えて奈々子さんの方を見ていると、「何よアツジ、あたしの事で何か文句でもあるの?」


「いや別にないよ」


 西宮さんが「とにかく奈々子は素直じゃないんだからね」


 奈々子さんが「ふん!あたしはどうせ、素直な女性じゃないわよ」


 西宮さんの褒められた一言で怒ってしまう奈々子さんは本当に困った物だ。

 でも奈々子さんは本当は凄く優しい人でもあるんだけれども、とても不器用で、最近で言うツンデレって奴で素直じゃない。

 察しの良い西宮さんも斎藤さんも奈々子さんの優しさに気がついていると思う。


 お参りも済んだことだし、僕達はそれぞれおみくじを引くことにした。

 おみくじは一回百円で、僕達はそれぞれおみくじを引いた。

 僕が引いてみると、大吉であり、書いてある内容が、『これから伴侶となる者が現れる』とか『学問は頑張れば成就する』と何か今の僕には関係のないような事が書いてあるような気がした。伴侶なら奈々子さんなのか分からないけれど、学問は成績だって学年一位だし、別に大吉だからと言って、僕にあまり関係のないような事が書かれていることが何か虚しかった。


「アツジはどうだったの?おみくじ」


「ああ、うん」


 と言いながら奈々子さんが引いたおみくじと僕のおみくじを交換して見せ合いっこした。 何と奈々子さんも大吉であった。

 内容を見てみると、『女性ならば安産に恵まれ、幸せな家庭を築き上げることが出来るであろう。男性であれば、良き夫となる』と他にも色々と書いてあるが大吉なのに何か僕達の事とは関係のない事が書いてある気がする。


 そこで奈々子さんが「ねえ、アツジ、良き伴侶が現れるってどういう事?」


 何で奈々子さんそんなにキレ気味なんですか?


「ねえ、アツジ答えなさいよ、しかもアツジも大吉じゃない。良き伴侶ってあなたあたしに浮気とかするんじゃないだろうね?」


「そんな事をするわけないじゃないか。どうせおみくじの言うことだよ偽りに決まっている」


 そこで西宮さんが「二人とも大吉だったの、私も翔子も大吉だったよ」


 二人のおみくじも見せて貰った。


 そこには『良き伴侶がもう目の前に現れている』と書かれていることに奈々子さんが激怒した。


「ねえ、アツジ、この西宮のおみくじに書いてある良き伴侶がすぐ側にいるってもしかしてあなたの事じゃないかしら」


 奈々子さんは怒りを通り越して凄く激怒している。


「そんな事あるわけないじゃないか、おみくじの言うことだよ。所詮偽りだよ」


「それに翔子の方にも良き伴侶がもうすぐ側まで来ているって書いてあるけれど・・・」


「だからおみくじの言う事なんてどうせ、迷信に決まっている。だからそんな事にいちいち怒っていたら身が持たなくなるよ」


「あなたそんなに女にだらしがないの?」


「だったら僕が西宮さんか斎藤さんに恋でもしているって言うの?」


「何?しているの西宮?」


「私はアツジ君の事は嫌いではないけれど、アツジ君は奈々子の者でしょ。だから私に取られないようにしっかり捕まえときなさいよ」


「西宮はそう言っているけれど・・・」


 僕には奈々子さんの怒りのオーラがはっきりと見える。


「誤解を産むような発言は止めてよ西宮さん」


「私は本当の事を言ったまでのことだよ」


「それが誤解を産んでいるんだよ」


 僕は奈々子さんに往復ビンタを食らってしまった。

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